製作の基本と実際
(例:駆逐艦「島風」)


ここでは「モデルジャーナル(1979年1月号)」に掲載された「駆逐艦・島風の巻」より、一部抜粋してご紹介します。
製作工法・工程が図版入りで、要点を分かり易く解説している号でありました。
(図版の細かい文字が見えにくいのはご了承ください)
尚、余談になりますが、この「駆逐艦 島風」は現在、父の手元には残っておりません。

船体の解説図


艦首より第1煙突まで。側板の張り方と、修正部分に注意。


後部甲板上。ちょっとした構造物が、塗装後に実感をそえる。


プロペラ・舵も紙製。接着剤、塗料により強度をあげる。

スクリューの解説図


メカを仮積載して浮力のテスト。


池でのテスト走航

製作・図版・原稿執筆・写真/渡部康夫

1.資料
海人社、潮書房、光人社等の各出版社より精密な図面、写真集が出ておりますが、「無断転載、複写を禁ず」の記のものはマニアの製作活動の一端として、許容範囲内で参考にさせてもらっております。(雑誌・本などに発表の場合は特に配慮が必要)
また、各メーカーにより販売されておりますプラモデルにおいても、最近はかなり精巧なものがあり、目に付く各種キットも参考にしています。また、本の挿し絵、プラモデルの箱絵等の表絵に素晴らしいものがあり、これが細部の製作に非常に役立ちます。


2.製図作成
方眼紙に1/200現寸図を書きます。大型艦の場合はそれほどでもありませんが、小型艦においては、メカ関係の出入り口に苦労します。(この「メカ関係」とはラジオコントロール走行に必要なモーターやサーボ、バッテリー関係機器のことです:転載者補足)
ダビッド、機銃、サーチライト、リール・・・等、上部構造細部およびカッター、内火艇等も、艦により6mから各種あり、共用図として別の作図となっております。


3.工具・材料・接着剤

工具としては、ピンセット、ハサミ、カッター・ナイフ、デバイダー、コンパス、直定規、分度器、それにポンチなどを使用しています。
材料は使用個所により次のようなものを利用します。
ボール紙:粘り、紙厚がちょうどよいため、船体部のほとんどに方眼の付いた工作用紙を使用。
画用紙:厚手、薄手とも。主に上部構造物の製作に。
モゾウ紙:砲身、マスト下部等。
キズキ半紙:コヨリ状にして、マスト上部、旗竿等を製作。
荷造り用紙ヒモ:炊事煙突等、場所により少量使用する。
ピアノ線:スクリュー軸、舵軸。
ニューム管:スクリュー軸や舵軸のパイプ。
板:モーター・ベース、舵軸受けに少量。
以上、推進軸とモーター、電池等のメカ関係を紙で作るのは紙様!?(神様)でも無理と思いますが、他は可能な限り紙を素材としています。
接着剤にはセメダインC(速乾・耐水性があり最適。大量使用します)、瞬間接着剤、木工用ボンド、アロンアルファ(プロペラと軸、舵と軸の接着およびプロペラ、マスト等の強度を出すために塗布)等を素材、使用部位等の別により使い分けます。


4.切り抜き・接着・組立

製図面は現寸図ですから、展開が容易です。切り抜きは主にカッター・ナイフで行い、曲線の所はハサミを入れます。「のりしろ」は、誤差を少なくするため、ほとんど取りません。切断面をのりしろとし、つきあわせで接着しています。
湾曲した部分は、紙の性質として、繊維の関係で曲げやすい方向があります。反対にすると曲げにくく、紙が折れることがあります。接着・組立の手順・方法は組立図を参考にしてください。
組立段階では、船体部のセンターの誤差をできるだけ少なくするのが要点で、各区画壁取付(メカ搭載のため、縦・横壁の一部の取り除きもあります)終了後、内部の耐・防水のためのラッカー塗装、乾燥後まで、誤差や歪みの出ぬよう気を配ります。乾燥3〜5日後で形が固まりますので、そこで不良個所を修正します。
砲身を作るには、縮尺に合ったピアノ線を中軸にし、モゾウ紙を巻き付け、接着後に抜きます。こうすると、筒状となり、砲口があり実感が出ます。
ボラードは直径2mm前後と、小さくて数も多くいります。効率よく、しかもキレイにするために、私はポンチを使用しています。ポンチの大きさはいろいろありますので、部位により使い分けます。給気筒等も同じ要領で作ります。
艦橋部等は、製作過程の写真でお判りの事と思います。窓はカッター・ナイフで切り抜いておきます。機銃身、鎖等はその感じを出すため、細くカットした画用紙をねじります。そのままでは元に戻りますので、瞬間接着剤等で固めます。


5.塗装・仕上げ

塗装はラッカーを使用、下地は特別にはしません。耐・防水の意味をかねて内部塗装は特に入念にします(現在のところ、ほぼ完全に防水ができており、スクリュー軸からの数滴の浸水があるだけです)
外部塗装はフラットベースを混ぜ、半光沢とし、3度塗りで仕上げます。接着剤等のバリが出ている場合は紙ヤスリで滑らかにし、塗装をします。
できるだけ正確に、精密に・・・との追求には、どうしてもそのための資料を入手しなければなりませんが、縮尺によって表現(製作)できない細部があります。例えば、手スリ、空中線、信号索等です。
余計なことを言うようですが、1/300〜1/500のものでも、それらを取り付けているものを見かけますが、ちょっと疑問に感じます。製作はとてものこと、紙面に線としか表すことができないと思います。対空兵装関係でもそうですが、13mmと25mm機銃とでは、大きさが違うと言ってしまえばきりがありません。省略すべき部分はなるべく実感を損なわないようにと努めております。

以上、説明では判りにくいと思いますが、私自身、製作するときに用いた製図(略図)を掲げますので、これを参考に皆さんの工夫を加えてください。
私の場合、大・小艦にかかわらず、同じ工法で製作しています。強いて相異をあげれば、側板の取り付け方が違うくらいです。

「モデルジャーナル(1979年1月号):電波実験社刊」より