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合えば問題は解決できるようになっとるんじ
ゃ。バルボンもいかんがごんちゃんもそうい
う点ではいかん」完一が説得するように言っ
た。
「かんちゃんは石田先生と同じじゃのう、今
それと同じようなことを言われたわい。ほじ
ゃけどかんちゃん、世の中は何もかも法律
が解決してくれるわけじゃないぞ。法の裏を
ついて常に笑(わろ)うとる悪人もおるし、そ
うでなくても法では裁けん人間の心の機微
の事件もあるぞ。そんな問題を法で裁いた
ばかりに泣く者もおるんじゃ。かあんちゃん、
この前のよその中学の奴らとの喧嘩、かん
ちゃんも暴力振るうたじゃろ」権次が目玉を
右に寄せて、やんちゃそうに笑いながら言
った。
「違う違うあれは仕方なしじゃろが、わしが  8
言うとるのは常習暴力がいかん言うとるん   5
じゃ」完一が珍しく慌てた素振りをした。
「なあん委員長が喧嘩した?」「完一君どう
したん、信じられん」「ハハハ、これはおかし
いかんちやんが喧嘩するとはハハハ、わし
かんちゃん尊敬するが」再び教室が騒々し
くなった。権次が立ち上がってへっぴり腰で、
水車のように腕を振って喧嘩するポーズを
取ったものだから、教室中が大笑いになっ
た。そこへ石田教諭が入ってきた。
「おういおい、何騒いどるんじゃ?」
「先生ある人の人生について話しよったら、
可笑しなってみんなが笑いよったんよ」お
しゃべりの谷口が、可笑しそうに笑いながら
言った。
「誰の人生じゃ、そんなに笑えるのは」
「先生には内緒でえす」大澤弘美が言った。 
すると、五、六人が「内緒、内緒」と合唱す