鼻出血について

顔面から真っ赤な血がぽたぽた滴りおちてくるとびっくりして、 気丈な人でも心配で顔色が蒼くなります。

鼻はその形や部位の関係で外傷を受けやすく、内側の粘膜には「鼻としての役割、機能」をちゃんと発揮するために沢山血管が分布しており、人体の中でも最も出血しやすい部分の一つです。普通は何かの拍子にたまたま血が出ても、すぐ止まり、繰り返すことは少ないのですが、そうでない場合は非常に心配になるものです。

家庭用医学雑誌を見ると、鼻血は血液系の病気とか、血管の病気、あるいは腫瘍の前兆、などと、とかく恐ろしいイメージで書かれていることも多いようです。「血液系の病気」と聞くと「こわい」と思ってしまう人も多いと思います。しかし、かつてはこわい病気の代表と言ってもよかった白血病も、今では治療効果が非常に良く、こわい病気ではなくなりつつあります(勿論早期診断、早期治療が重要ですが)。また誤解の一つに「脳の血管が切れて一部が鼻血として出てくるのでは」と心配される場合もあります。

頻繁に鼻血が出たりすると、悪い病気を想像したり、出血多量で一大事になるような不安にかられ、とくに夜間に出たりすると救急車を呼んで病院にかかったりすることになりがちです。

同じ鼻血でも子供と成人、とくに高齢者の場合とでは区別して考えなくてはいけません。子供は鼻血を非常に出し易く、ある統計によれば、学童の一割が習慣的に(一回でなく)鼻血を出すと言われています。その数多い鼻血のうち、約九割は鼻ほじりによって鼻の粘膜を傷つけることが原因です。したがって鼻血がよく起こるからといってもほとんどは悪い病気を考える必要はありません。むしろ基礎疾患としての慢性鼻炎、アレルギー性鼻炎、蓄膿症(副鼻腔炎)があるかないかをしらべる必要があります。

成人でも基本的には子供と同様ですが、とくに高齢者ですとその他に高血圧、動脈硬化症、貧血などの全身的要因、局部的要因として腫瘍なども念頭において対処する必要があります。

家庭で出来る上手な止血法
出血部位で一番多いのは鼻中隔軟骨(鼻の障子)の前端ーキーゼルバッハ部位と言いますーです。沢山出る時は本人も家族もどうしてもパニックになってしまいます。気を落ち着けて「小鼻をしっかり指で押さえて」みましょう。安静が大切ということでベットに寝かせたり、鼻を冷やりたり、うなじをトントン手で叩け、髪の毛を引っ張れ、など色々言われていますが、何と言っても一番確実なのが出血点を圧迫して止める方法です。

もう一つのポイントは「座った姿勢のまま」小鼻を圧迫することです。寝た姿勢では鼻血がのどへ流れやすくなり、飲み込むとむせたり、気分が悪くなったり、嘔吐したりして、余計厄介なことになります。

うまく出血点を圧迫出来ていれば、ほとんどの場合は数分から十分以内に止まります。手近にテイッシュペーパーやガーゼ、綿花があれば、それを鼻の入り口に詰めてその上から指で圧迫すれば、より短時間に止血できます。

鼻血が大量の時は救急治療が必要で、輸血がいる場合や、出血点が不明で耳鼻科専門医でも手におえない場合も勿論ありますが、余りパニックになることは考えものです。

補遺 (日医ニュース 健康ぷらざ 187号より抜粋引用) (2005/01/12追加)
繰り返しになりますが、時には鼻血は重大な病気のサインのこともあります。
鼻血が止まりにくく、ほかに貧血や皮膚・粘膜の出血班などがあると、白血病や再生不良性貧血、重症肝疾患などの疑いがあります。

また頭痛や生理痛でアスピリンを含んだ薬を飲んでいて鼻血が出る場合もあります。アスピリンには血を固まりにくくする働きがあるからです。

上記の止血法でなかなか止まらなかったり、量が多かったり、鼻の奥の方からのどへ流れ込んでくるような止めにくい鼻血の場合は要注意です。