聴神経腫瘍


一方の耳が聞こえにくくなった、耳鳴りがする、めまいがする」 などの症状がある時、耳鼻科で検査をします。「内耳の神経が原因」と診断された場合に数は多くないのですが、注意すべき病気に聴神経腫瘍があります。

聴神経腫瘍は良性脳腫瘍の一つで、音を伝える蝸牛神経と平衡感覚をつかさどる前庭神経からなる第八脳神経(聴神経)に発生します。

この腫瘍は良性で通常は年月をかけてゆっくり大きくなっていきます。がんのように他の臓器(肺や肝臓など)に転移をするとか一〜二ヶ月で急激に増大することはありません。しかし腫瘍ですから徐々に成長し、大きくなるとすぐそばにある顔面神経や三叉神経を圧迫するようになり、耳の症状以外に顔面のマヒ、しびれ、痛み、小脳の圧迫によるふらつき、歩行障害、水頭症の合併による意識障害などの症状がでてきて、最終的には生命にかかわってくるこわい病気です。

初発症状で最も多いのは聴力低下です。腫瘍は通常は片側にできますので、腫瘍のできた側の聴力が低下します。「電話が聞き取りにくい」「人ごみでの会話が聞き取りにくい」などの症状で気づくことが多いようです。耳がつまったような感じ(耳閉感)が現れることもあります。うまくこの時期に診断がつけば、多くは腫瘍が小さな時期に早期発見ができますが、このような症状を来たす病気は沢山あるので、必ずしもこの病気を考えて、すべてのケースに最初から精密検査を施行することは不可能です。症状の変化を経過を追って、慎重にみていくことが重要となります。

検査は聴覚検査、平衡検査などの神経耳科学的検査を行いますが、レントゲン、CT,MRIなどの画像診断が決め手となります。

治療は一刻を争って、というわけではありません。しかし、早期発見、早期治療が大切であることは他の腫瘍と同じです。治療は放射線治療、ガンマナイフ(特殊な放射線治療装置)などもありますが、手術的に摘出するのが基本です。手術は腫瘍が小さい場合は耳鼻科的に耳からのルートで可能ですので、耳鼻科医が行います。腫瘍が大きくなれば、開頭手術が必要となり脳神経外科医が行います。

注意すべきは、腫瘍はゆっくり大きくなっていきますので難聴などの症状も少しずつ進行することが多いのですが、5−10%は突発性難聴のかたちで、急激な症状として発症しますので、突発性神経性難聴で治りが悪いときや、めまいがどうもはっきり治りにくいときは、この病気も念頭において精密検査が必要となります。