平成16年度 公開研究授業 11月9日(火)  高校英語を通訳訓練法で
 校内外の先生を迎え、研究授業(高校1年生)を行いました。1レッスンを5〜6時間でカバーする進め方で、第2時間目に和訳を生徒に渡します。このような指導法のもと「実践できる言語活動」「めざすべき到達目標」を具体的に示し、また、通訳訓練法を取り入れた授業の展開方法も提案しています。
 
この授業を撮影したものをDVDにダビングしました。
 DVDをご覧になった方から感想やご意見をいただきましたので、ご紹介します。

Mさん(福島県)
 DVDを拝見しました。タスクの連動がすごかったですね。大いに参考にさせていただきたいと思います。詳しい感想は以下のとおりです。
 1 教師が時間のコントロールをきちんとしているので、生徒も時間内で集中している。
 2 できること、努力したことに対してクラス全員で評価する教室文化を作り上げている。
 3 リピーティング、シャドーイング、ウィスパリング同時通訳、絵を見ながらの要約など、8つの活動が盛り込まれていました。同時通訳の技法というSkill-getting活動が見事に配置されている授業であると思いました。その一方で、Skill-getting活動をどうやって確保されているか私自身学びたいと思いました。GetしたSkillを使い、クリエイティブな自己発信活動まで高めるというのは英語教師の夢ですが、先生の授業ではそこまでできているのではないか、見てみたいと思いがいたしました。
 4 英英辞典を使ってのワード・ディフニッションは生徒全員が電子辞書を持っているからできるのでしょうね。羨ましく思います。生徒自身に英語の定義を言わせて、他の生徒に当てさせるアイデアは良いですね。
 5 カナダではJigsaw Readingなど4技能を統合するグループワークなどが主流でした。アウトプットがあるからインプットを懸命にやる、という流れは非常に自然だと思いました。

Yさん(千葉県) 
 生徒さんがほとんどテキストを暗記している姿、生徒さんの優秀さに驚きました。英語の要約までスムーズにできていたのはすばらしく、もちろん、最初からこうではなく、段階をたどってこういう結果になったと思うのですが、どういう展開をしたらこういう結果が導き出せるのかと考えると、頭を悩ませてしまいました。自分の勉強(研究)不足を感じます。
 また、1分間と時間を区切って活動させる等の工夫も、大変参考になりました。文字(指導案)だけでは想像がつかないところが多く、DVDを送っていただいてよかったと思います。今年は1年生を担当するので、火曜日から授業が始まります。音読の効果に興味を持っていて、1年生には音読重視で授業を展開したいと思っているのですが、先生のDVDにあったやり方、特に、ウイスパリング通訳(日→英再生)を少し取り入れて、チャレンジしてみようと思っています。
 学年で足並みをそろえて、教科書を進めなければいけないので、いろいろ制約もありますし、今、頭の中にあるideaをすべて一気にやることはできないと思うので、どういう段階を踏んでやればいいのかとか、いまだに悩んでいるような状況ですが、できる範囲でやってみるつもりです。また、何かあったらメールすることがあるかもしれません。これからもよろしくお願いします。

Sさん(熊本県)
 先生の公開授業のDVDを入手できたのが、英検2級の面接試験とセンターリスニング試行テストのデータがアップロードされた時期と偶然一致したことは、子供たちにとって、とてもラッキーでした。
 具体的には、練習用の2級面接カードを所定の20秒で黙読させたところ、2次面接を受けた3人のうち2人は、半分ぐらいしか読了できず、DVDに登場する生徒さんたちと自分たちの音読スピードを比較して、英語長文の速読トレーニングの重要性を認識してくれました。
 又、試行テストの150wpmの音声が十分に聞き取れなかったことで、DVDに登場する生徒さんたちのように英文を速読できるようにならなければならないことを理解してくれたようです。
 その後、浪人生が志望校(東大理科T類)に合格したことで、2年生の連中も、「先輩すごいですね」と言いながらも、本音では「他の科目は無理だけど、英語だけなら、先輩のレベルまで行けるかもしれない」と思ったようで、ストップウォッチと電卓を持って音読練習をやり始めましたので、「ただ音読するだけじゃダメだぞ。先ずは自分で意味が取れるスピードで読むのが最優先だ。そして、次は周りの人間が聞いて意味がとれるように読むこと。つまり、『読み聞かせ』をするつもりで音読しろ」と指示しました。
 なぜ「読み聞かせ音読」という指示を出したかと申しますと、実は、先生の公開授業のDVDを拝見して、唯一、追加すべきだという印象を受けたのが、この点だったからです。初見の英文を「読み聞かせ音読」できる訓練をしておけば、初見の英文を意味を取りながらハイスピードで黙読したり、150wpm以上の速度で読まれる初めての英文の意味を耳だけで把握できるようになると思うのですが、如何でしょうか?

 (私の返信)
 まったくおっしゃるとおりで、聞き手に分かりやすいように読み聞かせできる能力が、取りも直さず英語を理解しながら読むことができる能力に他ならないのです。比較的易しい英文を使って、「初見で読み聞かせ音読」の訓練をすれば、実践的な音読練習になると思いました。英検の2次対策にもなりますよね。Sさん、貴重なご意見ありがとうございました。

K先生(愛媛県)…K先生は、昨年私の授業を、そして先日(愛媛県から授業の鉄人と任命された)M高校のM先生の授業をご覧になり、両者の授業の比較・分析をしてくれました。

1 音読することの大切さが強調された授業
(1)野上先生もM先生もシャドウリーディング、サイトラといった方法を実践されている。
  シャドウリーディング、サイトラ・・・野上先生は、タイマーを使われてその時間内に生徒に答えさせる。
  →そのことにより、「生徒の緊張感」、「ここぞという集中力」、「授業の流れのよさ」を生み出していたように感じました。
  M先生は、生徒にパワーポイントで作らせたというスラッシュ入りの英文をスクリーンに映されれて、全員がそこに注目して授業の一体感を感じた。また、サブリミナル効果のような新出単語等のスクリーン表示(すぐに消したりできる)も最新機器を利用して、授業が楽しいものになっていた。
2 予習の徹底により、授業は生徒の練習成果の発表の場と化していた。
  野上先生もM先生も50分間を通して、テンポよく生徒に発表させていた。これにより、他の生徒にとってもよい刺激になり、予習をしないと授業についていけない→予習をすれば授業で活躍できるといった雰囲気を感じた。
 しかし、指名の仕方は違っていた。野上先生は、Any  Volunteer ?と生徒の自主性をかなり重視していて、参考になりました。M先生は、指名カードを使って、指名していた。
3 本物を追求する
   野上先生のシャドウイングは、見ていた楽しかったです。ぜひ、将来は自分なりに参考にして取り入れていきたいです。
   →ヘッドフォンを使用されていたのには感動しました。生徒の緊張感と集中力がよくわかりました。
4 英語を使う
  野上先生もM先生も、よく英語で授業を進められていて、その結果、授業の雰囲気、生徒の積極性を生んでいた。最後のサマライズでは、野上先生は、黒板に張られた絵を使って、その絵に沿って、英語で生徒がサマライズしていたのは、その成果の一つだと思った。そして、ここでもタイマーを使っておられていて、実際の会議のプレゼンのような臨場感が感じられました。また、絵など視覚に訴えることは、記憶に残りやすいと感じました。

Nさん(神奈川県)
 早速中身を拝見させていただきましたが、質の高い授業の内容に驚くばかりでした。冒頭の暗誦も驚きましたが、シャドーイングやリピーティング、さらにウィスパリング通訳をこなされているところをみると、生徒さんたち、みなさんかなりプリントを読み込まれているのでしょうか。 
 前回質問させていただいたサイトラも、映像でみることでよりよく理解できました。生徒さんたちが淀みなく日本語を喋っているのには驚かされました。私もトライしてみましたが、どうしても言い直したり、詰まったり、うまく日本語訳できなかったりと苦戦してしまいました。今まで、なるべく多くの量の英文に触れ、単語を覚えたり、表現を学んだりということはしてきたつもりでしたが、英文を頭の中で理解することにとどまっていたため、そういった日本語訳の訓練をしていなかったということが改めて分かりました。 
 それと、ウィスパリング通訳を訓練法として取り入れている様子ははじめてみたのですが、これもまた驚きで目からうろこでした。非常に有効な訓練法だなあと感心するとともに、今の自分ではできないかも・・・と思ってしまいました。やはり独りで勉強していると、どうしても英語→日本語の練習に偏ってしまい、日→英がおろそかになりがちです。日→英となると時間をかけても詰まるものを、英語の声に合わせて瞬時に発声するというのは極めて難しいと痛感しました。語彙を増やすためにも日→英を多くやった方がいいと思い、対訳の本を買ってやっていたところでしたが、瞬発力といいますか、時間的なものも意識した勉強をプラスしていかなければならないと感じました。

Sさん(熊本県)
 早速DVDをPCで再生して拝見しました。
(1) シャドーイング
 普通の高校生にシャドーイングは無理だという先入観があったのですが、英文を生徒に何度も自宅で音読させておけば、できるんですね。子供たちではなく、私自身のトレーニングに使えそうです。
(2) 単語の定義
 子供たちに電子辞書に登載されている英英辞典を使わせるというアイディアはいいですね。先生のお薦めの英英辞典は、OALD、LDOCEそれとも他の辞書でしょうか?
(3) シャドー・リーディング
 私のところに来ている子供たちにやらせるとしたら、これが一番かもしれません。何度もテキストの音読トレーニングをやって、最後にシャドー・リーディングをやれば、長文でも暗唱できるようになるでしょうね。
(4) サイトラ+ウィスパリング
 ふたつ合わせると、まさにオーラル方式による原文再現法でしょうか?英作文のトレーニングによさそうです。 私自身は、サイトラをやったことはありませんが、英文を大きな塊で捉える訓練ができますから、英文に目障りなスラッシュを入れてスラッシュ・リーディングなどというトレーニングをするより、和訳のトレーニングであるにも拘らず、英文を音読するときに遥かにプラスの効果をもたらしてくれそうな気がします。
 市販されている高校生向けのスラッシュ・リーディングの本はあまりにも英文を小間切れにし過ぎているため、あまりいい方法だとは思いませんが、サイトラは、効果が期待できそうです。    
 ウィスパリングの方は、社会人の方々が市橋敬三さんの本を使ってやっておられる「日→英」のトレーニングを次のように置き換えたという印象です。
 市橋本は短文 → → → → 野上式は長文の分割
 市橋本は活字の日本文 → 野上式は日本語の声
 大量に消化すれば、スピーキングと英作文に大きな効果が期待できそうですね。 

英 語 T 学 習 指 導 案

単元

Lesson 4   A Therapy Dog

教科書

PROMINENCE EnglishT
(東京書籍)




予習プリント-------------1 時間
本文         ------------- 2 時間(本時はその2)
Exercise    -------------1 時間
確認テスト -------------1 時間

本時の
目 標

  Snoopyの活躍を通して、人間にとってペットが大切な存在であることを学ばせる。
  積極的に言語活動を行い、コミュニケーションを図ろうとする態度を養う。 

前時の課題

音読筆写1回、音読10回、日英通訳練習


















 指 導 の 過 程 ・ 内 容

時間

指導上の留意点・準備

導入



展開
















整理

暗唱したスピーチの発表
  I have a dream.


1 新出単語の発音・意味を再確認
2 単語の定義
3 シャドー・リーディング
4 ターゲット・センテンスの構文説明 
5 英日再生    フレーズ単位訳


6 音読
 (1)    シャドー・リーディング
 (2)    シャドーイング
 (3)    リピーティング

7 日英再生
 (1)    ウィスパリング同時通訳
 (2)    英語で要約
 (3)    メモ取りリプロダクション

音読
  個人読み

5分



10分





10分




10分


10分


5分

・スピーチにこめられたメッセージが伝わるよう、感情を込めて発表させる。

・生徒の自発的な発言を評価する。

・文の構造を理解しているか確認する。

・生徒がリラックスしてデモンストレーションできる雰囲気を作る。
・フレーズ単位で、英語らしく読むことを心がけさせる。
・日本語で理解している内容を英語で再生できることを確認する。


・通訳する生徒のペースに合わせて日本語を与えるよう指示する。
・各文頭の語とキーワードから書き留めるよう指導する。

予習プリント

Lesson 4 A Therapy Dog
Part 1
Q:Put the following sentence in one of the brackets.
(Animals helping sick people are called "therapy pets.")

  The best medicine for a sick person is not always a doctor's medicine. (ア) Sometimes it is a dog or a cat. (イ) They can help sick or old people just by being with them. (ウ) Here is one example. (エ) It is the true story of a volunteer named Susan Clark and her dog Snoopy.

Part 2  
  I once took Snoopy with me when I visited a nursing home. ( good / me / feel / always / makes / visiting ), but that day was something special. During the visit, I saw a sad old woman in a wheelchair. The nurse said to me, "That woman never speaks. She doesn't respond to anyone or anything. No one can understand why she doesn't answer. (1)Nothing has worked...." She seemed to be half asleep in her wheelchair, and she did not say anything when I introduced myself. Snoopy then softly touched her arm with his nose. He touched her arm again and again. It was like magic! The woman's eyes opened wide, and a big smile appeared on her face. She looked right at Snoopy and began to talk. The woman called Snoopy "Oopy," but I am sure he did not mind She said, "Oh, what a beautiful dog! How old is he?" She even gave Snoopy a cookie, and he ate it from her open hand.  I was so happy that I almost forgot about the other people in the room. When I finally turned around, I was surprised that most of the (2)staff were standing and watching us. Some were holding their hands to their mouths, and some were just standing there ( their eyes / tears / with / in ). The head nurse was behind me. She came over and hugged me.  Soon it was time to leave. As Snoopy and I were leaving the nursing home, the staff stood on both sides of the door. They were clapping their hands and saying, "Good job, Snoopy! Good job, Snoopy!" I felt proud. I am sure Snoopy felt the same way.

Q:This is the summary of Part 2. Fill in the blanks with suitable words.
  When Snoopy and I visited a nursing home, we found an old woman in a (    ). The nurse said, "That woman doesn't (    ) to anyone or anything." However, when Snoopy (    ) her arm again and again, the woman began to (    ) and even gave Snoopy a cookie. It was like magic! When we were leaving the nursing home, the staff stood on both sides of the door, clapping their hands. I felt (    ). I'm sure Snoopy felt the (    ) way.

Part 3  
  You may be surprised. People who have not smiled for months touch a pet, and soon they begin to smile. (3)Being with animals can help people in nursing homes feel less lonely and less sad. Animal visits can make their days more interesting, and sometimes they are the beginning of a new friendship. People in nursing homes become more active and responsive thanks to these animals. Animal visits can be a lot of fun, too. They can help those people forget their pains and problems. They often talk to a dog or a cat, and share their thoughts, feelings, and memories. (4)Touching a dog or a cat can even bring down a person's blood pressure. It is also good exercise because they have to move their arms, hands, and fingers when they are holding or touching the animal.
  Through a pet, people can easily begin to talk to a person they do not know. They can talk about a common topic.  There are a lot of people in hospitals and nursing homes who once had pets. Now they are away from their pets, and of course they miss them very much. (5)Pets accept people as they are. They do not care whether someone is old or in bad health. These visits often have lasting effects. (6)Visits like these leave behind memories not only of the visits but also of happy times in their past lives.

Q:This is the summary of Part 3. Fill in the blanks with suitable words.
  Pets can help people in nursing homes in many ways. A lot of people feel less (    ) and less (    ) when they are with animals. Animal visits can help them forget their (    ) and (    ). Touching pets is good exercise because they have to   (    ) their body. Pets accept people as they are. They don't care whether someone is (    ) or in bad (    ). That's why therapy pets are useful and helpful.
和訳先渡し授業の流れ

  第1,2時限目

課題:単語,イディオムのプリント配布。生徒は意味を調べておく。
    予習プリントの問題を解き、教科書で答えを確認しておく。
    各段落で,重要だと思う文に下線を引かせる。

展開
  1 I have a dream(キング牧師)暗誦発表
  2 単語の読みと意味を確認
  3 ワード・ディフィニション(生徒2人が英語の定義を言い、他の生徒が該当する単語を言い当てる)
  4 予習プリントのチェック
  5 ターゲット・センテンスの構文を説明・・・下線部(3), (4), (5), (6)
               語句の説明 ・・・下線部(1), (2)
  6 和訳配布
  7 音読しながらスラッシング
  8 全体を英日サイトラしてから、各パートを日本語で要約させる。
  9 シャドー・リーディング(SR)
  10 音読
  11 音読筆写
  12 音読

  第3,4時限目

課題:音読筆写1回
   音読10回
   英日通訳練習

展開
 1 I have a dream(キング牧師)暗誦発表

 2 単語定義:(電子辞書を使って、生徒が英語の定義を言い、他の生徒は該当する単語を言い当てる)

 3 ターゲット・センテンスの構文を、生徒に説明させる
   語句の説明

 4 英日再生:CDを聞きながら、フレーズ単位で英日サイトラ
         part1のSR→サイトラ
         part 2のSR→サイトラ
         part 3のSR→サイトラ

 5 音読     part 1のシャドーイング           (全体→個人)
         part 2 の第1パラを、教師の後リピーティング (全体→個人)

 6 日英再生   part 2 全体をウィスパリング通訳        (全体→個人)
         part 2 全体を英語で要約とQ&A       (絵を見ながら)
         part 3 の第1パラをメモ取りリプロダクション
         (注意すべき点の確認)

 7 個人読み

                              高校英語を通訳訓練法で