日本人の成人では約40%が「頭痛持ち」で、片頭痛が8%、緊張性頭痛が22%、その他が9%とされています。当院では必要に応じて神経内科・脳神経外科・眼科・歯科・麻酔科(ペインクリニック)と連携しています。
!危険な急性の痛み!激烈な頭痛、吐き気、意識の薄れ、眼のかすみ、手足のしびれなどの複数の症状が、急に重なって出てきた場合には、緊急CT、MRI検査が必要となります。
例:脳出血、急性くも膜下出血、脳動脈瘤破裂、慢性硬膜下血腫(頭部打撲後)、脳梗塞、一過性脳虚血発作、脳炎、髄膜炎、視神経炎、緑内障発作、副鼻腔炎からの視性合併症・髄膜炎、内耳炎
診断のポイント:
片頭痛 ⇒平素は症状が無い、体を動かすと痛みが悪化、時に拍動痛でない場合もある
神経痛 ⇒拍動痛 緊張性頭痛 ⇒持続的な痛みが入浴で改善する
薬剤連用性頭痛 ⇒月5〜10回以上鎮痛薬を使用し、徐々に薬の効きが悪くなる
脳腫瘍 ⇒12才以下の後頭部痛、高齢者の新規に発症した頭痛、成人のいつもと違う頭痛
<神経痛、麻痺、痙攀>
三叉神経痛(眼神経、上顎神経、下顎神経);治療はテグレトール(2〜4錠で開始し6錠まで、眠気、めまいに注意)
大後頭神経痛、顔面神経麻痺、舌咽神経痛、顔面神経痛(中間神経痛)(外耳道が痛みの中心)
顔面(眼瞼)痙攀;
両側眼瞼痙攣にデパス、アーテン、ボツリヌス毒素(ボトックス)
片側顔面痙攣にアルマール(降圧抗不整脈抗ふるえ薬、遅脈・低血圧・喘息悪化に注意、あがり症にも使用)、リボトリール(精神安定剤)、ボトックス(ボツリヌス毒素注射)、神経血管剥離術(70%有効)
天気痛(メニエール病)、部分てんかん発作
帯状疱疹後神経痛、ハント症候群(めまい、難聴、顔面麻痺、声帯麻痺などの合併に注意)
非定型歯痛(脳内の知覚受容障害)、疼痛性障害・転換性障害・身体化障害・心気障害(精神的)
<放散痛、炎症、腫瘍>
耳管狭窄症 ⇒中耳の陰圧化 ⇒耳の後ろの鈍痛
鼻 炎 ⇒副鼻腔ブロック ⇒目の周囲の鈍痛
鼻腔接触点頭痛(鼻中隔弯曲症から)
(航空性)副鼻腔炎(篩骨洞、上顎洞、前頭洞、蝶形骨洞)
中耳炎、外耳炎、耳下腺炎、顎下腺炎
慢性上咽頭炎、扁桃炎、口内炎、むし歯、顎炎、舌炎、頚部蜂窩織炎、過長茎状突起 ⇒耳周囲への放散痛
頚肩腕症候群(肩こり)、顎関節症(側頭部痛)、側頭動脈炎、視神経炎
頭蓋内腫瘍、眼内腫瘍、頭頚部腫瘍(中耳癌、上咽頭癌、扁桃癌、上顎癌、舌癌 etc)
<機能性頭痛>
片頭痛:脈打つように「がんがん」と痛み、日常生活が妨げられる痛みや吐き気を伴うとてもつらい頭痛です。思春期頃から多くは30歳までに発症することが多く、女性が男性の約4倍、有病者は国内で840万人。
発現機序は、ストレスなどの刺激により脳内セロトニンが減少し、三叉神経が興奮してCGRPが放出されて受容体と接合して血管が拡張し、血管周囲の神経が痛みを感じることが判ってきました。
症 状:脈に合致した拍動性の痛みである。
痛みは頭の片側の時が多いが、両側の時もある。
頭痛は、数日〜数週間の間隔をおいて発作性に現れる。
一回の頭痛は数時間から3日で治まる。
前兆(目の前にチカチカと光が見える閃輝暗点)のあるタイプがある
頭痛発作時に、吐き気、嘔吐を伴うことがある。
頭痛発作時に、強い光や大きな音、不快なにおいで痛みが悪化する場合がある。
明け方から目覚めの時に頭痛発作が起こることが多い。
体を動かすと痛みが強くなるため、動けなくなる。
ストレス、生理、空腹、気圧や気温の変動、アルコールなどで誘発される。
検査と診断:CT、MRIなどの検査ではわかりません。問診と投薬(診断的治療)により判断します。
治 療:
消炎鎮痛解熱剤:頻用による薬剤連用性頭痛の誘発に注意
ロキソニン
ブルフェン(5才より)
ボルタレン(胃潰瘍の誘発に注意);鎮痛剤過敏症に注意
コカール(アセトアミノフェン)(小児、妊婦、授乳婦も服用可)
トリプタン製剤:片頭痛の血管拡張抑制、前兆期ではなく発作が始まった初期に服用
マクサルト(速攻作用時間短のため小児に有効)
イミグラン(薬剤連用性頭痛に注意、注射、点鼻があり嘔吐で服薬不可能な場合に有用)
ゾーミック
レルパックス
アマージ(遅効作用時間長)
ジタン系製剤:レイボー 2022年発売、発作開始1時間後でも有効、悪心、光音過敏に有
CGR受容体拮抗薬:エムガルティ、アジョビ、アイモビーグ
2021年発売、1ヶ月〜3ヶ月に1回注射、専門医が処方、保険適応で1回4万円前後
★先進医療:心房中隔欠損症(卵円孔開存)のカテーテル治療 静脈内セロトニンの脳への移行予防
片頭痛予防薬:月2回以上の発作が続く場合に服薬を検討します。3ヶ月で効果安定
テラナス、ミグシス;カルシウムが細胞内に入るのを防ぐことで血管の収縮を防ぎます。同系降圧薬と異なり脳血管に対し選択的に作用ので全身的な血圧降下作用をほとんど示しません。
トリプタノール;抗うつ薬、便秘、口渇に注意
デパケン;抗てんかん薬、妊婦小児には服用不可、血中濃度モニターのための血液検査が必要
インデラル;降圧、抗不整脈薬 *少量投与のため副作用は起こしにくい
予 防:空腹時に頭痛は起こりやすいので、食事は3食しっかり食べる。 チョコレートや赤ワインなどの飲食物は避ける。 寝過ぎや寝不足は避ける。旅行中に起こることも多く、旅行中でも生活リズムを崩さないように心掛ける。
○月経関連片頭痛:片頭痛の発症には女性ホルモンが関与しており、生理2日前から生理後3日までに多く、症状の強い場合が多い。経口避妊薬やホルモン療法で頭痛が悪化することがあります。
○脳過敏症:片頭痛の体質が改善した後になって脳内の過敏症が起こってきて、不眠、耳鳴、めまいが起こる病態が提唱されています。抗うつ剤、抗てんかん薬で治療します。
○気象病(天気痛):低気圧により内リンパ水腫の刺激が三叉神経を介して脳内に伝達され全身的な痛みが誘発されます。酔い止め薬(トラベルミンなど)、手首のツボ「内関」が有効。
緊張型頭痛:肩こりで後頭部を中心に、歯を噛みしめる顎関節症で側頭部を中心に、筋肉の過緊張から生じます。消炎鎮痛剤(湿布)、筋弛緩薬、抗不安薬、抗うつ薬、漢方薬(葛根湯など)で治療します。
・週2〜3回からほとんど毎日起こる
・頭が絞めつけられるように痛む、または重たいような鈍痛がある
・肩こり、眼の疲れを伴う
・OA作業など、同じ姿勢を続けていると起こりやすい
混合型頭痛:片頭痛と緊張型頭痛が同時に出る場合と、その時々でどちらか一方が出る場合があります。
群発頭痛(三叉神経・自律神経性頭痛):目の周囲の内頚動脈に片頭痛同様の血管拡張が起こるとも考えられていますが、成因ははっきりしていません。トリプタン製剤(特にイミグラン点鼻)と純酸素吸入で治療します。
・一定期間にまとまって起こる
・片側の目の奥がえぐられるように痛む
・痛くてじっとしていられない
・涙が出たり目が赤くなる、または鼻水、鼻づまりを伴う
・頭痛が起こる時期にお酒を飲むと必ず頭痛の発作が起こる
・30才代の男性がほとんど。
薬剤連用性頭痛:消炎鎮痛剤の予防的な服用で、徐々に痛みを感じる域値が低下します。特にカフェイン含有市販薬の月10回以上の使用に注意します。痛くなる前からの予防的な服用は避け、漢方薬などを活用して消炎鎮痛剤の使用頻度を抑えます。
低髄液圧症候群:立位や坐位で15分以内に悪化し、項部硬直、耳鳴、聴力低下、光過敏、悪心などを伴います。脳外科的に造影脊髄MRI,CTや髄液圧測定で髄液の漏出を確認し、硬膜外血液パッチなどの治療を行います。
頭痛で用いる漢方薬:
五苓散(ゴレイサン);浮腫(水毒)の改善
当帰芍薬散(トウキシャクヤクサン);貧血、蒼白、浮腫の改善
加味逍遥散(カミショウヨウサン);のぼせ、月経不順の改善
呉茱萸湯(ゴシュユトウ);冷え症、虚弱の改善
釣藤散(チョウトウサン);高血圧の改善
葛根等(カッコントウ);のぼせの改善
桂枝人参湯(ケイシニンジントウ);のぼせ、食欲不振、全身倦怠の改善