#14 翡翠


 写真提供 野田 信一氏
 私がこれまで実際に見た鳥の中で、その色の鮮やかさにおいて、カワセミの右に出る鳥はいません。初めてその姿を見たのは、小川沿いの小道をジョギングしているときでした。目の前を一羽の鳥が低空飛行で横切っていきました。決して大げさではなく、それはまるで鮮やかなコバルトブルーの宝石のような色彩を放っていました。特に、両翼を広げたときの、背の部分の色が鮮烈でした。カワセミは異称「翡翠」と呼ばれ、宝石のヒスイの美しさに例えられています。
 カワセミは清流を代表する野鳥といわれているので、数年前苔色に澱んだ松山のお堀で見かけた時には、すこし驚きました。一羽のカワセミが獲物を狙い、とまっていた杭の上から水中めざして一気に飛び立ちました。あっという間のことですが、次の瞬間には小魚をくちばしに咥えて、もといた杭の上に止まっているのです。その高貴で、気高ささえうかがわせる外見と、小魚を咥えたリアルな感じが、妙にアンバランスだったのが印象的でした。