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でぼかし、空の青さに同化してしまった。
「ほんまに親分の家には寄らんでええんでっ
か?」
「ええんや」親分はぽつりと言った。       
「ほなら大阪に帰りまっか。今からやったら
宇高連絡船は間に合わんかもしれんよって、
高浜から広島に渡っておきゃあ、後は地続き
やから心配要りませんわ。四国は島やよって
全く不便ですわなあ」
「わしの故郷(ふるさと)にケチ付けよったら
くらすぞ」くらすとは松山の方言で殴るとい
う意味である。
「二年後には児島・坂出に瀬戸大橋が出来る
んじゃ。世界最長の橋で下側は鉄道も走るん
やぞ。橋が出来たら本州も四国も陸続きや、
今に見てみい、四国は発展するぞ」親分が青
い空を見上げながら、だんだんと夢を見るよ 3
うな顔になった。
「えっ瀬戸内海に橋が出来るんでっか?」
「何言うとるんや、せやからお前はアホやちゅ
うんじゃ、新聞読んでないんか?」
「読んでまっせスポーツ紙は」
「これからのヤクザはなあ、今迄みたいに博
打と覚醒剤やっとるだけでは、しのぎが出来
ん時代になるぞ。法を勉強せなあかんし、経
済に熟知しとらなやってけれせんぞ。そのた
めには経済新聞を毎日読むんや。ヤクザは
腕力も鍛えなあかんが、これからはその知
能指数の低そうな頭も鍛えておけよ」若者は
頷きながら左後部のドアを開けた。親分は黙
って乗ろうとしたが、突然硬直したようになり
目を細め前方を睨んでいた。ドアを閉めよう
とした若者が、躊躇しながらそちらを見た。
そこには池の東側土手から歩いてくる男が
いた。親分と同じ四十搦みの男だが、白い