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るように言った。権次は笑っていたが完一は
頭を掻きながら俯いていた。
「ええぞ、言わんでも。どうせお前らが喋っと
ったことなんか、先生にはすぐ分るんじゃけ
ん。あっそうか伊吹の人生か?伊吹、先生は
お前方に行って、二人でお父さんに謝ろうと思
うとるけん一緒に帰るか?」
「せんせえい堪えて下さい。親父なんかわしの
ことなんかどうでもええんですよ。警察が保護
者に引き渡すから言うても、引き取りにも来ん
かったんぜ。今晩も飲んで帰るけん十時過ぎ
じゃわい」
「そんなに遅いのか。それでは先生は行けれ
んが、お前はやってはいけないことをして各
方面に迷惑をかけたのだから、お父さんに謝
らないといかんぞ。それで今後こういう暴力
沙汰は一切起しませんと約束せいよ」        9
「分っとりますよ。わし先生みたいな人が親    5
父じゃったら、心から謝れるし、真面目人間
になるんじゃけどのう」権次が少ししんみり
として言うと岡田が言った。
「ごんちゃん先生の養子にしてもらえ」
「馬鹿ア、先生には子供もおるし、わしみた
いな不良を養子にしてくれることなかろが」
権次が真剣に怒ると、岡田は手を横に振って
「冗談、冗談」と言った。             
「くらすぞお前は」                 
「伊吹そういう風にすぐに腹立てたらいかん。
"短気は身を滅ぼす腹切り刀"と言うが、先
ほど伊吹が武士の時代に生きてれば云々が
あったが、全国制覇する前に伊吹は短気が元
で切腹せねばならないじゃろう。
 それから人間にはそれぞれ持って生まれた
環境があって、その中で最善の生き方をする
のが人生と言うもんじゃ。不平不満があれば、