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めきの中でびりびりと破ってしまった。
 淡白な権次の心の中にも、完一に対する
嫉妬心が湧き起こっていた。勘の鋭い江戸
は頷いて前の黒川に進んだ。
「それでは今日の美術はこれで終わりです」
ワイワイガヤガヤと騒々しい中で、完一が権
次に言った。
「ごんちゃんどうして絵を破ったんぞ?」
「見たんか。そんなこと言うても、かんちゃん
の絵は記念にもろとく言うほど綺麗に描いと
るし、わしは弥生先生に怒られるし、絵を直
そうと思うたらぐしゃぐしゃになるし、あんな
絵出したら余計に印象悪されるが」権次はべ
そをかくような顔で言った。
「ごんちゃん甘ったれたらいかん。出来具合
がどうであろうが、そんなことは関係ない。
みんなそれぞれに能力の差はあるんじゃけん、  3
優劣は仕方ないじゃろ。問題は一生懸命描い   3
たかどうかなんじゃ。ごんちゃん一生懸命描
いとったじゃろが」
「それは絵の上手な者の言うことじゃ、一生   
懸命に描いたって、下手なものはどうしようも 
ない、結果的に軽蔑されるだけじゃ」
「ごんちゃんらしくないぞ、どうしてそんなに
卑屈な考えをするんじゃ。弥生先生が絵を
見て、下手だからって軽蔑したりするか、そ
んな人か?違うじゃろが。それよりも弥生先
生はごんちゃんの絵がないことに気付いた
ら、それは怒るぞ」完一は顔を近づけて声を
ひそめて言った。
「弥生先生に嫌われたないんじゃろが」
「おう、それはそうじゃけど仕方ないじゃろが。
わしはどうせ気短じゃし、絵は下手なんじ
ゃけん」
「困った奴じゃのうごんちゃんは。絵が上手