のど、声の病気―喉頭ガン、声帯ポリープなど

 声がかすれる、しわがれ声になる、ひどくなると、ついには まるで声がでなくなることがあります。 のど風邪の時には勿論起こりますが、風邪が原因ですと、数 日から、せいぜい1週間前後で治ります。また変声期にさしかか った小学校高学年や中学校にかけての男子にはよくあることで す。これらは余り心配はありません。

 声が出る仕組みは実際はどうなっているのでしょうか 。 声帯のある「喉頭」はおおよそネクタイの結び目の高さ、男性 ならのどぼとけの内側、に位置します。丁度気管のすぐ上、食道 の前にあります。この部位は呼吸、嚥下(飲み下す働き)、発声を行う役割をしています。

 声がかすれると、「声帯ポリープ」とか「カラオケポリープ」 とか言うことを最近ではよく聞きます。十代後半から成人以後でもよく声を使う人、例えば、声楽を 学んでいる人、アナウンサーの方、歌手、保育所の保母さん、幼 稚園や小学校、特に低学年担当の先生などでは、声が慢性的にか すれて、いい声が出なくなることが、なかば職業病的になる人も あります。ここ十年くらいはカラオケを楽しむ方が増えて、 高い音が出にくくなって思うように歌えなくなったりして、病院 に来られることが増えました。のど奥の声帯を見ますと、声帯に イボのようなふくらみができています。正式には喉頭ポリープ、 または声帯ポリープと言いますが、カラオケをする方に多いの で、面白好きの耳鼻科医師やマスコミがカラオケポリープ と呼ぶようになり、その呼び名が定着しました。 とくにカラオケをするときは盛り上がりますから、大声で長時 間歌い、場合によってはお酒やタバコもワンセットになって、声帯に負担がかかり、ポリープー声帯にできるイボー が非常にできやすい状況となってしまいます。  

 これらはほとんど声帯の炎症であったり、腫瘍でも良性腫瘍 です。 しかしそうでない場合、とくにヘビースモーカーの方で声に変 化が生じた時は悪性の腫瘍、喉頭ガンを考えねばなりません。喉 頭ガンの原因には遺伝、ビタミンA欠乏、音声の酷使などもあり ますが、肺ガンと並んでタバコとの関連が非常に強い腫瘍で、こ の病気の97%は喫煙者であると言われております。愛煙家には まことに耳の痛い病気です。ブリンクマン指数(1日喫煙量X喫 煙年数)というのがあって、それが400を越えるとーたとえば 1日1箱、20本を20年間喫煙ーを超えると途端に喉頭ガンが 増えると言われています。

 喉頭ガンは喫煙を密接に関係があるため、今までは男性に圧倒 的に多く、男性10人に対し、女性1の割合と言われていました が、最近は若い女性でもタバコを吸うひとが増えてきており、そ の比率は縮まってきています。さらには最近の研究では直接喫煙 しなくても、副流煙を間接的に吸うこと、受動喫煙もよくないこ とがわかってきています。

 喉頭ガンやポリープの検診は耳鼻咽喉科外来で簡単にできま す。検査は口の中に歯科医が使うような小さな鏡を入れて診 るだけで、痛みも不快感も感じることなくできます。約4分の3 の人はこれで充分細部まで診ることができます。のどの反射が強 いひと、のどの奥が狭いひとには直径数ミリの細いファイバース コープを使用します。ほとんどはこの検査で詳しい診断がつきま す。

 喉頭ガンは声帯にできたときは100%声に異常がでますの で自分でも気づきやすいのですが、その少し上下の位置に生じた 時は「何となくのどがおかしい」、くらいの漠然とした「異常感」程度の ことも多く、何となく気にはなりながら病院に行くのが億劫で、 早期発見が遅れることがあります。ガンも早期ですと、最近では 随分と治りがよくなっていますので、声がおかしい、のどに異物 感がする、など気になるようでしたら、ぜひ一度検査を受けられ ると良いと思います。