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どこに女に…ん、山下、君じゃが、君が長い
髪して、そんな赤ジャン着とるけん、女に間
違えられたんじゃが。だから僕がいつも言っ
てるでしょう、男らしい身なりをしなさいって」
バルボンも印象をよくするために、優等生の
ような言葉を使った。しかし学ランに似合う
言葉ではなく、不自然であった。頬からの
血がやっと止まり、黒くなった血痕を右頬に
こびりつかせたT 中生をバルボンは睨みつ
け、言葉を続けた。
「刑事さん、ひょっとしてその通報した人、慌
てて彼を女に見間違えたり、人の数まで勘
違いしたんじゃないでしょうか」
「僕もそう思います。あのおばちゃん、僕と目
が合っただけで恐ろしそうにあたふたと逃げ
ましたから、正確な状況は見てないと思いま
すよ」権次は女の人を見てなどないが、いか  9
にも本当らしい嘘を言った。刑事達はそのこ  4
とに関しては権次の嘘を信じたようだった。
しかし、警察は裏でそれぞれの素行状況まで
調べていた。バルボンが警察に留置されたの
が四度目だった。万引き、恐喝、万引きが前
科だった。そのため、他の者は釈放されるこ
とになったが、彼だけは少年院送りになるら
しかった。
 権次と力石が東署から釈放されたのは二時
頃だった。警察が学校とそれぞれの家庭に連
絡をしたが、権次の父親はパチンコをしながら
「そんな大それたことをした奴は、息子でも何
でもない。警察で存分に処分して下さい」と言
って引き取りには来なかった。力石は父親が
なく、母親が行商の為連絡が取れず二人の引
き取りに、校長の代理として雲龍とロングが来
た。そのまま職員室へ連れて行かれた二人は、
教師達から様々な罵倒の言葉を浴びせられた。