newpage28
の年齢だが、投手をさせても良いコントロー
ルをしていた。だから、授業に身の入ってな
い生徒を見つけると、チョーク投げをするの
だった。命中率は八割程で、時には隣の生
徒に当ててしまったこともある。由井大はチ
ョークを投げやすい軌道を確保するように、
少し右に動き、頷きながらにっこり笑った。
ゆっくりと足を大きく上げて、オーバースロ
ーでチョークは由井大の指を離れた。
 その時完一が隣の権次の足を蹴った。権次
は突然自分のバリアを破った侵入者に、驚い
た顔をした。しかし、外の生徒の中を通って
来たチョークはその額に命中しポトリと机に
落ちた。権次は痛そうに額を押さえながら、状
況を察知して、完一に小声で言った。
「合図が遅いんじゃが」
「伊吹チョークを持って来い」決まりの台詞で   7
ある。そしてこのチョークを持参して手渡した  2
瞬間に、右拳が頭か顔に飛んでくるのだ。権  
次はチョークを掴むと、死刑を執行される罪   
人のように、力なくそろそろと教壇に向かった。
教壇に仁王立ちになった由井大は、左手を
出してチョークを受けようとした。しかし、権次
はそれを拒否するように右手に渡そうとした。
右手は既に拳骨の構えで、強く握りしめられ
ている。由井大が左手を権次の前で動かせ
て催促した。権次はあくまで拒み、由井大の
大きな右手を掴むと、握り拳の親指と人差し
指の隙間に素早くチョークを差し込んで、さ
っさと席に戻った。
「伊吹い、やるのう。わしの得意の右フックを
そういう方法で防いだか。しかし次に居眠りし
とったら許さんけんのう」権次はやっと生き返
ったような顔になって言った。
「はい、分ってます。ほじゃけど先生の攻撃