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「先生こんな簡単な英語が分らない人には、
後で個別に教えてあげるとして、授業をもう
少しスピードアップした方がいいんじゃない
でしょうか。私達はもうすぐ高校受験が控え
ているのです。私達のレベルアップになるよ
うな授業をして下さい」鳥居は名門私立栄光
中学に通っていたが、体が弱くてこのM中学
に転校してきた生徒で、自己中心的な性格
である。
「鳥居、お前何を言うとるんぞ、義務教育と
いうのは、全員が一定のレベルをクリアーす
ることが目標なんじゃ、決して高校受験が目
標じゃないんぞ。自分だけは先に進みたいと
言うんなら塾にでも行け」完一が珍しく怒っ
た顔で言った。
「そうかなあ、わしは県立高校に何人進むか
が、この中学の名誉であると思う。そのため
には、レベルの低い者は切り捨てても仕方な   5
いんじゃないか。"小の虫を殺して大の虫を   6
生かす"という諺もあるじゃないですか」
「お前みたいに自分さえ良ければええという
人間がおるけん、世の中から諍いが絶えん
のじゃ。わしらみたいな若者が、ちっとは人
の為に生きようちゅうような考えが起こらん
と駄目じゃわい。お前は世の中に出たら通
用せんぞ」お前という時に、完一は腕をぐっ
と伸ばして指差した。すると権次が重たく口
を開いた。
「んう、何なん鳥居、わしが勉強出来んけん、
みんなに迷惑かけとる言うんか?それならわ
しみんなに謝るけどのう、教育言うてそんな
もんか。落ちこぼれは切り捨てご免じゃ言う
たら江戸時代と変わらせんぞ。ほれでお前が
わしを切れるいうんか?織田信長を」
「はっ?」