昔を思い出して 月落ち烏啼きて霜天に満つ 鞭聲肅肅夜河 春眠暁を覚ず 処処啼鳥を聞く 人間到る処青山有り
国破れて山河あり
唐の詩人、張継の漢詩 「楓橋夜泊
月落鳥啼霜満天
月(つき)落(お)ち烏(からす)啼(な)きて霜(しも)天(てん)に満(み)つ
月は西に落ちて、カラスの鳴く声が聞こえ、
厳しい霜の気配は天いっぱいに満ちている。
江楓漁火対愁眠
江楓(こうふう)漁火(ぎょか)愁眠(しゅうみん)に対(たい)す
運河沿いの楓と、川に灯る漁火が、
旅の愁いの、浅い眠りを、かすめる。
姑蘇城外寒山寺
姑蘇(こそ)城外(じょうがい)の寒山寺(かんざんじ)
姑蘇城外の町はずれにある寒山寺から
夜半鐘聾到客船
夜半(やはん)の鐘声(しょうせい)客船(かくせん)に到(いた)る
夜半を知らせる鐘の音が、私の乗る船にまで聞こえてきた
鞭聲肅肅夜過河
武田軍 鶴翼の陣 川中島の戦い 車係りの陣 上杉軍
鞭聲肅肅夜過河
「題不識庵撃機山図」
不識庵 機山を撃つの図に題す
川中島  <ョ 山陽>
不識庵は上杉謙信、機山は武田信玄
鞭聲肅肅夜過河
鞭聲(べんせい)肅肅(しゅくしゅく) 夜(よる)(かわ)を過(わた)る
馬を打つ鞭音も静かに、夜、川を渡る
曉見千兵擁大牙
(あかつき)に見(みる) 千兵(せんぺい)の 大牙(たいが)を擁(よう)す
夜明け、眼前に、将軍のたてる旗と数千の兵、現る
遺恨十年磨一劍
遺恨(いこん)なり 十年(じゅうねん) 一劍(いっけん)を磨(みが)き
無念なり、この十年、一心に剣を磨いたが
流星光底逸長蛇
流星(りゅうせい)光底(こうてい) 長蛇(ちょうだ)を逸(いっ)す
流星の飛ぶ如く、刀光一閃のうちに、信玄を打ちもらす
武田軍の 鶴翼(かくよく)の陣
上杉軍の 車掛(くるまかりくるまがかりとも)の陣
鶴が翼を広げるように、本陣を中心として左右が広がった陣形、敵軍を
中央に突撃させ、左右の翼をせばめて包囲する陣形である。
自軍の部隊を円形に配置し、
車輪が回転するように動かしていく陣形。
次々に新手の部隊が突入するため
攻撃力を発揮しやすい陣形である。
衝軛(こうやく) 鶴翼(かくよく) 長蛇(ちょうだ) 雁行(がんこう) 方円(ほうえん)
魚鱗(ぎょりん) 鋒矢(ほうし) 偃月(えんげつ)
基本陣形   横陣(おうじん
衝軛 道を塞ぐ 鶴翼 鶴の翼 長蛇 蛇の如く 雁行 雁の飛ぶ態 方円 円形
魚鱗 魚の鱗 鋒矢 鉾と矢 偃月 半月の意
横陣
春眠不覺曉 處處聞啼鳥 夜来風雨聲 花落知多少
眠不覺曉 處處聞啼鳥 夜来風雨聲 花落知多少
薄い字は中国の古い漢字

五行絶句

処風聞覚鳥暁


春眠(しゅんみん)暁(あかつき)を覚(おぼえ)ず

処処(しょしょ)啼鳥(ていちょう)を聞(き)く

夜来(やらい)風雨(ふうう)の声(こえ)

花(はな)落(お)つること 多少(たしょう)なるを知(し)らんや
(訓読文)
春眠 暁を覚えず
処処 啼鳥を聞く
夜来 風雨の声
花落つることを知らず多少ぞ
(現代語訳文)
春の眠りの心地よさに
夜の明けるのにも気がつかずにうとうとしていると
あちこちに鳥の鳴き声が聞こえる
昨夜は雨風の音がしていたけれど
花はどれほど散ったのだろう
 
春曉 (しゅんぎょう)

孟浩然(もうこうねん)

中国,唐代の詩人(しじん)。湖北(こほく)省襄陽(じょうよう) の人。

春眠(しゅんみん)暁(あかつき)を覚おぼえず

処処(しょしょ)啼鳥(ていちょう)を聞(き)く

夜来(やらい)風雨(ふうう)の声(こえ

花(はな)落(お)つること 多少(たしょう)なるを知(し)らんや
薄い字は中国の古い漢字

五言絶句

処風聞覚鳥暁


春眠(しゅんみん)暁(あかつき)を覚おぼえず

処処(しょしょ)啼鳥(ていちょう)を聞(き)く

夜来(やらい)風雨(ふうう)の声(こえ)

花(はな)落(お)つること 多少(たしょう)なるを知(し)らんや
(訓読文)
春眠 暁を覚えず
処処 啼鳥を聞く
夜来 風雨の声
花落つることを知らず多少ぞ
(現代語訳文)
春の眠りの心地よさに
夜の明けるのにも気がつかずにうとうとしていると
あちこちに鳥の鳴き声が聞こえる
昨夜は雨風の音がしていたけれど
花はどれほど散ったのだろう
 
春曉 (しゅんぎょう)

孟浩然(もうこうねん)

中国,唐代の詩人(しじん)。湖北(こほく)省襄陽(じょうよう) の人。

春眠(しゅんみん)暁(あかつき)を覚おぼえず

処処(しょしょ)啼鳥(ていちょう)を聞(き)く

夜来(やらい)風雨(ふうう)の声(こえ)

花(はな)落(お)つること 多少(たしょう)なるを知(し)らんや
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人間到る所青山あり
将東遊題壁  釈 月性

将に東遊せんとして壁に題す  釈 月性


男児志を立てて郷関を出ず
学若し成る無くんば死すとも還らず
骨を埋むる豈惟だ墳墓の地のみならんや
人間到る処青山有り


男子たるもの、
ひとたび志を立てて故郷を出たからには、
学業の成就をみなければ、いかなることがあっても
、わが故郷に帰るものではない。
自分の骨を埋めるのは、
必ずしも先祖代々の故郷を望むものではない。
この世はどこに行っても、
自分の墓地となる青く美しい山はあるのだから。
(『漢詩漢文の名句名言』・日本実業出版社)による。
kuni
国破れて山河あり
春望(しゅんぼう)  杜甫(とほ)
国破れて山河在り
城春にして草木(そうもく)深し
時に感じて花にも涙を濺(そそ)ぎ
別れを恨(うら)んで鳥にも心を驚かす
烽火(ほうか) 三月(さんげつ)に連なり
家書(かしょ) 万金(ばんきん)に抵(あた)る
白頭(はくとう) 掻(か)けば更に短く
渾(すべ)て簪(しん)に勝(た)えざらんと欲す
国都長安は反乱軍の手に落ち破壊されても、周辺の山河や自然は昔通り、
城内に春の季節がおとずれて、草や木が緑深くおい茂った。
戦乱の非常時を思えば、変わらずに咲く花を見ても涙がこぼれ、
家族との別離の悲しさに、鳥のさえずりにも心が痛む。
いくさののろしは三ヶ月間、途絶えずに上り、
家族からのたよりは途絶え、もし届けば金にかえられない貴重なもの。
白髪は、愁いや悩みで頭を掻くたび衰え短くなり、
いまや冠を留めるピンでさえ、通せないほどになってきている。