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ブレッドであり、マドンナでもある。我こそ
はと言い寄る独身教師の中には、他校の教師
もいるという噂である。
「どうしたんぞごんちゃん」
「なんでもない。ほじゃけど、かんちゃん弥
生先生はいかんぞ。あの人は先生じゃけんわ
しら生徒が好きになっても、どうしようもな
い人なんじゃ。おまけに弥生先生のお父さん
は教育長じゃ、弥生先生はお嬢さんぞ。年相
応の立派な相手がおるはずじゃけん諦めた方
がええ」
「それを分っとるけんわしが悩んどるんじゃろ
が、だからごんちゃん何とかしてくれ」
「かんちゃん、止めてくれ。それだけはわしに
はどうすることも出来んがあ」            
「ごんちゃん今何とかしてやる言うたじゃろが。  
あれは嘘か」                
「かんちゃん堪えてくれ、実は、じつはあ、わ   2
しの好きな人も弥生先生じゃ」泣きべそをか   2
くような表情で叫んだ権次を、完一は呆然と
見つめていた。
「そんなあ、ごんちゃん」端正な完一の顔が
歪み始めていた。
「かんちゃんわしも弥生先生を好きで好きで
たまらんのじゃ。なんちゅうんか、よう分ら
んけど弥生先生と結婚したいんじゃ。弥生先
生はわしのもんじゃけん、かんちゃんが横か
ら好きとか言うとわしは困るんじゃ」
「ごんちゃあん、さすがごんちゃんじゃ、わし
は結婚なんちゅうことは考えれんかった。た
だ何故かいつも一緒にいたいという、漠然と
した気持ちだけで苦しめられとったんじゃ」
「ほうかその程度の気持ちなら、弥生先生の
ことは諦めた方がええぞ、弥生先生を思う
気持ちはわしの方が強そうじゃ」