作品No04
「本当に、本当に大丈夫なんですか、先輩……」 心配、と紙に書いて貼り付けてあるような顔の可南子をなだめながら、この運動会の大トリである全学年混合リレーの集合場所へと向かう。 「ええ、これくらいなら。タイムに影響するほどの痛みでもないし」 「違います! 速さとかじゃなくて、祐巳先輩の足が心配なんです!!」 彼女のほうが10cm以上は背が高い筈なのに、子犬がまとわり付く様に私の周りをぐるぐると往復する可愛い後輩。 「それなら全然心配いらないよ。本当にダメなら、無理して出たりなんかしないわ。わたしの性格、わかっているでしょう?」 「わかってるから言ってるんです。実際に何か起こる寸前のところまでは、自分の痛みとか気持ちとか抑えてガンバっちゃうじゃないですか!」 どうやら、これまでの行いの悪さからすっかり見破られているらしい。自業自得、ということだろうか。 心から私を慕ってくれているらしい、この妹のように愛しい少女を好ましく思いつつも胸のうちで僅かに嘆息する。 それでも、このリレーで遅れを取る訳にはいかないのだ。たかが学校行事。しかし、そこに賭けていまったものの大きさに改めて自らの軽率を呪う。 「大丈夫ですよ、ケガしてるんですから柏木先輩も分かってくれますよ」 それでは駄目なのだ。このチャンスにどうにか関係を改善したいと思っているのは何も彼だけではない。 私にとっても、これは千載一遇の好機。多少の代償は払っても逃す手はない。 それに……私の尊敬する、大切な、姉のように私を可愛がって面倒みてくれた祥子先輩なら。こんなことくらいで尻尾を巻いて逃げたりはしない。 「ごめんね、可南子。でも、今回だけは分かって」 どうしても留めることができないと悟ったのか、少し裏切られたような悲しい表情で顔を伏せた。 ごめんなさい。あなたの力が足りないわけでも、あなたを大切に思ってないわけでもないの。 「どうしてもね、譲れないの。」 いいえ、ただ、我慢できないだけなのかもしれない。我侭な子供みたいに。 集合時刻の合図。他のチームのアンカー走手たちも、それぞれがそれなりに真剣な表情で配置に付くチームメイト達を見つめていた。 「……結局、あなたには負けちゃったね」 既に大多数の生徒が着替えを終えて帰途についた。夕陽射す二人だけの教室で、彼―柏木―に敗北を認めた。 「本当にいいのかい? 可南子ちゃんに聞くまで気づかなかった僕が言うのもなんだけど、怪我してたそうじゃないか。 今回は無効にしても――」 「それは駄目。勝負に負けたほうが言うことを聞くと持ちかけたのも私なら、勝負の台につくことを決めたのも私なんだから。負けたから無効なんて、そんなズルはできないでしょう?」 微笑んで、気がすすまなそうな柏木の言を否定する。 悔しいけれども、これで―― これで、祥子先輩と柏木……先輩の交際を認めることができる……ような気がする。 悪い男ではないのだ。むしろその辺のクラスメートや部の先輩と比べても上だと言えるくらいの人なんだから。きっと祥子先輩を幸せにしてくれる。 「何でもお願いをしていいんだったよね。じゃあ、僕と祥子の……」 口を開く彼の言葉を、ぎゅっと目を瞑って聞く覚悟を固める。 「僕と祥子の、恋人になって欲しい」 ……? ……? ……? ……? ……? 「恋人? に、……『なってくれ』?」 柏木と、祥子先輩『の』? 「いや……実は前から、僕らは祐美ちゃんのことを見ていたんだ……。祥子とは、本当に意見が合ってね」 いや、合ってねじゃなくて……一体何を……? 「もちろん僕と祥子は物心つく前からの付き合いだし、お互い憎からず思っているさ。そのことで祐美ちゃんが僕を良く思っていないだろうことも知ってる。しかし……」 上気した顔で言い募る目の前の知らない男をぼんやりと眺めつつ、私は教室の後ろ側の扉の隙間からこちらを伺う祥子先輩の顔を見たような気がした。 あと、何故か3階のこの教室の窓の外から見たこともないような鬼の形相で目の前の男を睨んでいる可南子の姿も。 …………ごめんなさい。おうち帰る。(逃避 [なんだかなぁと思いつつも終わる] |
19点(35点満点)
・う〜ん、百合な雰囲気〜……ってマリ見てかyp!!
・二次創作は評価しにくいなぁ…… とりあえず誤字で減点1w
・パロディなのかなんなのかw
・・・・変態性欲?ごめん、ちょっとこの手の話はにがてw
・オチが最高です
・マリア様も見限ると思いますがどうかw
・中途半端な終り方な気がするけど面白いから(笑