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ここはわしらが首謀者として捕まって、偶発
的に起こった二対四の喧嘩で終わらすか?」
薄暗い中でバルボンの目だけが光っていたが、
何かを考えているようだった。
「よしそうしよう。うちからは察に捕まった
三人とわし、M中は力石か?あいつとお前ら
二人の喧嘩にしよう。外の奴らは逃がそう」
「ちょっと待ってや、うちのためにこんなことに
なって、みんなに責任被せるわけにはいかん
がね。それでは顔が立たんけん、うちも仲間   
に入れてくれんかねえ」岩本が髪に付いた蜘     
蛛の巣を指で取りながら言った。
「馬鹿野郎、お前だけの問題じゃなかろが、
こうなったら出来るだけ、察にあげる人間を
少なすることが大事じゃ。それにあくまで偶  
発的に起こった喧嘩にせないかんのに、お   
前が出たら喧嘩の原因がばれて、計画的に   7
なって全員の罪が重うなるんじゃが」権次が  4
言った。
 バルボンがT中の生徒に小声で言った。
「ええか、わしらが全責任を被るけん、お前
は山に逃げ込んだ二人と逃げて、知らぬ存
ぜぬで通せよ。それから伊吹、うちのあの赤
ジャンバーが頬を切られとるけん、察が凶器
を探すに決まっとる。お前このナイフ使おた
ことにしてくれんか」バルボンが学ランの下か
ら下着を掴み、自分の指紋を消すため丁寧に
ナイフ全体をを拭いて、下着に包んで渡した。
「わしは喧嘩でナイフ使おたことないが、しょ
うがないわいのう」言いながら素手で何度も
触って、ポケットに入れた。
「さあ伊吹行くぞ」
「権次すまんのう」曽根が両手を合わせて言
うと、T 中の学生もバルボンに謝った。バル
ボンと権次は床下からそろりと出て行った。