水疱性鼓膜炎
中耳炎、外耳炎の中には、聞こえの神経に後遺症を残すものもあります。そのような病気の代表的なものである水疱性鼓膜炎を紹介します。
鼓膜の表面に急性に水胞(すいほう)ができ、強い痛みを生じます。病因としては、インフルエンザをはじめとするウイルス性やマイコプラズマによる急性中耳炎の鼓膜の炎症が強い状態であると考えられています。一般的な細菌性中耳炎のような鼓室内に充満するような膿の貯留は初期には認めませんが、鼓室内粘膜の炎症も高度なため内耳炎による神経性(感音)難聴を併発ことがあり注意が必要です。水疱性鼓膜炎の約1〜3割に感音難聴が認められます。報告によっては約6割に認められたとするものもあります。さらに、これらの感音難聴の中の1割程度は難聴や耳鳴が改善せず後遺症になる可能性があります。
また、水疱性鼓膜炎と一部病態が重なるものにハント症候群があります。帯状疱疹ヘルペスの再発でおこる神経炎が聴神経や顔面神経に波及するハント症候群というものの中には、不全例として鼓膜や外耳道深部に水胞を形成するものがあります。このヘルペスに聴神経や顔面神経が冒されると、高率に顔面神経麻痺や感音難聴、眩暈の後遺症を残します。
治療は、鼓膜の水胞の形成初期時は激しい痛みを伴うことから、鼓膜表面皮膚層の緊張による痛みの軽減のために鼓膜切開を行ないます。内耳炎を併発した場合には、突発性難聴と呼ばれる急性感音難聴に準じて神経炎の治療を行ないます。ヘルペスウイルスによる感染が疑われる場合には、アシクロビルなどの抗ヘルペス剤も用います。