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面子が潰れるぞ」権次が言うと田中が遮る
ように言った。
「当り前じゃ、もうあいつらを殺してでもお京
を取り返す話になっとるんじゃ。わしの手下
が、お京を護国神社に連れ込んだのまで見と
るけん、護国神社に直行じゃ。相手は七人ら
しいけんこっちも兵隊を揃えたいが、雲龍や   
ロングに気付かれたら面倒じゃけんこの四人   
で行く。作戦としては向うは七人、こっちは四
人で不利じゃけん、力石と曽根は先に行って
祝谷から御幸寺山に登る、ほれで千葉農園
の辺りから横がけして、わしと伊吹が正面か
ら攻めたら、上から出来るだけ多人数のよう
な大声で山を駆け下りるんじゃ」御幸寺山は
護国神社の裏山で、海抜百メートル程の山
だが急峻で、上部は岩肌が露出しているが、
中腹辺りまでは様々な樹木が茂っている。   2
「それでバルボンらが慌ててお京を放って逃  4
げればよし、逃げなければ七対四の格闘じ
ゃ」田中が立ち上がると、力石と曽根も立ち
上がった。
「ちょっと待てや。田中、そんなことお前が
仕切るんか?わしはこの学校の押さえはわし
じゃと思おとるんじゃ。お前の指図では動か
んぞ」権次が不満そうに言った。
「権次、ことは急いどるんじゃ。お前にも相談
しようと思うたけど、お前がおらんけん三人
で決めたんじゃ。こんな大事な時権次どこに
行っとったんじゃ?」権次の頭に弥生先生の
笑顔が浮かんだ。
「よし分った、今回はお前の意見を聞いちゃる」
権次が頷くと、三人はまるで忍者のように一
階に下りて行った。権次も続き靴を履き替え、
護国神社に向かって走った。神社は中学校か
ら四百メートルほどである。力石と曽根は鳥