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当院は、耳鼻咽喉科、気管食道科、アレルギー科専門クリニックです

TEL. 089-973-8787

〒790-0045 愛媛県松山市余戸中1丁目2-1

鼓膜チューブ

  滲出性中耳炎が難治化した場合に鼓膜切開を行ないますが、切開孔は1週間前後で閉鎖し、鼻からの換気能力が改善しなければ中耳炎は再発しやすくなります。そこで、切開孔を長期的に開けておく目的で鼓膜チューブが用いられます。直径2〜3mmの管を切開した穴に挿入し、1ヶ月〜2年程度挿入します。チューブ挿入後は中耳腔が乾燥化し、聴力が正常化します。(無意識に近いレベルでこもった感じの聞こえになりますが、チューブ留置前に比較すると劇的に聴力が良くなり違和感を感じることはありません)また、抜去は簡便に出来ます。
 
チューブを入れるタイミング:滲出液の溜まる状態が続くと、鼓膜の菲薄化、中耳内粘膜の浮腫状肥厚化、耳小骨の変形・離断・硬化、中耳の奥に広がる乳突蜂巣の発育抑制が起こりやすくなります。以下のような問題が生じればチューブ挿入を考慮します。
1、難聴の持続:集中力の低下、情緒の発達への悪影響、言語発達の遅れ
2、中耳炎の増悪の恐れのある時
  鼓膜の高度部分陥凹(ポケット形成)のため真珠腫性中耳炎発生の恐れ
  鼓膜の高度陥凹の持続から癒着性中耳炎への進行の恐れ
3、滲出性中耳炎の急性反復化 風邪をひくたびに発熱や痛みを伴う急性中耳炎になる *鼻風邪が治り難い晩秋〜春の経過に注意します
4、中耳炎慢性化の悪循環:細菌感染の除菌不良、中耳粘膜の肥厚と不良肉芽化、コレステリン肉芽腫の発生
★2015年に小児滲出性中耳炎治療ガイドラインが作成され「滲出性中耳炎が3ヶ月以上遷延し、鼓膜の病的変化や両側性の難聴が強い場合にはチューブ留置を推奨する」とされました。

適応と挿入期間
成人:難治性滲出性中耳炎で鼓膜切開を繰返しても直ぐに再発する方に長期留置を考えます。
小児:耳管機能、アデノイド及び口蓋扁桃肥大、副鼻腔炎、アレルギー性鼻炎などの中耳炎が慢性化する種々の要因が軽快する年令を総合的に判断して留置期間を設定します。当院では、まず3ヶ月程度の短期留置で経過をみます。原則的には最長2年でチューブを抜去します。
0才児:当院では原則的には行ないませんが、短期的に挿入する施設もあります。*薬剤耐性菌の増加に伴う0才児の難治化反復化に対し耳鼻科の学会でもチューブ留置の適応とする意見もありますが、薬剤耐性菌に効く抗生物質の発売にともない、2006年以降当院ではチューブ留置を必要とする小児は減っています。

方 法:当院では鼓膜切開に準じて局所麻酔下に行ないます。鼓膜切開の後、チューブを挿入します。チューブ挿入自体の所用時間は約1〜3分です。
*処置時の体動が強く、全身麻酔下の処置が好ましいと判断した小児は総合病院に紹介します。

チューブの種類
シンプルチューブ=直径1〜2mmのつばの付いていない筒状のチューブです。短期留置に用います。
つば付きシンプルチューブ=浅いつばが付いた筒状チューブです。
Bチューブ、Tチューブ=深いつばのついたチューブです。長期留置に用います。

問題点:鼓膜が菲薄化して極端に再生力の弱い場合や、つば付きのチューブを1年以上長期留置した場合には、一般的に2〜5%の割合でチューブ抜去後に鼓膜穿孔が残ります。 鼻、耳管、中耳が正常化した後も鼓膜穿孔が残る場合には、閉鎖の為の処置を行います。例)キチン膜、コラーゲン膜によるパッチ術、フィブリン糊を用いた鼓膜穿孔閉鎖術

留置後の治療について:
当日の過ごし方:顔が充血するような熱いお風呂、激しい運動、洗髪は控えて下さい。シンプルチューブの方は、翌日まで頭を強く振ることは控えて下さい。
*膿性の中耳炎では血性の耳漏が数日続き、チューブが外れる場合があります。その際は、耳漏が停止するまで点耳液を点耳して、切開口が塞がる前(約5日後)にチューブを再挿入します。

今後の通院予定:翌日(または耳漏が無ければ1週間以内)に優先的に診察します。次の診察が2週〜1ヶ月後、その後1〜3ヶ月毎の通院が目安です。チューブ周囲の痂皮付着・感染・自然脱落・鼓膜穿孔化に対する経過観察が必要です。

スイミング:飛込みやダイビングを除けば、小児でも防水耳栓を着用しての水泳は可能です。但し、冬季に水泳を続けることの可否は、風邪の流行期で消毒の塩素が鼻の刺激になる事も踏まえて総合的に判断します。