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考え方いうもんがあって、お父さんの意思表 示は拳骨なんじゃ。それがお前に対する愛情 だから、恨みに思ってはいかんぞ」 「わかってます」 「だけど先生、ごんちゃんが悪くても顔が腫 れるほど叩かれるなんて、ごんちゃん可愛そ うです」金井恵子が大柄な体で訴えるように 言うと、室内が騒々しくなり「ほうじゃほうじ　 ゃ」「お父さんが悪い」ごんちゃんが悪いん じゃけん仕方ない」などと口々に言う声が聞　　 こえてきた。教諭はそれぞれの声を聞いてい 　 たが、静かに言った。 「学校においても家庭においても、教育とい うのは難しいものです。温情教育、スパルタ 教育、放任教育どれが正しいとも言えません。 スパルタ教育であっても、教育理念を持って 貫くのなら、それは素晴らしいことだと思う。　　２ 本校にも雲龍さんやロングさんのように、拳　　　６ 骨で愛情ある教育をする先生もいます。お二 人の拳骨には愛情が籠っとるんで、殴られた 痛さが消える時に温かさを感じる事が出来た ら、その生徒は立ち直ることが出来ると言わ てます。私は腕力がない人間だから羨ましく 思うだけで、真似のできない教育法です。伊 吹のお父さんが感情のままに拳骨を振るうの でなく、一つの理念のもとに振るうのであれば それは良い。伊吹、お父さんは訳もなく暴力 を振るうたりするか？」 「訳もなく暴力を振るうことはないです。わし が何か悪い事をした時に、気狂いみたいに暴れ るだけです」天衣無縫な権次だが教諭の説を 逆に取れば、理念なくして暴力を振るう父親 が悪人のように思えた。だから同級生の前で は父親を蔑むようなことはいえず、"わしが何 か悪い事をした時"と庇った言い方をした。