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「ちょっと待てや、ごんちゃんはませとるけ
ん、結婚とか大人びたことを考えるんじゃけ
ど、先生を思う気持ちはわしも変わらせんの
じゃ。わしが就職して自分で生活が出来るよ
うになった時には結婚も考える」
「かんちゃん弥生先生はもう二十三歳やぞ、
言い寄る男がいっぱいおるんぞ、かんちゃん
が結婚出来るのは何年向うぞ、資格ないわ
い。かんちゃん諦めた方がええ。
 そのてんわしは今年から仕事して、自分で
生活できる能力があるけん資格はあるんじゃ」 
ガヤガヤ言いながら、四人の男子生徒が屋上 
に上がってきた。
「こらあ、お前ら屋上に上がってくるな。はよ
う降りんとくらすぞ」四人は慌てて今出てき
た屋上出口に向かった。完一は何も言わずじ
っと俯いていたが、口を開いた。          3     
「ごんちゃん、わしごんちゃんとは一生親友   2
でいたい。ほじゃけど、ごんちゃんの嫁さん
が弥生先生じゃったら、わし付き合えれんじ
ゃろが」
「ちょっと待てや、それは逆でも同じじゃろが」
権次の刺のある表情に完一がかすかにうなず
いた。
「これが初恋いうんじゃろか。ごんちゃん人
を好きになるということは苦しいことじゃの
う。わしこのままでは高校受験も出来んが。
ごんちゃん一生のお願いじゃ、弥生先生を
諦めて力になってくれんか」
「嫌じゃちゅうんよ、わしはかんちゃんと違
(ちご)うて馬鹿じゃし、高級な生活なんか
出来んと思うが、弥生先生の為なら、どん
なことでもしてあげようと思うとるんじゃ」
完一に対しては決して見せたことのない、
怒りの表情を露わにして言った。