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「お前らもうそんなこと知っとんか。 T 中の
奴ら普段から大きな顔しとるけんのう、いつ
ぞやってやらないかん思うとったんよ。ほた
ら護国神社の境内で、ばったり出くわしたも
んじゃけんやってしもたんよ。二対四で大乱
闘よ。あそこは人通りはないとこじゃけど、た
またま通りかかったお婆が警察に連絡したら
しいんじゃ。パトカーが来たけん、わしは神
殿の下に逃げたんじゃけど、こともあろうに
ここにバルボンまできたんじゃ。外の様子見 
とったら、殴りあいで動けんようになった連  
中がちゃかまってしもうたんじゃ。向うは三
人、うちでは力石よのう、これをみても喧嘩
はわしらの勝ちよ。ほじゃけどわしバルボン
と話したんじゃ、連中が全部白状したらどう
せわしらもやられるけん、ここはわしらが首
謀者として捕まろう言うて、出て言って捕ま  6
ってやったんじゃ」全員が頷きながら聞いて   5
いた。すると輪の前の方にいる岡田が言った。
「ほれで岩本や田中や曽根のことはどうなん
じゃ?」権次は一瞬動揺した。
「お前らそこまで知っとるんか?わしら警察
でも他の者のことは一切言わんかった。お前
らも連中のことは言うなよ。特に岩本のこと
は絶対口外するなよ、女じゃけん庇うてやら
ないかん。今回のことはわしと力石だけの問
題じゃけん」権次は「絶対」に力を込めて言
った。
「それよりも可愛そうなのはバルボンよ。わし
が誘うて捕まったら、あいつ恐喝、万引き、
恐喝と前が三回もあって釈放してくれんかっ
たが、恐らく"年少"行きじゃろのう。わし、誘
うて気の毒なことしてしもうたが、あいつ結果
分かっとって、何のためらいもなしに自分で
罪を被ってしもうた。男らしい奴じゃったのう」