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当院は、耳鼻咽喉科、気管食道科、アレルギー科専門クリニックです

TEL. 089-973-8787

〒790-0045 愛媛県松山市余戸中1丁目2-1

外耳炎、鼓膜炎、耳垢

外耳道
軟骨部(入り口):毛嚢、皮脂腺、耳垢腺という分泌腺があり耳あかが産生されます。乾いた耳あかであれば皮膚の線毛運動で入口に押し出されてきます。
骨部(奥):骨膜の上に薄い皮膚が乗った部位で、痛みを強く感じやすくできています。
鼓膜:外側より皮膚層、中間層、粘膜層の3層で出来て います。皮膚層は本来乾燥しています。
*鼻の奥と耳の奥の知覚神経はリンクしています。耳掃除をするとノドの奥が痒くなって咳込む方もいます。アレルギー性鼻炎や鼻過敏症があると、耳の奥を底痒く感じやすいので、耳を掻く癖が目立ちます。また、耳管狭窄症により耳閉感、耳の後ろの鈍痛も感じやすくなります。

耳あか(耳垢じこう):外耳道の入口半分で皮膚が剥奪し形成されます。耳あかの柔らかさは耳垢腺の数と性質によって決まり、体質は遺伝します。日本人の2/3が乾性タイプ、1/3が湿性タイプです。

耳掃除の注意点:外耳道の奥半分は傷付きやすいです。痛みを感じる部位は鼓膜に近い部位ですので、無理に掻かないようにして下さい。*「家庭での耳掃除は推奨しない」との意見(2018年 米国 頭頸部外科学会)もあります。
乾性タイプ:入口に出てきた耳あかを掻き出す様に取って下さい。
湿性タイプ:漫然と綿棒を回すと耳あかを奥に押しやります。周りをふき取る様に取って下さい。
外耳道が狭いタイプ:ベビー用綿棒やそれを細くしたものを使ってみて下さい。*当院に細綿棒を用意しています。 
小児:皮膚は4週サイクルで再生しています。2~4週に一度程度、入浴後の耳あかのふやけた状態が耳掃除を行いやすいです。耳たぶを後ろに引っ張ると外耳道の奥が見やすくなります。光の入る範囲で、ベビー用綿棒か小さな耳掻きで撫でる様に手前に掻き出して下さい。急に動いて鼓膜まで傷つけることも珍しくないため、耳掻きを持った手の腹を子供の耳の周囲に当てて保持したり、介添えの方が子供の手を握っていると、急に耳掻きが奥に入りませんので安全です。
*耳あかが奥に詰まって取れない場合はご家庭で無理せずにご来院下さい。
極端に耳掃除を嫌がる小児:過去に痛かった記憶があるのだと思います。耳の入口を撫でられるのは本来気持ちの良いものです。親子のスキンシップとして、耳の入口を撫でることに慣れることから始めてみて下さい。

外耳道真珠腫:耳かきの傷などで上皮の一部が皮膚の裏側に入り込み、真珠腫という増殖性のかたまりになり、骨がやせてきます。増殖が奥に広がると鼓膜穿孔を起こします。真珠腫母膜の完全除去は困難で、3~6ヶ月毎の清掃が必要です。骨破壊が強い場合や中耳に進展する場合には手術も必要です。

耳癤(じせつ):外耳道入口部の毛穴に感染が起こり腫れてきます。軽度の場合は内服薬と軟膏で治療しますが、膿が袋状になった場合は切開排膿処置が必要となります。指でかきむしると、毛穴を伝って炎症が広がりとびひ(伝染性膿痂疹)になります。夏季の小児で目立ちます。

粉瘤(ふんりゅう)(皮膚嚢腫):皮膚の垢がたまる袋(アテローム)が皮下にあり、しばしば黒点状の開口部が見られます。抵抗力が落ちた時に腫れます。難治ではパンチによるくり抜き法や全摘出手術を行います。

頚部蜂窩織炎(ほうかしきえん)、リンパ節炎:外耳炎の炎症が拡がると、首の皮下が腫れたり(蜂窩織炎)、耳介の後ろや下のリンパ節が腫れてきます。程度が強い場合は注射剤も用います。

耳介炎(蜂窩織炎、丹毒)、耳介軟骨膜炎(虫刺され、細菌感染―耳介変形の後遺症に注意)、耳介血腫(打撲、スポーツ)、耳介帯状疱疹ケロイド(ピアスの刺激など)

急性外耳炎:耳掻き後の傷、汗、プールの刺激などで、細菌感染を来したものです。真菌(カビ)と混合感染する場合もあります。ささいな傷でも感染を起しやすく、痛みを感じやすくなります。
治療法
内服薬;抗生剤、消炎鎮痛剤、トラネキサム酸を症状が強い場合に用います。
軟膏;抗生剤、ステロイド剤を外耳道入口半分に1日2回塗布します。
点耳液;抗生剤、ステロイド剤、消毒液を、奥から鼓膜の炎症に、1日2~3回点耳します。
*内服薬を飲みきっても症状が変わらない場合は再診して下さい。症状が軽くなったが続く場合には軟膏や点耳液をさらに3日間続け下さい。それでも症状が続く場合は再診して下さい。
生活の注意点:痛みが続く間は、熱いお風呂や激しい運動など頭がのぼせる状態は避けて下さい。スイミングも控えて下さい。
検査
細菌培養、薬剤感受性検査;抗菌剤への薬剤耐性菌やカビの有無を調べます。結果は1週間後に判明。
真菌鏡検;カビの有無を顕微鏡で見ます。
皮膚描記テスト;皮膚の毛細血管の過敏性を判定します。

外耳道湿疹:乾燥性湿疹やアレルギー(アトピー)素因、皮膚が異常角化する尋常性乾癬や糖尿病などによる免疫力の低下の有無に注意します。
治療;ステロイド軟膏、抗ヒスタミン剤軟膏の塗布や、抗アレルギー剤の内服を行います。*ステロイド軟膏を長期使用すると真菌の増殖を誘発したり、アトピー性皮膚炎が悪化する場合があります。3日塗布後は休薬して連用は控えて下さい。

外耳道真菌症:湿疹が続いたり体の免疫力が落ちると、本来皮膚に隠れている真菌のカンジダ(白色ペースト)やアスペルギルス(白色、黒色)が増殖し病原性を表します。皮膚は2週間周期で再生しますので最低2週間、難治であれば4週間治療を続けます。難治例では抗真菌剤を内服します。
<点耳法> 1日2回 ①抗真菌剤クリームを米粒大程綿棒につけ、痛くない程度に外耳道の奥に塗る。
②抗生剤点耳液を1週間、消毒液点耳液をさらに1週間、3~5滴程度奥に垂らす。
③先程の綿棒で鼓膜まで液が到達して塞がって聞こえる程度まで軽く塗り広げ、5~10分間横を向いて寝る。(時間がなければ塗り広げるだけでも結構です)
④外に出てきた液をふき取る。

悪性外耳道炎:外耳炎の炎上が周囲の骨部に波及。悪化すると頭蓋底骨髄炎に。緑膿菌などの耐性菌が多く、糖尿病があると起こりやすい。抗菌剤の長期投与が必要。*癌ではありません

肉芽性鼓膜炎:慢性炎症により鼓膜の中間層が露出して盛りあがった状態です。感染に対する治療の後、ステロイド剤の点耳で炎症を軽減させます。難治例では、粘膜の乾燥作用のある消毒液マーキュロクロム液(赤チン)や蛋白凝固剤硝酸銀・トリクロロ酢酸、強酸性収斂剤ブロー液を集中的に使用します。肉芽を削り取る不良肉芽鉗除、レーザー焼灼も試みます。
★真菌、緑膿菌、MRSAに対して、ピオクタニンの外耳道塗布が有効との報告もあります。

耳茸(みみたけ):良性のポリープです。中耳の鼓室粘膜の肉芽が鼓膜穿孔部から外耳道に隆起したものです。

水疱性鼓膜炎:インフルエンザなどの病原性の強いウイルス感染やマイコプラズマ感染では鼓膜や中耳粘膜の炎症が強くなり、鼓膜の炎症が強いと表面に水疱が出来ます。耳鳴、めまいが出現すれば内耳炎を疑います。高音障害型感音難聴を来すことが多く、後遺症化しないための治療が必要になります。

外耳道ヘルペス、ハント症候群:外耳道や鼓膜に水胞が出来て強い痛みが生じるとともに、帯状疱疹ウイルスによる内耳炎、顔面神経炎を併発し、後遺症化することがあります。
<注意> 初期には耳の周囲の軽い痛みだけで一般的な外耳炎と区別がつきません。2~3日後に内耳炎による難聴、耳鳴、めまい、顔面神経麻痺による顔面のしびれ感、味覚低下、口の中や目の乾燥感が出現した場合は、必ず再診して下さい。

外耳腫瘍
良性 皮様嚢腫類皮様嚢腫(耳介後面に好発、皮脂腺の貯留嚢胞)、稗粒腫(角質の貯留嚢胞)、色素性母斑(先天性のほくろ、時に剛毛を伴う)、血管腫(単純性、海綿状、イチゴ状―自然消退があり10才まで経過観察)、腺腫脂肪腫脂漏性角化症(外耳道入り口に好発)、肉芽腫(慢性刺激)
悪性 扁平上皮癌基底細胞癌(増殖は遅い)、悪性黒色腫(転移しやすい)