本文へスキップ

当院は、耳鼻咽喉科、気管食道科、アレルギー科専門クリニックです

TEL. 089-973-8787

〒790-0045 愛媛県松山市余戸中1丁目2-1

顔面の傷の取り扱いと湿潤療法

 耳鼻咽喉科は頭頸部外科医として顔面の外傷を扱っております。院長は前任の総合病院では、頭頸部外科の1人医長として、交通事故を含む顔面外傷、顔面骨骨折に広く対応してきておりましたので、顔面の傷でご心配な点がありましたら、ご相談下さい。ただし、やけどは皮膚科に、将来的に瘢痕などの美容上の問題が残ったり再修正が必要な場合には(美容)形成外科に紹介しています。*時に「耳鼻科のドクターって傷は縫えるんですか」と質問されることがあります。内心少しさびしく感じながら、上記のような説明をしておりました。前任の病院では、重症の交通事故の患者さんが搬送された際には、縫合に1〜2時間かかる緊急処置や緊急手術を行っていました。(午前の外来を急遽休診にするご迷惑を外来患者様におかけしていたので、ある種苦い思い出なのですが、、)


ここ数年、傷は乾燥させるのではなくてウェットな状態を保ったほうが早くきれいになおる、との考えが普及しつつあります。当院では、血が染み出る真皮に至る創傷に対しては、モイストヒーリング(湿潤療法)の考えに沿った処置をします。

<治療方針>
浅い表皮のすり傷:乾燥していればバンドエイド程度のガーゼでの傷口の保護のみ。小児では治りかけのかさぶたを無理にはがさないよう注意して下さい。入浴は可能ですが、傷口は擦らないようにして下さい。

真皮の傷:傷口を洗浄の上、創傷被覆剤のキチン膜(ベスキチン)やハイドロコロイド(デュオアクティブ)、ハイドロゲル(ビューゲル)を当てて固定します。被覆剤の交換時期は、@滲出液が周囲に染み出た時に随時 A被覆剤が傷口からはがれ、かつ傷口が乾燥してない時に随意 B連続して5日間程度張り続けた後で傷口が乾燥していない時 を目安にして下さい。被覆剤の下の傷口がジュクジュクして白くふやけていても滲出物が周囲に漏れなければ、基本的に張り続けておいて結構です。ただし、2才以下の小児はかぶれたりとびひを誘発することもありますので、あまり痒がったり痛がったりするようであればはがして下さい。

〜 傷が治るまでの経過と治療方法 〜
 創部が落ち着くまでに約1〜2週間くらいかかります。以下におおよその経過と処置法を述べます。 @徐々に傷から出てくる滲出液が少なくなります。A端から漏れてこなくても4〜5日したら被覆剤をとり替えて創部を洗って清潔にします。B特にデュオアクティブは貼ったまま入浴・洗髪が可能です。デュオアクティブは、はがして入浴し、その後に新しいものに替えても結構です。C創部からの滲出液ががほとんど無くなり、被覆剤がふやけなくなったら被覆剤をはがして傷口をきれいに洗って下さい。*デュオアクティブと同様の市販品に「キズパワーパッド」(ジョンソン&ジョンソン)があります。

皮下組織に至る深い傷:創傷被覆剤の真皮欠損用コラーゲンスポンジ(テルダーミス)を当てる。当院では応急処置にとどめ、(美容)形成外科に紹介します。

傷跡に発赤や腫れ残っている場合:紫外線でしみが残りやすくなります。遮光と圧迫のためのテープや日焼け止めクリームを数ヶ月使用します。

切り傷:美容上の観点から、出来るだけ傷口固定用のテープだけで傷口をふさぎます。ただし、傷口が深く皮膚に段差が出来る可能性がある場合や、緊張がかかる部位で傷口が開きやすい部位には出来るだけ細い縫合糸で縫い目が目立たないように縫合します。顔面は皮膚の付きが早い部位ですので、治療後2〜3日目に半抜糸、5日目に全抜糸します。

傷口が汚れている場合:小さな砂や異物が皮下に混入したままだと、外傷性刺青(いれずみ)が残る場合がありますので、表面麻酔の上、充分に洗浄します。

*土、鉄さびのついた傷:破傷風に注意します。3種混合ワクチンの効果の落ちた高齢者では、潜伏期5日前後から口が開きにくいなどの硬直が出現します。破傷風免疫ヒトグロブリンの注射で治療します。

*動物に咬まれた場合:動物の口内には嫌気性菌と呼ばれる抗生物質の効きにくい細菌がいます。受傷後の皮下周囲への感染の波及に注意します。抗生物質の服用が安心です。必要に応じて外科に紹介します。特に海外で野犬に咬まれた場合には狂犬病(潜伏期1ヶ月、咬傷部位の違和感ののち精神症状が出現、発症前ならワクチンが有効)にも注意します。