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「はいはい皆さん静かに。鳥居君の言うこと
は最もなことでもあります。でも中学教育と
いうのは何なのでしょう。中学までは義務教
育なのですから、国民の全てが教育の場に付
かなければならないのですよ。全てが教育の
場に付くということは、全ての人が平等に知識
を得る権利を有しているのです。一つのことを
全ての人が理解できるまで、教育するのです。
みんなが一つの問題をクリア出来て、次のス
テップに進める。理解力の早い人はじれった
いかもしれないけど待つ。これも人格形成に
繋がると私は思うんですよ。又理解力の遅か
った人は、みんなに迷惑をかけたから、次か
らもっと早く理解するように努力しよう。その
ためには前の日に予習をしてこよう、復習も
しようとこれも努力に繋がるんですよ。理解
力の遅い人を助ける気持ちが全体のレベル   6
アップに繋がれば中学教育の目的は達せられ  6
たと思います。しかし、そこまで達するには教
師の技量もあり、難しい問題です」教諭が平
板な顔に笑みを湛えて言った。
「分ったか、先生の言うとおりぞ。まだ分らん
ようじゃったら、わしが個人的に教えてやるけ
ん放課後待っとけや」喧嘩を売るような権次の
態度、言葉に鳥居は黙っていたが、教諭が諭
すように言った。
「伊吹君、そういう言い方が伊吹君の悪いとこ
ろですよ。相手の気持ちを思いやってあげる
心の大きさを持たないと、あなたは人間失格
ですよ」
「人間失格?先生太宰治読んだことあるん
け?」権次が言った。太宰治は姉の好きな小
説家で、図書館から借りてきては読破し、権
次にストーリーを話して聞かせるのだった。
「わしは読んだことないけど、それは有名な