移り行く
世の中には2種類の人間が居る、という言い回しがある。
使い古されて何の感銘も受けない台詞だけれど、これはこれでまぁひとつの真理ではあると思う。
光と闇、生と死、可能と不可能。
2つに分かれ、対極にあるものと比較することでその存在を確定するという真実。
他者を介してのみでしか自己を認識し得ないのであるならば、全ては1つでは存在し得ない。
故に全ては幾重にも分かれ、極論として2種に大別される。
つまりは有るものと無いものと、その2つで世界は存在している。
「先輩ー、ぼけっとしちゃってどうしたんですかぁ?」
ぽけぽけとした声で思考を中断されて我に返る、どうやらショックでちょっと混乱してしまったらしい。
声のした方向に目を向ければ、由紀がいつものようにのんびりとした表情でこちらを覗き込んでいる。
落ち着いて思い出してみよう、私は確か……。
今日はいつもの様に大学に行って……そうそう、新歓コンパで飲みに行ったんだった。
二次会のカラオケではしゃぎ過ぎたせいか終電を逃してしまって、近くに住んでる由紀の家に泊めてもらうことになったんだ。
そうして彼女の部屋まで歩いてきて、……何か凄いものを見たような。
そこまで思い出して、もう1度彼女に目を向ける。
「? どうしたんですかぁ?」
私の視線を受けて、屈託の無い表情で見返してくる由紀。どうして私が戸惑っているのかわからないといった様子だ。そんな彼女の様子を見ていると、焦っている自分の方がおかしく思えてくる。
きっとさっきの光景は私の見間違いだったに違いない、そう思い直してドアノブに手をかける。
最後に1度だけ深呼吸をして、勢い良くドアを開いた。
――それは、まるで原初の地球とでもいうべき様相だった。
もちろん私はそんな物を見たことは無い、ただこの混沌さを表現するのならばそういうしかないということだ。
最初に目に入ったのはゴミ袋の数々、そこから溢れ出た様々な物体がより一層乱雑さを際立たせている。部屋の隅の方に目を向ければ見たことも無いキノコが我が物顔で繁殖している、これなら未知の生物の一つや二つは見付かるかもしれない。
なるほど、確かに世の中の人間は2種類に分けられるのかもしれない。――片付けられる人間と、片付けられない人間に。
そんなことを考えながら1度ドアを閉め、由紀の方に目を向ける。
私の見間違いだったり、実はドッキリだとか、あるいは部屋を間違えたとかでも構わない。とにかくこの現実を否定して欲しかった。
「入らないんですかぁ?」
けれどその期待は裏切られた、返ってきたのは屈託のない問い掛け。
その何も考えてなさそうな笑顔を見た途端、私の中で抑えていた何かが弾けた。
「入れるかぁっ! 何よこの人外魔境は、東京に自然を増やしたいんなら大人しく植林でもしなさいよ!」
「先輩、こんな時間にそんな大声出したら近所の皆さんにご迷惑ですよぉ」
「この部屋の存在そのものが迷惑よっ! キノコまで生えてるじゃない!」
「美味しかったですよぉ?」
「食べるなっ!」
にこにことボケたことを口走る由紀に、一撃を入れて黙らせる。どうやら彼女にとって、この部屋の惨状は当たり前のものらしい。
「何で怒られたわからない」とでも言いた気な表情の彼女を引き摺ってコンビニへ、ゴム手袋無しであのゴミの山に触るのは流石に遠慮したい。
難航するかと思われた部屋の掃除は、思ったよりもすんなりと片付いた。……あくまで思ったよりもだけれど。
ゴミの山を掻き分けて部屋を覗いてみたところ、散らかってはいるもののゴミに埋もれてはいなかった。さすがの彼女もゴミの中で眠るのは避けたいらしい。
これならば部屋の方は片付けなくても何とかなるだろう、そう判断して2人で玄関の掃除に集中する。
片付けても片付けても無くならないゴミの山に辟易としながら、適当にゴミ袋に詰め込んでいく。この際分別とかは気にしていられない、と言うよりもゴミを確認するのが怖いし。
「それにしても何でこんなに溜め込んでるわけ? ちゃんと捨てなさいよ」
「あたし朝って苦手なんですよぉ」
「そんな理由で納得できるかぁっ!」
ふざけた理由を口にする彼女に一撃を加えて、ため息をひとつ。頭が痛いのはゴミのせいか、それとも叩かれて尚のほほんとした態度を崩さない後輩のせいか。
萎えていく気力を奮い立たせて、何とか全てのゴミを片付け終わったときには4時間近くが過ぎていた。
掃除後の爽快感なんてものはまるで無く、とりあえず横になれるスペースだけ確保して倒れ込む。中腰で作業したせいか腰が痛く、汗で体に張り付くシャツが余計に不快感を煽る。
人の家に来てまで掃除をしたための脱力感も手伝って、もう1歩も動きたくないほどに疲れ果ててしまった。
「先輩、お疲れ様でしたぁ」
「ありがと」
そうやってへばっている私に、由紀が良く冷えた発泡酒を持ってきてくれた。
プルタブをあけて一気に流し込むと、喉を通る時の冷たさと炭酸の刺激が心地好い。半分ほどを飲み干した頃には汗も多少は引いて、ようやく一息吐く事が出来た。。
「……それにしても、少しは部屋片付けなさいよ」
「えー、部屋は片付いてますよぉ」
「どこがよ……」
屈託無く答える彼女を見ていると。もう突っ込む気にもなれない。復活したはずの気力が萎えてしまいそうになる。
脱ぎ散らかされた服、散乱した雑誌、これを片付いていると表現するのは何かに対する冒涜だと思うんだけど……。
そうやって部屋を見回していると。妙に整頓された一角が目に入った。整頓されているというよりも生活観が無いといった方が良いかもしれない。
置いてあるのは小さめの本棚がひとつだけ、それも綺麗に整頓されている。整頓されているといっても本がずらっと並べられているわけじゃない、むしろその逆で空っぽに近い状態。
そんな中に一冊だけ、蔦が絡んだような意匠を施された高価そうな本が収納されている。
――その光景を見ていると、何故か「祭壇」という言葉が浮かんだ。
「……ねぇ、何であの本だけ本棚に片付けてるの?」
「…………」
何気なく問い掛けた言葉に、由紀は表情を無くして黙り込んでしまう。
突然訪れた思い沈黙に身動きひとつ取れないでいると、不意に彼女が発泡酒の缶を手に取り、一息で飲み干す。
「あれは……、捨てられない本なんです」
「捨てられない本?」
いつに無く真剣な口調で語る由紀の表情には、怯えや不安の色が浮かんでいた。
彼女曰く、あの本は中学生の時に友人に付き合って行った古本屋で購入したものらしい。別に内容に惹かれたわけではなく凝った意匠の表紙と、その割に値段が安かったから軽い気持ちで購入したとのこと。
内容は簡単に言えば百物語もの、つまり怪談を集めた短編集で、あまりメジャーな話は書かれていない。
中学生ぐらいの年頃だとその手の話への興味もそれなりにはあるもので、あまり小説を読み慣れない彼女もそれなりに楽しんで読んでいた。
その中にひとつ、今でも話の筋を覚えているぐらいに気に入っていた話があったらしい。
* * *
それは『微笑む少女』と題された、短めのお話。
舞台は日本の小さな都市、理沙という女の子の視点からその話は語られる。
理沙は特別にオカルトに興味があったというわけではないが、まぁ人並みにはそういった怖い話に興味を持っていた。学校の7不思議、おまじない、そんなことを友達と話す場面が数ページかけて綴られる。
やがて理沙は、オカルトに詳しい綾香という少女に出会い。少しずつそちらの世界への興味を大きくしていく。
綾香から語られる話は、それまで理沙が知っていたどの話よりも恐ろしく、そして現実味を帯びていた。その事実が悔しくて、理沙は綾香の知らない話を探すことに必死になった。
本を読んだり友人に聞いたり、けれど綾香の知らない話は見付からない。悔しかった、いつしか綾香への羨望は嫉妬へと変わっていた。
悩み、考え、最後に理沙が辿り着いたのは「話が見付からないのならば自分で体験すれば良い」というものだった。自分の体験談ならば自分しか知る者はいない、そう考えたのだ。
それから理沙はますますオカルトにのめり込んでいった。近くに心霊スポットがあると聞きつければ喜び勇んで飛び回り、こっくりさんなど降霊会紛いのものにまで手を出した。
理沙の行動は次第にエスカレートしていき、半年ほど経った頃には病的とも言える状態になっていた。
そんなある日の夜のこと、理沙はひとり廃墟の中にいた。元病院であるその建物に幽霊が出る言う噂を聞き、そのことを確認しに来たのだ。
理沙はもはや正常な状態ではなかった。虚ろな表情で何事か呟いている彼女の体は、べっとりとした赤に彩られている。
見渡せば辺りには数匹の犬や猫の死骸と、恐らくはその血で描かれたのであろう文様が広がっている。
それは儀式だった、素人が見様見真似で行った意味の無い――それ故に凄惨な儀式。
詠うように祈るように、虚ろな中に確かな狂気の笑みを浮かべて、理沙は何かを待ち続ける。
だがそれに応えるものは無く、あるのは廃墟独特の饐えた香りと噎せ返るような血の臭いだけ。
夜は未だ明けず、儀式も終らない。永劫に続くかと思われたその時間に終わりを告げたのは、一陣の風だった。
風は淀んだ空気を掻き乱し、瞬間理沙の視界を奪う。
突然吹いた風の中、理沙に浮かんだのは歓喜だった。
廃墟とは言え、壁に囲まれた空間に吹いた吹くはずの無い風。常識では考えられないそれこそが、理沙の望んだものだったから。
期待を込めて目を開く理沙、けれど視界に映るのは先程までと変わらぬ光景。辺りを見渡しても何の変化も見当たらず、落胆と共に視線を戻したその時。
――目の前に少女が立っていた。
空気に融け込むように、身じろぎひとつせずに立つ綾香の姿。これだけの惨状の中なのに少女の表情は平静そのものだった。
先程までは居なかったはずだ。それにここまでの至近距離に近付かれたのなら、気配に気付かないわけも無い。
だが既に壊れかけていた理沙にとって、そんなことはどうでも良いことだった。彼女にとって重要なことはただひとつ。
「アハハ、綾香ぁ、もう少し待っててね。そうしたら綾香の知らない凄い話をしてあげるから、もうすぐなんだよぉ」
狂ったように笑い、うわ言のように「もうすぐ、もうすぐ」と繰り返す理沙。
そんな彼女を前にしても少女は何の反応も示さない、ただ静かに立ち続けるだけ。
「おかしいよぉ……、もうすぐなのに、もうすぐなのにぃ……」
そのままが暫くの時が流れ、理沙の笑い声は徐々に泣き声へと変わり始める。
「どうして……、どうして何も起こらないのぉ? 綾香の知らない話、見付ける……」
理沙の中で何かが切れてしまったのだろう。打ちひしがれる様に蹲り、泣きじゃくり始めた。
暗く澱んだ廃墟の空気の中、彼女の嗚咽だけが響く。
不意に、それまで何の反応も示さなかった少女が動いた。音も立てず、理沙と目線をあわせるように屈み込む。
少女に呼応するかの様に、世界は変わる。
生暖かく澱んでいた空気は肌を突き刺すほどの冷たさを持ち、静寂は詠うような重さを、月明かりに照らされた赤は歓喜に震える。
それに導かれるように理沙は顔を上げ、少女の姿を目にする。
「――おいで」
誘う様にそう口にした少女の微笑みは、例え様も無いほどに美しく、透き通るような狂気を秘めていた。
そこで理沙の意識は途切れる――。
次の日の朝、巡回に来た警備員によって彼女の死体が発見されt。死体に外傷は無く、不思議なことにその死に顔は穏やかな笑顔だった。
* * *
そこまで語り終えて、由紀は1度言葉を切る。確かに私の聞いたことの無い話ではあったが、それほど怖い話というわけではないし、何より本を捨てられない理由がわからない。
不思議に思っていると、それを見透かしたように彼女は再び口を開いt。
「この話には続きがあるんです」
「続き?」
「そうです、この話の理沙って女の子の霊を呼ぶことが出来るんです」
「何それ、こっくりさんみたいな奴?」
いきなり話が胡散臭くなってきた。真剣に聞いてたことが馬鹿らしくなって、温くなったお酒を飲み干す。
「何かと思えば下らない、そんな馬鹿なことあるわけないでしょ」
「……私も、そう思ってたんですよ」
だが彼女はあくまで真剣な声音を崩さないまま、ぽつりぽつりと語り始めた。
* * *
あの本を読み終わってから暫くして、家に友達が泊りに来ることになったんです。
その友達は結構オカルトとかに興味を持ってて、その日も話の流れから怪談をすることになったんです。怪談と言っても別に本格的なものじゃなくて、ただお互いに知っている話をするだけの、他愛も無いものですけどね。
私は丁度例の本を読んでいたところだったので、その中からいくつかの話をしたんです。最初は友達も面白そうに聞いてたんですが、私がいくつか話し終えると不思議そうに尋ねてきたんです。
「あたしの聞いたことが無い話ばかりなんだけど、どこで知った話なの?」
そう聞かれた私は、別に隠すようなことでも無いからと思い、例の本を友達に見せたんです。
友達も例の本を気に入って、そこからは一緒に本を読んで感想を言い合ったりしていました。
本に収められた話を全て読み終わり「どの話が一番怖かったか?」なんて話していると、友達が巻末の方のページを捲りながら呟いたんです。
「ねぇねぇ、ここにもいろいろ書いてるみたいだよ」
「え、どれどれ?」
言われるままに本を覗いてみると、友人が開いていたのは奥付にある参考文献等の紹介ページ。興味を惹かれなかったので読み飛ばしていたそのページには、魔方陣のようなものが描かれていました。
解説によるとこの魔方陣を使って儀式をすると、『微笑む少女』に出てきた少女達の霊を呼び出せるらしい。
かなり怪しい話ですし、普段なら気にも留めない話です。けれどその時の私達は怪談で盛り上がっていたせいもあって、軽い気持ちでその儀式を試してみることにしたんです。
儀式に必要なものは魔方陣と解説に書かれていた呪文、それから女の子の血が数滴。
話し合った結果友達の方が机の上にあったカッターでほんの少しだけ指を切って、その血を魔方陣に垂らすことになりました。所々詰りながら呪文を唱えている間、何だか凄くいけないことをしているような気がしてドキドキしていたのを覚えています。
30分ほどが過ぎても何も起こらなくて、飽きてしまった私達は儀式を中断して雑談を始めたんです。そうやってだらだらと話し込んでるうちにうとうととしてしまって、私は気が付いたら寝てしまいました。
次に目を覚ましたのは、もう朝も近い時間でした。時計を見たわけじゃないのではっきりとした時間はわかりませんが、窓の外がうっすらと明るくなり始めていたから間違い無いと思います。
「……………………」
布団の中でぼうっとしていると、隣で眠っている友達がぶつぶつと何か呟いているのが聞こえてきました。
何だろうと思い友達の方に目をやった私が見たのは、信じられないような光景でした。
薄闇の中、こちらに背を向けてぼそぼそと呟く友達の向こう。何も無いはずの虚空には、酷くぼんやりとした、それでいて一目で少女だとわかる何かが浮かんでいたんです。
驚きと恐怖で視線を下ろした私は、そこでまた信じられないものを見てしまいました。
友達の傍らに置かれた本、ページが開いたまま置かれたその上に添えられた友人の手。それらを包み込んでいるのは夥しいほどの赤、彼女の腕から流れ出たのであろう血が全てを染めていたんです。
「……うぁ……」
思わず漏れそうになった悲鳴を噛み殺して、布団に潜り込もうとしたその時です。
息を呑む音か、或いは衣擦れの音が聞こえたのでしょう。それまで虚空を見詰めながらぶつぶつと呟いていた友達が、音がしそうなほどの勢いでこちらに振り向いて言ったんです。
「――おいで」
呟いた友達の表情に浮かんでいたのは、透き通るように美しい微笑み。白痴のように無邪気なのに、全てを見透かしているかのように深い、狂気にも似た純粋な笑みでした。
朝焼けと血で赤く染まった部屋で微笑む友達は、禍々しいほどに綺麗で。その光景を最後に、私の意識は闇へと落ちていきました。
* * *
そこまで話し終えたところで、由紀は新しい酒瓶を開けて、一息で半分ほどを飲み干した。
気付けば窓の外は薄らと明るくなり始めていて、彼女の話との符号に少しだけ体が強張るのを感じていた。
「……あれじゃない、寝惚けてたせいで幻覚でも見たんじゃない?」
茶化すようにそう言った私に、由紀は静かに首を振る。
「そんなはずはないんです――」
「何よ、血がべっとりとついた布団と友達の死体でも転がってたってオチ?」
あくまで真剣な声音で否定する由紀に、内心の恐怖を押し殺しながら冗談めいた口調で問い掛ける。
「――その日家に泊りに来た友達なんていなかったんですから」
私の問い掛けに返ってきたのは、意味のわからない台詞。
泊りに来た友達なんていない?
意味がわからない、彼女が何を言ってるのかわからない。
「あ、そっか。つまりあれ、作り話ですよーってこと?」
「違います、純粋にそんな友達なんていなかったんですよ。学校にも塾にも近所にも、家に泊りに来るような友達はいなかったんです。そんな人間はいなかったんですよ――私の記憶の中以外には」
「またまたー、そんなこと言っても騙されないって。あれでしょ? あの本にそういう話が書かれてるとかでしょ?」
ようやく辿り着いた結論に縋るように、立ち上がり本棚のほうへと近づく。きっと私がこの本を開いたときに、彼女は「ちょっとこわかったでしょぉ?」とか言いながら笑うに違いない。
そんな風に考えながら本を手に取り、ほんの少しだけ胸の中に浮かんだ恐怖を抑えつけて勢い良く本を開く。
開かれたページは血のようなもので赤黒く染まっているだけで、何も書かれてはいなかった。どのページを捲ってもそれは同じ。
不気味さに混乱しながら、どういうことか尋ねようと彼女の方を振り向いた私が見たものは。
朝焼けで赤く染まる部屋の中心で、透き通るような微笑みを浮かべる由紀の姿。その笑顔は例え様もないほどに美しく、そして狂気を孕んでいた。
――その光景を最後に、私の意識は途切れる。
* * *
これは私が大学生のときに経験した、不思議な話だ・誰にも話したことの無い、不思議な話。
きっと夢でも見ていたんだと思う、私の入っていたサークルには、由紀なんて名前の後輩はいなかったのだから。誰に聞いてもそんな子は知らないと言われたし、彼女が住んでいた筈の部屋には、ずっと私が住んでいた記録が残っている。
それなのに何故か、今も私の部屋には一冊の本がある。蔦が絡んだような意匠を施された、何も書かれていない一冊の本が。
End