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してあげなさいよ」完一の母親が別の皿に料
理を入れて、笑いながら権次に渡した。
「わし中学出たら働くけど、親父に小遣いや
るのいやじゃのう。親父に金やったら、それ、
癖になって当てにするけん」
「そうか、いつも子供の金を当てにして、飲み
歩いてばっかりになっても、お父さんの健康
にも良くないわねえ。じゃ、お父さんが本当に
お金が必要な時には差し上げれるように、し
っかりと貯金しておくのよ」
「うん、分った」
「ごんちゃんは偉いねえ。今はいろんな苦労
してるようだけど、不平も言わず頑張ってる
から、必ず良いことが有りますよ。うん、神
様だって放っておきゃあしませんよ」
「ごんちゃんは人間はええ奴じゃけん、絶対   
幸せ掴むと思う。心配があるとしたら気が短  5   
こうて喧嘩っぱやいことじゃ。これだけがご    1
んちゃんの悪いとこじゃけん、社会に出たら
気を付けないかんぞ」完一がビスケットトリュ
フを箸で掴んで、口に放り込み一口で食べて
から言った。権次も完一の真似をして、ウイン
クをしながら、親指を立てて言った。
「満足や、わしこんなにおいしいもんたらふ
く食べたのは生れて初めてや」
「まだデザートが出るけんしっかり食べなさ  
いよ。料理の残りは失礼かもしれないけど、 
折に入れてもらってあげるから持って帰りな
さい」完一の母親が笑って言った。
「ありがとうございます。兄ちゃんも姉ちゃ
んもびっくりするぞ」権次は嬉しそうに言っ
た。そこには飾りも繕いもない純朴な中学
生の姿があった。
           (四)
 M中学校はL字型に校舎が立っていて、正