スギ花粉の飛散が終わっても花粉症の症状が続く方がいます。原因としてほこりのアレルギーを持っている、スギ花粉症の後も鼻や目の粘膜の過敏症が続く、などの原因がありますが、スギ花粉の飛散の後に本格的な飛散が始まるヒノキ花粉が原因となる方もいます。ヒノキ花粉症についてQ&A形式でご紹介します。
Q:ヒノキってどんな木?愛媛県にも多いの?
A:樹高30〜40m、ヒノキ科ヒノキ、学名はChamaecyparis obtusaです。高級建材として住宅建設に重宝されています。鹿児島県から福島県まで広く分布し、全人工林面積の約23%を占め、45%を占めるスギの約1/2です。(昭和61年度林野庁データより) 特に愛媛県や中国地方ではスギに匹敵するほどの植林面積を占めています。
Q:ヒノキの花粉はいつ飛ぶの?
A:開花時期は四国では3月上旬から5月初旬までで、桜の開花時期と一致します。スギが桜の開花時期に飛散終了することが多いことから、スギに引き続いて飛散する順序となります。
Q:なぜスギ花粉症の人はヒノキ花粉症にもなりやすいの?
A:スギ花粉が初めて人の体の中に入ったときに、体の免疫機構がそれを異物であると認識して、これと結合するIgEと呼ばれる抗体を作ります。その後、花粉症を起こしやすい体質の人の体内では、スギ花粉症に対するIgE抗体がアレルギー反応の主役を演じるマスト細胞と呼ばれる細胞と結合して異物反応への準備状態を整えています。そこに再びスギ花粉が入ってくると、スギ花粉とIgE抗体の間に抗原抗体反応が起きて、スギ花粉・IgE抗体・抗原であるスギ花粉の3者が一体となり異物であるスギ花粉を追い出そうとするアレルギー反応が開始されます。抗原と認識される原因物質はスギ花粉の中の糖蛋白ですが、スギ花粉とヒノキ花粉は、この糖蛋白の構造が良く似ているので、スギ花粉に反応する人は、ヒノキ花粉にも反応する事が多いのです。これを共通抗原性といいます。ヒノキ花粉の飛散量はスギ花粉に比べればその量はわずかですが、スギ花粉の反応に上積みされてアレルギー反応が出るので反応する人が多いのです。
Q:ヒノキ花粉症は今後増えるの?
A:ヒノキ花粉の飛散量は昭和40年代はわずかでしたが、その後の20年ほどの間に3倍以上に増えました。スギの植林は昭和25年の第1回植樹祭を契機に5〜6年で集中的に行われました。この時のスギが現在樹齢50年ほどを迎え壮年期になっていますが、ヒノキはスギ植林の後の昭和30年代に集中的に植林されました。これが現在樹勢の上で青壮年期にさしかかっているものと思われます。近年の比較では、ヒノキの植生数がスギの植生数に匹敵しつつあり、今後ヒノキにアレルギー反応を来す方が増えてくるものと予想されます。
(2022年1月補追)
日本の森林面積の4割が人工林で、そのうちスギが44%、ヒノキが25%です。ヒノキの人工林は雪に弱いため植林は西日本で多いです。特に愛媛県は全国でも2番目にヒノキの植林面積の多い県です。
ヒノキ花粉の主要高原Cha o 1、Cha o 1とスギ花粉の主要抗原Cry j 1、Cry j 2とはアミノ酸配列で高い相同性を有しています。そのためスギ花粉症の人の70?80%はヒノキ花粉にも感作されることになります。
2014年より始まったスギ花粉への舌下免疫療法が始まりました。当初は、抗原に対する交差反応性からスギに対する舌下免疫療法はヒノキ花粉症の人にも有効性が高いのではないかと期待されましたが、実際の有効性は50%程度に過ぎないと言うことがわかってきています。