一般的なカゼ(ウイルス性上気道炎)の場合、発熱は3日、咳・痰は5日前後で収まります。小児で熱が3〜4日以上続き全身状態のすぐれない場合や、大人で咳・痰が1週間以上続く場合には、二次的な感染症も疑われます。また、大人で2週間以上症状が続く場合には腫瘍の存在も疑われます。特に、血痰・部分的な痛みには注意が必要です。当院では気管食道科として、副鼻腔炎、喉頭炎、気管炎などの上気道炎に続発する急性の咳に対応しています。遷延化する咳や下気道疾患については、呼吸器内科、呼吸器外科、小児科と連携して対応しています。以下に咳が続くことによって注意すべき疾患を挙げました。*青字の病気が特に耳鼻咽喉科と関連します。
急性喉頭炎、急性気管炎、声門下喉頭炎(仮性クループ)(インフルエンザ桿菌による細菌性喉頭炎に注意)
急性気管支炎(8割以上が一般的なウイルス)、細気管支炎(乳幼児のRSウイルス、ヒトメタニューモウイルスなど)、気管支肺炎
肺炎 [ 細菌性 ウイルス性 誤嚥性(高齢者) 間質性(膠原病、自己免疫疾患、薬剤過敏など)]
マイコプラズマ気管支炎・肺炎:乾いた咳や微熱が続きます。軽い風邪症状から1〜3週間かけて徐々に増悪することが多いです。細菌より小さく一般的な抗生物質が効かない病原菌ですが、特定の薬が著効します。肺胞の周囲の間質に軽い炎症が持続することが多く、呼吸困難をきたす肺炎となることは稀なことから「異型肺炎」とも呼ばれます。感染力は弱いものの、家族に感染することもあります。3〜4年で以前の抗体が少なくなり再感染しやすくなります。
クラミジア肺炎(オウム病含む):マイコプラズマと同様の反応。小児と抗体の減弱した高齢者に多い。
百日咳:風邪症状から1〜2週間かけて徐々に咳が強くなります。3種混合接種前の0才児が重症化。予防接種の抗体は4〜12年で減弱し、小児や成人の発症例の報告が増えています。
結核(肺、気管支、喉頭、リンパ節など):高齢者は潜伏感染の後に活性化。20代以下の新規感染は2年以内に発症。痰が乾燥しても病原体だけでも空気中を浮遊する麻疹、水痘と並ぶ空気感染の病原体。確定には喀痰塗抹培養検査。血液のQFT(T-SPOT)検査は感染後8週で陽性、未発症者でも20才代3% 50才代10% 70才代30%で陽性の既感染です。持続する咳、微熱、体重減少に注意しますが、様々なレントゲン所見、臨床症状があります。
喘息性気管支炎、乳児喘鳴、気管支脆弱症、喉頭軟化症、Ω型喉頭蓋
気管支喘息:小児はアレルギー体質によるアトピー型、中年期以降はカゼの炎症後に発症する感染型が多い。
喉頭アレルギー、アトピー咳嗽、咳喘息(細気管支の狭窄)
過敏性肺臓炎(夏カビなど)、シックハウス症候群(化学物質過敏症)
感染後気道過敏症(咽喉頭の炎症の遷延も影響します)、副鼻腔気管支症候群
慢性気管支炎、COPD(慢性閉塞性肺疾患)、肺気腫、び慢性汎細気管支炎、気管支拡張症 *長期喫煙に注意
肺癌、気管支腫瘍、縱隔腫瘍、胸膜腫瘍
気管支異物、気胸、胸膜炎、肋間神経痛(ヘルペス後)
肋骨骨折:咳のし過ぎによる肋軟骨接合部の疲労骨折が多い
逆流性食道炎(咽喉頭酸逆流症)
心因性咳嗽
一部の降圧剤(ACE阻害剤)