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「何を言うとるんぞ、わしはこう見えてそんな
単純な人間じゃないわい、あれ何いうんかの
う、その場その場で変えるの?」
「ケースバイケースか?」
「それよ、わしを甘見たらいかんぞ。ケースバ
イケースでいろんな生き方、考え方ができる
んじゃけんのう。生きるということではかんち
ゃんよりわしの方が逞しいぞ」完一は権次の
思わぬ反撃に慌てた。しかしここで負けてし
まっては弥生先生を取られてしまうから、ど
うしても引き下がることはできなかった。
「逞しいいうてもごんちゃんは無茶苦茶なだ
けじゃ。わしから見たら考え方がやっぱり甘
いとこだらけじゃと思うんよ。ごんちゃん、両
親の離婚の原因は何なん、言うたら悪いけ
どその原因が弥生先生と結婚しても同じに
障害になると思わんか?」
「かんちゃんなんぼ親友じゃいうても、言うて   5
ええ事と悪い事があるぞ」権次が完一を怒鳴    2
りつけた。小学校からずっと付き合ってきて初
めてのことだった。
 二人の間に気まずい沈黙が続いた。
「……ん、かんちゃん嫌に静かじゃないか。も
う授業が始まっとるんじゃないか?」
「ええっ!やばいぞ由井大に拳骨食らわされ
るぞ」二人は慌てて走った。由井大とは由井
大助という名の数学の教諭で、機嫌の良い時
は面白い人柄であるが、機嫌を悪くすると手
強い教諭である。しかし、泣く不良をも黙らせ 
る雲龍やロングのような怖さはない。      
 二人が教室に走りこむと、すでに授業は始ま
っていた。二人がそれぞれの席に付くと、由井
大はじろりと睨んで言った。
「お前ら何しとったんじゃ」
「済みません、屋上で二人の今後の人生に付