スイミングの有用性は広く認められており、健康増進のために、ぜひ積極的に行なってください。しかし一方で、耳、鼻の病状を悪化させる面もあります。鼻炎や中耳炎にかかりやすい方はスイミングのプラス面とマイナス面を十分勘案して水泳の可否を決めなければなりません。
<<プラス面>>
1:全身の筋力、心肺機能を無理なく高める
2:体力を増進させ、免疫力を高める
3:風邪にかかりにくくなる
<<マイナス面>>
1:消毒の塩素が、鼻、耳、目の粘膜の刺激になる プ−ルから上がった時に目が充血するのと同じように、鼻の粘膜もただれます。
※塩素について:プ−ルの水質に関しては、一定以下の細菌数に押さえる ために塩素系消毒薬が含まれています。この塩素が粘膜に刺激を与えるため、鼻の粘膜が障害されるのです。
2:寒い季節;プ−ル前後の着替えを含めて体を冷やしやすくなり,風邪にかかりやすくなる。風邪をひいた後:過度の運動が免疫力の低下を引き起こし、風邪がぶり返す。
以下に、代表的な病気におけるスイミングの可否の目安を述べます。判断にお困りの際は、診察の際に院長にご質問下さい。
1:急性中耳炎、滲出性中耳炎:耳だれがでる、鼓膜が乾いていない、急性期の鼓膜の穴が閉じていない、などの場合は控えてください。中耳に滲出性の水が残る、鼻から中耳に空気が入らず鼓膜の陥凹が強い場合は控えた方が好ましい場合が多いです。急性中耳炎の場合は治癒の経過で一概には言えませんが、反応の強い中耳炎の場合は最低1週間、多くは2週間前後控えるのが目安です。また、中耳炎を繰り返す(反復性中耳炎の)お子様の冬期のスイミングスク−ルもお勧めできません。
2:耳管狭窄症:鼓膜の中が乾燥して、ある程度空気が入っていれば(チンパングラム C1タイプ)可能です。
3:穿孔性中耳炎、鼓膜チュ−ブ留置:鼓膜が乾燥化しておれば、防水耳栓(イヤ−パティ−、ドグズプロプラグ 等)とスイムキャップの使用で可能です。ただし、飛び込み、潜水は出来ません。特に、チュ−ブ留置児童に対する水泳の可否は,学会でも様々な考えがあり一定していません。私自身の考えとしては,お子様の情操教育の面からも、夏期に学校活動の一環として行われる水泳に限れば,確実な経過観察のもとで出来る限りさせてやれればと思います。しかし,寒い時期の水の入れ替えが不十分な室内プールでの水泳は避けたほうがよいと考えます。
*2015年版小児滲出性中耳炎ガイドラインのチューブ留置時の意見として;常時耳栓を使用すると耳漏の頻度が優位に低下したとの論文もあれば、常時の耳栓で耳漏の頻度が56%から47%に減じただけとの論文もあります。このことから、患児に過度の行動制限を行わないために“常時の耳栓装用は勧めるべきではない”としています。ただし、“感染の機会の高まる湖や海での水泳・プールでの深い潜水・バスタブでの潜水は避けて、耳漏が反復したり水泳で耳痛を訴える患児では耳栓の使用を指導すべき”としています。
4:外耳炎、鼓膜炎:表面が乾燥化するまではできません。
5:急性鼻炎、急性上気道炎(いわゆる風邪):急性炎症が治まるまではできません。
6:鼻出血:一度出血すれば、血管が正常化するのに2〜3日かかります。拡張した血管が静まるまでは控えて下さい。
7:急性副鼻腔炎:控えて下さい。
8:慢性副鼻腔炎(蓄膿症):活動性の細菌感染が続く間は控えてください。慢性期で鼻汁が停止していれば可能ですが、当然、治りにくくはなります。
9:アレルギ−性鼻炎:慢性的な鼻づまりタイプの鼻炎の場合は好ましくありません。スイミングの後に症状が強くなる程度であれば、鼻炎のスプレ−等でコントロ−ルは可能です。
10:気管支喘息、咳喘息、アトピー咳嗽:水泳の有効性は広く認められており,積極的に行って下さい。しかし,児童に多いアトピ−型喘息では高率にアレルギー性鼻炎を合併するため,鼻炎に対する影響は考慮する必要があります
11:急性気管支炎、喘息性気管支炎:控えてください。