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難聴と治療、補聴器

難聴と治療、補聴器
「耳の聞こえ」低下していませんか  
*リック取材原稿より

 騒音の大きな環境やイヤホンで大音量で音楽を楽しむ習慣など、常に大きな音が耳に入ってくる環境の中で生活していると、耳鳴りや難聴などを引き起こすことがあります。耳の健康を維持するためには、生活環境の見直しはもちろん、聴力に不安を感じたら専門医を受診し、早期発見、早期治療に努めることが大切です。また、耳の不自由な人への理解も深めましょう。

耳の仕組みと音の伝わり方:音は、「外耳道」を通って鼓膜を振動させ、その振動が「中耳」の耳小骨から「内耳」の蝸牛(かぎゅう)に伝わり、蝸牛の神経細胞が音の強さや高低を感じ取ります。そしてそれが聴神経を経由して大脳(聴覚中枢)に伝わり、そこで初めて音を認識します。

伝音難聴と感音難聴
●伝音難聴:音の伝達経路である外耳や中耳が障害されると、機械的振動が伝わらない伝音難聴になります。外耳道の閉塞(へいそく)や中耳炎などが伝音難聴です。
●感音難聴:内耳から聴神経、大脳の聴覚中枢までを結ぶ音を感じる神経に障害が起きると、感音難聴になります。

難聴の主な原因とその対策
●耳あか:耳あかがたまりすぎると、聞こえが悪い状態になります。耳を傷つけないように定期的に耳掃除しましょう。
●中耳炎:風邪をひいてのどや鼻に炎症が起こると、化膿菌が耳管を通って中耳に入り、粘膜に炎症を起こして中耳炎になります。難聴になる可能性が高いので、風邪の治療をしっかりすることが大切です。時に小児では、知らず知らずのうちに長期化する場合もありますので、保護者が集中力不足など、子どもの様子を観察してください。
●内耳炎(突発性難聴):突然、聞こえなくなると同時に、急激に高度な難聴になります。内耳にいく血管異常で起こる血流障害や、ウイルス感染により感音難聴になります。主に片耳が聞こえにくくなります。発症から2週間くらい経つと完治そにくくなり、1ヶ月すると後遺症が出るので、早期治療が大切です。
●脳疾患:高血圧、脳梗塞(こうそく)、脳出血、脳腫瘍(しゅよう)などの脳の疾患が原因で難聴が起きることもあります。難聴を治すためには、脳疾患の治療が前提です。
●老人性難聴:加齢により内耳を中心に聴神経から脳までの神経機能が徐々に落ちて感音難聴になったものが、老人性難聴です。左右同程度に高音部分から進行し、場合によっては高音の耳鳴りを伴う場合もあります。一般的には60歳ごろから自覚し始めことが多いようで、70歳くらいからは話し声が聞こえにくくなります。音が小さく聞こえるだけでなく、音がゆがんだり、大きい音が響いて不快に聞こえてきます。そのため、音としては聞こえても言葉としての聞き取りが悪くなります。さまざまな音が交った雑音の多い環境では、一段と聞き取りにくくなります。

補聴器について
●利点と限界:伝音難聴の人が補聴器を装用すると、劇的な効果が期待できます。一方、高度感音難聴の場合には、良好に聞き取れる範囲が制限されます。補聴器をつけても、雑踏のような環境では小さすぎる音は聞こえず、大きすぎる音はビンビンゆがんで聞こえる傾向があります。
●購入する時の注意点:補聴器の調節をきちんとしてくれ、購入した後も引き続き聞こえ方に応じて調節や相談に応じてくれる販売店で購入するのがベストです。耳鼻咽喉科を受診し、治療可能な難聴であるかどうかの診断を受けた後、認定補聴器専門店や補聴器販売店協会加盟店を紹介してもらうと安心です。紹介された販売店で試用などを通じて自分によく合った補聴器を手に入れましょう。高価なものが必ずしも良いとは限りません。
●補聴器選びのポイント:補聴器の着用を悟られたくない人は小型の耳穴式、仕事などでステレオ感覚が必要な人は両耳装用の補聴器がお勧めです。コンピューターで周波数別の音圧を調整するプログラマブル補聴器や、音声をデジタル変換して聞きやすくするデジタル補聴器が標準的となっていますが、福祉用補聴器を除けば高性能ですが決して安価ではありません。家庭内のコミュニケーションを円滑にする程度の難聴であれば、手ごろな値段の耳かけ式や、レディーメイドの耳穴式、集音器などを試してもよいでしょう。

家庭や周囲の人の理解と協力が必要:補聴器を装着した難聴者に大声で話しかけると、うるさく聞こえたり言葉を聞き違えてしまうことがあります。補聴器による雑音や音に慣れるまで、難聴者の正面を向いて、ゆっくりはっきり話しかけてあげましょう。


難聴に関する最新の治療法紹介します  
*毎日新聞寄稿文より

 耳は大切な器官です。聞こえが悪いと、子供やお年寄りをはじめとして心身に与える影響は計り知れないものがあります。3月3日は「耳の日」です。少し早いですが、耳寄りな話として難聴に対する最新の治療法を紹介しましょう。
 難聴の原因は、鼓膜や中耳で音の振動が伝わりにくくなる伝音難聴と、神経自体が悪くなった感音難聴に分けられます。
 伝音難聴の代表的な原因に、中耳炎の後遺症やけがなどで鼓膜に穴があいたままになった慢性穿孔性中耳炎があります。鼓膜を手術で再生しようとすると、これまでだと、長期の入院が必要なことが多かったのですが、近年、フイブリン糊という人体用の接着剤を用いた手術(鼓膜形成術)、キチン膜やコラーゲンスポンジなどによるパッチ術で、鼓膜の穴を簡単に閉じられるようになってきました。 これらの方法は短時間で安全に行うことができ、入院の必要もありません。また、高度な伝音難聴の中には、補聴器を用いても十分に音が聞こえないタイプの中耳炎もあります。これに対しては、人工中耳と呼ばれる高感度の補聴器を中耳に植え込む手術も開発されています。
 一方、神経の障害でほとんど音が聞こえない高度な感音難聴に対しては人工内耳と呼ばれる音の信号を発する電極を内耳に植え込む手術が行われ、赤ちゃんにも適応可能となっています。音を部分的な電気信号に分けて伝えるので、完全な音として聞こえるわけではないのですが、訓練次第では会話も十分聞き取れるようになります。もし、ヘレン・ケラ-が現代に生きていれば耳が聞こえるようになっていたかもしれません。京都大で、高度感音難聴のサルの内耳にiPS細胞を入れて、中等度難聴まで改善したとの報告がありました。再生医療で内耳細胞自体を再生されることも将来可能になるかもしれません。
 聞こえを補う補聴器の技術革新も着実に進んでいます。感音難聴の場合、単に音が聞こえにくいだけでなく音が割れて聞こえたり、耳鳴りを伴うことが多いため、自己流で補聴器を付けてもうまく聞こえないことがありました。補聴器の出力を調整する測定器や、雑音のないデジタル補聴器の開発により、それぞれの人の難聴のパターンに応じて細かく音の増幅度を調節できるようになってきました。レ-ガン元米国大統領が用いて有名にな た耳の穴に入れる超小型の補聴器も感度が良くなっています。
 耳鼻咽喉科で診察を受ければ聞こえの状態に応じて適切なアドバイスを受けられますので、難聴でお困りの方は相談してみるとよいでしょう。


耳鳴・難聴・めまい・頭痛のQ&A50問  
*健康雑誌 夢21 2016年10月号 わかさ出版 より

Q 難聴は老化だけでは起こらないと聞きましたが、実際はどうですか?
A 通常、耳の聞こえ方は年齢を重ねるにつれて悪くなります。耳の奥の内耳や脳の聴覚中枢が衰え、聞こえづらくなるのです。
 とはいえ、すべての難聴が年齢による「老人性難聴(最近は加齢性難聴と呼ぶ)」というわけではなく、さまざまなタイプがあります。
 一つめは「先天性難聴」。これは、遺伝や妊娠中のウイルス感染、早産などによる生まれつきの難聴です。
 二つめは、若いころの急性中耳炎の治療が不十分な場合に起こる「慢性中耳炎による難聴」。中耳に細菌が感染している状態が長く続くと、鼓膜に穴が開いたり(穿孔性中耳炎)、中耳に滲出液がたまったり(滲出性中耳炎)して、耳の聞こえが悪くなります。
 三つめは、急に片方の耳が聞こえなくなる「突発性難聴」。これは、内耳の障害で起こる急性の難聴で、現在のところ原因はわかっていません。
 四つめは、工事の騒音やコンサートの大音響、ヘッドホンの多用などで起こる「騒音性難聴」で、強い音の振動で鼓膜などの組織が障害されることで起こります。短期に回復することもあり、この場合は「音響外傷」といいます。
 そのほかに、耳あかがつまって起こる難聴(耳垢栓塞)も多く見られます。

Q 難聴は治りやすいタイプと治りにくいタイプがあるそうですが?
A 難聴は「伝音難聴」と「感音難聴」の2タイプに大別されます。このうち伝音難聴は治りやすいタイプ、感音難聴は治りにくいタイプといえます。
 音は、外部から空気の振動として耳に入り、外耳から鼓膜、中耳、内耳へと伝わります。そして、内耳が音の信号を電気信号に変換し、それが聴神経を通じて脳に伝わることで音が聞こえるのです。
 前半の音の振動を伝える器官を「伝音系」、後半の音を電気信号に変えて脳に伝える器官を「感音系」といいます。伝音系の器官に問題が生じると伝音難聴、感音系の器官に問題が生じると感音難聴が起こるというわけです。
 伝音難聴は、物理的な音の伝わり方に問題があるので、それを解消すれば聴力は回復します。中耳炎や耳垢栓塞による難聴は、このタイプです。
 突発性難聴は発症から1週間~10日以内、騒音性難聴は音響外傷の段階で治療を受ければ、著しい改善もきたいできるでしょう。

Q 難聴はどの程度の音の聞こえにくさをいうのでしょうか?
A 耳鼻咽喉科の聴力検査では、平均聴力レベル(後述)が、およそ30デシベル(デシベルは音の大きさを表す単位)以上で難聴と診断されます。
 聴力検査の中で一般に行われているのは、どのくらい小さな音まで聞こえるかを測る「標準純音聴力検査」です。
 この検査では、防音室でヘッドホンを着け、小さな音を聞き取ります。具体的には、125~8000ヘルツの周波数について調べ、このうちの500ヘルツ、1000ヘルツ、2000ヘルツで聞こえる大きさを算出し平均します。これを平均聴力レベルといい、難聴の診断の指標となるのです。
 ふつうに会話ができる人の平均聴力レバルは30デシベル未満。小さな声で会話したさいに聞き違いが多い人の平均聴力レベルは30デシベル以上50デシベル未満で、軽度難聴と診断されます。それよりも聞こえが悪くなると中等度、高度、重度と難聴のレベルが上がっていきます。
 気になる人は、ぜひ一度、聴力検査を受けて下さい。

Q 年齢を重ねると高音が聞き取りにくくなる理由はなんでしょうか?
A 年齢を重ねることで耳が聞こえにくくなる難聴を「老人性難聴」(最近は加齢性難聴と呼ぶ)といいます。この難聴の主な特徴は、①左右の耳がほぼ同じように聞こえにくくなること、②高音域(4000ヘルツ以上)から聞き取りにくくなることの二つです。
 ①につおては、老化によって聴力が衰えるため、当然、左右の耳が同じように聞こえにくくなります。
 ②の高音域から聞こえにくくなるのは、老人性難聴が感音難聴だからです。つまり、音を電気信号に変換する内耳や、電気人鰲を脳に伝える聴神経の障害によって高音から聞き取りにくくなるのです。
 一方、低音域が聞き取りにくくなる場合には、鼓膜や中耳の障害のほか、内耳の機能低下、メニエール病が原因と考えられます。
 もっとも、高音が少し聞こえにくくなった程度なら日常生活に支障はなく、難聴に気づかない人もいます。むしろ、耳鳴を訴える患者さんを診察すると、その原因が加齢性難聴だった、というケースが珍しくありません。

Q 急に片方の耳が聞こえにくくなりました。何が原因ですか?
A 突然、片方の耳だけが聞こえにくくなった場合、「突発性難聴」の疑いが濃厚です。突発性難聴は、内耳の蝸牛が、何らかの原因で障害されることによって発症すると考えられています。蝸牛が障害されると、音を電気信号に変換できず、脳に音の情報を送れなくなるのです。
 症状の特徴は、急に片方の耳(まれに両方の耳)の聴力が高度に失われること。めまい、耳鳴、吐き気を伴うこともあります。
 突発性難聴は、早期(発症後1週間~10日以内)に治療を始めれば聴力の改善が期待できます。症状に気づいたら、48時間以内に耳鼻咽喉科を受診するのがベストです。
 難聴が軽くて、めまいを伴っておらず、生活習慣病(糖尿病・高血圧・高脂血症)でない人は、早期の治療で聴力が回復しやすいといえます。
 突発性難聴のほか、メニエール病や聴神経腫瘍にかかった場合も、片方の耳だけが聞こえにくくなります。専門医に症状をくわしく伝え、原因を明らかにしましょう。

Q 工事の騒音で耳が聞こえにくくなりました。治療で治りますか?
A 工事・工場の騒音・コンサートの大音響などによって耳の奥の内耳が障害されると「音響外傷」が起こります。
 具体的には、内耳の蝸牛の中で音の振動を感知する感覚細胞(有毛細胞)が一時的に傷つき、音が聞こえにくくなるのです。音響外傷は多くの場合、難聴だけでなく耳鳴を伴います。
 この音響外傷は、速やかにステロイド薬(副腎皮質ホルモン)や血流の改善薬を点滴・内服すれば、たいてい聴力は回復します。
 ただし、長期間にわたって大きな音にさらされると、音響外傷から本格的な感音難聴に進行して難聴が慢性化し、薬剤を使っても回復しなくなります。そうした難聴を「騒音性難聴}といいます。
 音響外傷は、大きな音を聞く環境にいるかぎり進行するので、工事の騒音からは耳栓などで耳を守りましょう。
 大事なことは、音響外傷で耳の聞こえが悪くなったら、すぐに耳鼻咽喉科を受診すること。早期に治療を受けるほど改善が見込まれます。
 なお、工場など職場の騒音が原因で高度の騒音性難聴になった場合には、退職時に労災の適応を受けることが可能です。

Q 薬が原因で難聴になることがあると聞きました。注意すべき薬は?
A 難聴の原因となる薬は、抗生剤の「ストレプトマイシン」「カナマイシン」「ゲンタマイシン」、抗ガン剤の「シスプラチン」です。また、鎮痛剤のアスピリンや一部の利尿剤でも一時的な難聴を起こす場合があります。
 いずれも、内耳に対して毒性を持つ薬で、聴覚障害の原因になります。例えば、ストレプトマイシンは主に前庭半季刊の障害、カナマイシン、ゲンタマイシン、シスプラチンは主に蝸牛の障害を引き起こすと考えられています。
 しかし、先に列記した薬の中の抗生剤は、いずれも数十年前に登場した古い薬です。現在では、聴覚障害の副作用がない新しい薬が用いられており、処方されることは少ないと考えていいでしょう。
 薬害による難聴が問題になったのは、半世紀以上も昔の話です。当時、結核の治療で抗生剤のストレプトマイシンがよく使われていました。この抗生剤で多くの命は救われましたが、その反面、薬の副作用で難聴を訴える人が続出したのです。
 現在、難聴を起こす薬はごくわずかなので、さほど心配する必要はありません。ただし万一、ここで述べたよう薬を処方されたら、医師から副作用の説明を受けてください。
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