作品No01
かぜよ吹け!!と叫んだら帽子がかぜに吹っ飛ばされた。 あのこのスカートをめくって、かぜの悪戯さ。といったら殴られた。 かぜの様な旅人にあこがれて、なってみたらただの浮浪者だった。 かぜの吹くがままになんていうと、スプリンター並の脚力が要求される。 かぜが目に染みるというが、そんなこという前にまばたきをしろ。 かぜの匂いを感じるのは、カレーの日ぐらいなものだ。 明日は明日のかぜが吹くというやつらにかぎって、現在進行の問題から抜け出せてない。 かぜを斬って走るのも相当骨が折れるだろうに・・・。 で、諸君らは私が何を言いたいのか理解できないであろう。 こんな馬鹿なこというくらいなら引っ込めという方もおられるかもしれない。 だが、私としてはこの私の考えた偉大なる思想を皆に知ってもらいたいからここにいる。 あまり時間も無いのでかいつまんで説明していこうと思うのが、必要なところが欠落して理解し難い部分ついていけない部分があるやも知れないがそういった場合は私個人に聞きに来るか、これから執筆予定の論文の内容を確認していただきたい。 では、話が逸れたが私が考える思想、言うなれば『風の中に存在する低知能』――といっても、これでは聞こえも悪く、私としてもいまいち概要をわからせるために与えるには適切な言葉ではないと考えるが、とりあえず今はこの名前で代用しておく――は先ほど列挙した余りにも馬鹿らしい結末を招きかねない――いや、確かに一部は余りに不定的なものも存在するので一概には言い切れないが――要素を多く含んでいる。 特に私が注目したいのはかぜの匂いという観点だ。 幾らどのように頭をひねって、逆立ちして考えようとも、私はかぜに匂いが存在するという結論には到底達し得ない。 ところが、よく人はかぜの香りと言う。 それは正確に言ってしまえば、かぜに乗ってやってきた何かしらの物体の移り香であって、風そのものの香ではない。 では、百歩ゆずって、かぜに香りがあったと仮定しよう。 我々人類が生まれてこの方幾年かは生物学者の方々にお任せするとして、長い年月かぜの香りを嗅ぎ続けて来たらどのようになるか。 かぜに対する香りに嗅覚が麻痺をして、かぜの香りなどはまったく無いと同じになる。 これは嗅覚疲労と呼ばれる人体現象、要するに医学、生物学の観念から見ても説明がつく現象であるからして、私の考えであるかぜに香りが無いというのが仮に間違っていたとしても、かぜの匂いは存在するがかぜの匂いを人がかぎ分ける事が出来ないのでこの考察はあながち間違っては居ない事の証明となろう。 そのまま百歩譲った状態で、かぜに香りが存在する場合に人がその香りを他のものと区別する為にその香りに触れずにどれだけの時間をおけば嗅覚が回復し、本来の香りをかぎ分ける事が出来るかということを考察していかなくてはならない。 そこで私は、一つの人体実験を行った――とは言うが諸君が考えているほど非道なものではない事をここで断っておく―― 内容はいたってシンプル、私自身がかぜの吹く場所で息を止めて、香りを感じる事が出来る段階まで三十秒ずつ息を止める時間を長くした、というものだ。 結果、私は三分五秒まで止めていたが、かぜのにおいを感じる事は出来なかった。 だが、これだけでは証拠としては不十分であり時間が短い。よって老若男女問わず十名の人間に対して同じ実験を試みたが、結果は私と同じで匂いというものは感じなかった。 しかし、私はそれでも飽き足らず五分息を止める実験を自ら試みた 遺書を書き、死ぬ覚悟をして、知り合いの友人たちに押さえつけられて、鼻と口をふさがせ、五分経過するまで何があっても手を離すなと強く言い聞かせて実験を試みた。 初めの三十秒はまだまだ余裕であった、三分までは問題なかったが、それを超えると一秒が永遠にも感じられる時間に突入した。 頭では、暴れるなと命令する私がいるにもかかわらず、体が無意識のうちにのた打ち回り、友人たちを必死に引き離そうともがく自分が居た。 四分を過ぎると私の理性よりも、生命を優先する本能が暴れだし、五分になる頃には目玉はでんぐり返り、意識は殆ど失っていた。 それでも、かぜの香りというモノを私は感じる事が出来なかった。 まだ五分しか息を止めていないので、私の考えるかぜに香りが無いという考え方を決定的に裏付けるだけの証拠とはならないが、しばらくしないうちにそれもはっきりとなるはずである。 諸君は笑われるかもしれないが、真実というモノは命の代価を払って初めて得られるものなのだ、このような世界は君たちが考えるほど甘く出来たものではない。 命をはってはじめてえられるものなのだ・・・・と、もう時間か。では今日の講義はこれまでとする。先週出した課題の提出期限は明日までであるから忘れないように・・・ |
12点(20点満点)
・考え方は面白いけど纏まり方が薄い。
もうちょっと読み易さがあるといいのかも?
・話がむずかしいです…もうちょいわかりやすいとたすかります
・突き詰めた馬鹿話。個人的には好きです。