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先生はそれを見ながら、クスクスと笑って言
った。
「そうありがとう、それじゃ伊吹君のこの絵
も記念に頂いていいかしら」
「ええっこんな絵を……こうえつです」
「伊吹、それはこうえつでなく、光栄ですじ
ゃないのか」石田教諭が後ろに立っていて
権次の肩を叩きながら言った。
「そうとも言いますけど」周りの教諭連中が
大笑いをしていた。
「職員室じゃけんいうてそんな難しい言葉を
使おうとするけん間違えるんじゃ。普段通り
に話してみい」石田教諭の言葉に権次が言
った。
「それでええんけ」
「ええ、ええ伊吹だけは特別じゃ、お前は悪
じゃけど見所がある奴じゃけんのう」       0 
「本当ですよね。私伊吹君は暴れ者だから、   4
心も粗野な子だと思ってたけど、本当は純真
な子ですのね」弥生先生が微笑みながら言
った。"心に太陽を唇に笑みを"がモットーの
弥生先生は、誰に対しても笑みを絶やさない
のだが、権次はいつも自分にだけ優しく微笑
んでくれると、勝手な解釈をしていた。
「弥生さん、あんたお嬢さんじゃけん騙され
たらいかんよ。伊吹は純真そうで、学校一の
暴れ者には間違いないんじゃけん。ほじゃけ
ど私らがとことん鍛え直してるから、卒業ま
でには、立派な人間になってるとは思います
がね。な、伊吹」ロングが煙草を吹かしながら
言った。ロングは歯に衣着せぬ物言いをする
のだが、あっさりとした性格の為生徒から意
外に信望はある。権次も普段はロングに尊敬
に近い気持ちを持っていた。しかし弥生先生
の前で自分が貶されたような気がして、思わ