抗原蛋白の同定、食品アレルゲンの表示、除去食品の普及、学校給食での取組み、自己注射エピペンの承認など、食物アレルギーへの取組みは進んでいます。最近は原因抗原を避ける取組みから、摂取して体を慣らす方向へ治療が変わりつつあります。気道アレルギーは主に吸入性抗原が原因でIgE抗体が反応の主体です。食物アレルギーでは腸管免疫を司るIgA抗体が反応の主体となり、全身的な反応が強く出る傾向にあります。ごく稀ですがショックで死に至る場合もあります。当院では救急的な対応のみ行い、総合病院を中心とした内科、小児科、皮膚科での治療を原則としています。
1、臨床型分類、原因食品:@クラスT(経口摂取により消化管で感作が生じて誘導される一般的な反応、特殊例として食物依存性運動誘発アナフィラキシー(FEIA) 1人/12000人小中学生)と、AクラスU(交叉反応により非経腸管的に誘導される、花粉やラテックスとフルーツによる口腔アレルギー症候群(OAS))があります。特にアトピー性皮膚炎(AD)では、ドライスキンや毛細血管の異常、吸入性や接触性抗原、日光や機械的刺激への過敏、皮膚細菌感染、自律神経失調などの様々な修飾因子が複合的に作用します。
*仮性アレルギー:鮮度の落ちたサバなどの青魚にはヒスタミン様物質が含まれ、むしろ食中毒に近い病態です。
2、症状、診断、治療:離乳食開始時以降にアトピー性皮膚炎や胃腸炎を繰返す場合には、精査の上、加工食による部分制限も含めた除去食を検討します。乳幼児期の卵、牛乳、小麦アレルギーは2〜6才で耐性が出来ることが多いのですが、7才以降では改善が難しくなります。小児期からはエビ、カニ、そば粉など反応の強くなるアレルギーの出現に注意します。日本でのアナフィラキシー死はハチ刺し20名、食物3名、その他10名/年間と稀ですが、反応が強くなる可能性があれば総合病院で自己注射の携行も検討します。
<治療>
1)除去食
2)薬物 インタール細粒;食前投与でアレルギー反応を抑制します
3)急性反応の治療
@抗ヒスタミン薬;IgEを介する反応を抑制
Aステロイド;免疫反応を総合的に抑制、経口での効果発現には数時間要するが、遅発反応も抑制
Bアドレナリン;昇圧と血管収縮作用、自己注射薬エピペン、注射薬ボスミン
4)耐性誘導療法 *感作状態が軽減(特異的IgEが低下)するのではないことから「減感作療法」ではなく「免疫療法」と表すよう提唱される
@経口免疫寛容:抗原性が少ない食品から初めて“食べながら慣らしていく”治療です。主に腸管関連リンパ組織で産生されるIgAによる反応が抑制されます。種々の抑制機序が研究報告され始めており、腸内細菌叢の重要性も示唆されていますが、全容は解明されていません。
A急速特異的経口耐性誘導療法(rush SOTI):入院の上、卵、牛乳、落花生、小麦などの重症アレルギー児に対して2週間で耐性獲得を目指す治療も試みられています。
3、予防:妊娠中の母親の食事制限,授乳制限,母乳や人工乳の制限などが有用との報告は無く、確実な予防法は確立されていません。