作品No06
テ ー マ 「 学 校 」 今僕は、人のほとんど乗っていない電車に居る。 ボーっと、手に持った手紙を見ている。 僕はミュージシャンになりたく東京へ上京したが目が出ず、今では市役所に勤め、ただのサラリーマンをやっている。 ただなんとなく会社と一人暮らしのアパートの往復だけの毎日がただなんとなく続いていた。 そんな時、懐かしい人からの手紙が来た。 ソレは、高校の頃の友人の真人からだった。 藤井 武弘へ うーっす、南 真人だ。覚えてるか? お前が上京してから随分経ったな、ソッチはどうしてる? 念願のミュージシャンになれたか? コッチは相変わらず、ド田舎でのんびりやってる。 今回お前に手紙を出したのは、俺等の高校が無くなるからだ。 近くにそろそろ新しい高校が出来るから、在校生をソッチにやり、あの高校を壊して、公園にするらしい。 木造で痛みが酷かったからな。 出来れば最後の姿だけでも見に来てくれないか? みんなにも出来うる限り連絡は入れた。連絡が取れなくなっちまったやつもいたのは哀しいけどな。 今月の最後の日曜日に校舎が壊される。 前の日にでもきてくれれば、ウチにとめてやるから、同窓会とでも思って、気軽に来てくれ。じゃあな! 南 真人より 手に持った手紙からを離し、ボーっと電車の窓から見える効用の絶頂を迎えた鮮やかな山を見る。 懐かしい。 ふと、そう思った。 東京に出てからは一生懸命で、故郷に帰ると言うことを忘れていた。 そして次に、高校の頃の思いでが頭をよぎった。 僕と真人、そして詩織と言う幼馴染がいた。 詩織は、鈴城 詩織と言って男勝りでどこかさびしげなやつだ。 僕たち三人は生まれた病院が同じで高校までずっと同じ学校に通っていた。 僕たちはいつも一緒にいて、何をするのにも三人で行動していた。 だけど、みんな、目指す夢は違って、高校を卒業してからは全然連絡を取っていない。 気が抜けるような停車音がして、電車が止まる。 電車を降り、周りをみる。 やっぱり降りるのは僕だけのようだ。 僕の生まれ育ったところは過疎化が進んでいて、ほとんど老人しかいない。 中学校は小学校と同じ敷地にあり、自分が通って居た頃は小中あわせて50人弱しかいなかった。 そして、電車のドアが閉まる寸前、あわてて誰かがドアを無理矢理こじ開けて飛び出してきた。 「っふぅ〜、間一髪だったぜぇ、、、、」 そういって、ショートカットなラフな服装をした女性が降りてくる。 ものめずらしげにでも見てしまっていたのだろうか、その女性と目があってしまう。 まぁ、駅に二人しかいなくて、かたっぽに見つめられていたら目が会わない方が不思議だけど。 「・・・・・・もしかしてタケちゃん!?」 二人で楽しそうに笑いながら、車もめったに通らない田んぼのど真ん中の道を歩いている。 「ははっ、まっさか詩織と同じ電車だとは思わなかったよ」 「私も。でも、1時間に一本しかないからなにげにありえる話しだね」 と、詩織と呼ばれた女性が言葉を返す。 しかし、時がすぎれば変わるものだなぁ、と武人は思う。 男勝りで高校生になっても、少し顔のかわいい男の子と思われるくらいだった詩織が、いまでは完全に女性となっている。 「って、ドコ見てるの!?」 その言葉と共に、左フックがボディーに入る。 どうやら目線が胸に言っていたらしい。欲望とは体を破滅させるものだなぁと改めて思った。 「いててて、お前、随分と変わったなぁト思ってナ。随分女っぽくなったんじゃないか?」 一瞬、しまった!と思ったが、恐れていた右の拳は来なかった。 話がそれるけど、詩織の右の拳は以前、ここで有名な馬鹿(不良)をその右の一撃だけで倒したことがあるのだ。 その時から詩織の右は伝説と影では言われていたりする。 「・・・私だって頑張ったからね。」 一体何を頑張ったと言うのだろうか。出来るものなら凶暴性も頑張って消してもらいたいと思うのだけど・・・ 「………」 一瞬、殺気を感じる。顔にでも出ていたのだろうか。野生の感とは怖いものだ。 「まぁ、いいわ。でもタケちゃんの方も結構変わったよね、私よりもちっさかったのに今じゃ私より大きいからね」 言われてからきずく。だから更にイメージが変わったと思ったんだな。 30十分くらい歩いたところで山道への入り口に来た。そこは車が通れる位には広く整備されたところだ。 そこに一台のトラックが止まっている。 「あそこにいるのってもしかしてマサちゃんじゃない?」 コッチと目があうと手を振り出した、印象は少し変わってはいたけど面影は残っていたので分かった。 コッチも手を振りかえし、走ってちかずく。 「久しぶり!元気だった?」 と、詩織が言う。 「おう、久しぶりだな。コッチは見てのとおり、元気すぎだぜ!」 そういって大きな力瘤を見せてきた。 真人はがっちりとした体つきで、日に焼け、健康体その物に見える。 「お前等、本当にかわってね〜な!」 二人ともの、ここに来る前の会話はこの一言によって壊されてしまう。 トラックの荷台に乗り、山の中腹にある真人の親が経営する民宿に着く。 軽い荷物を二回の部屋に運び入れ、真人はまた、下で人が来るのを待ちにいった。 他の部屋にも人が居るのと、他にも人が来る可能性があるから、と言うことで詩織と武人は同じ部屋になった。 同じ部屋とはいえ結構広いので、苦痛では無い広さだ。 窓をあけて、外を見ながら詩織が言う。 「ここは全く変わってないねぇ、まるで時間が止まってるみたい。」 同じく窓のふちに腰掛け、外を見ながら言う。 「そうだね、ここには時が流れていなくて、僕達の生まれ育ったときの時間がそのまま残ってるみたいだね」 不意にそりの方に振り向く。 「・・・・・・・・!」 詩織の目から雫がこぼれ、すぐにソレをぬぐった。 その瞳はどこかさびしげで、拾われるのを泣きながら待っている子猫のようだった。 「はは、どうしちゃったのかな?」 あわてておどけて見せるが、そう簡単に重たくなった空気は消せはしなかった。 僕が黙っていると、詩織がポツリポツリと話しだした。 「私ね…もう一度ここにすもうかな…って思ってるの」 びっくりして聴き返す。 詩織は絵がうまく、デザイナーになるために上京したのだった。 風の便りで、詩織がデザイナーになれたことを知っていたために疑問が浮かぶ。 ソレを聴くと詩織は 「都会の生活には疲れたの…」 とだけ言って黙り込んでしまう。 長い沈黙の後、 「うぉりやー!俺特性のキスナベだぞ!」 と真人が入ってきて夕食となった。 夕食後、真人は、仕事があるからと言って早々に出て言った。 食事の最中、元の明るい詩織に戻り楽しげに話していたが、やっぱりさびしそうな顔に時折なっていた。 武人はどうしてもそのさびしそうな顔が気になり、そこのとについてもう一度聴いて見る。 やっぱり、先ほどの楽しそうな顔から表情が変わり、少しためらうがすぐにゆっくりと話しだした。 仕事の上司を好きになった事。 その人はすでに結婚していた事。 そして、最後にはその人とのちょっとしたケンカから、むごい仕打ちを受け、会社に入られないような状況になってしまった事。 しかし、ソレでも自分の好きな仕事が出来るのならと耐えて続けていると、 事務の仕事をしに転勤するか、ソレともやめるか?と、上司に言われた事を。 高校の頃、一度も涙を見せなかった詩織が、今、僕の目の前で泣いている。 ふと、詩織を抱きしめたくなり、自分の胸に抱き寄せ、胸でなかせる。 決して、かわいそうと思い詩織を抱きしめたのではない。 ただ、純粋にいとおしく思っただけだなのだ。 夜、毛布に二人で包まりながら、僕は詩織に言う。 「…コッチに二人で一緒にくらさない?」 僕は、高校の頃から詩織のことが好きだったのかもしれない。 恋愛と言う感情は良く分からないけど。 ただ ただ純粋に一緒に居たいと思うことが、ソレだとするのなら、僕は詩織が好きだった。 その言葉を聴いて、詩織はまた、泣きだす。 「ふぇ〜……ひっく…………」 腕にしがみつき、まるで子供のように泣きじゃくる詩織を見て、もう離れては行けないと僕は思った。 そして、泣き疲れたのか、そのまま眠ってしまった。 「武人〜〜、ご飯が出来たよ〜!」 そういわれ、僕は二階から降りていく。 あと、学校は取り壊されてしまい、公園になった。 詩織は仕事をやめ、僕も会社を辞めた。 二人の少ない退職金で、その公園の隣に小さな駄菓子屋兼塾をやっている。 塾と言っても勉強するのを手助けする程度なのだけど。 真人は、親の後を継ぎ、あの高校が壊される日に集まったうちのひとりの子と結婚し、 二人で民宿をこなしている。 「頂きま〜す」 パクパクとご飯をほおばっていく。 「だけど、あの泣き虫の詩織がここまでおいしい飯を作れるとは、、、」 少し恥かしそうに詩織が文句を言う。 「泣き虫泣き虫って、あの日いらい泣いて無いでしょうが!」 「はははっ、そうか?」 「そうだよ!」 「泣いた」 「泣いてない!」 「泣いた」 「泣いてない!」 「泣いてない」 「泣いたない!、、、、ぁ」 「「 ぷ っ 、 は は は は は は 」」 二人で大笑いをする。 天井を見上げてふと、写真が目に入る。 ソレは、学校が壊されるときにとった、まだ壊されていない学校をバックにとった写真だ。 真ん中に、俺と、詩織が居る。 幸せだな、、、と感じた。 もう、ぜったいに離れないようにしよう。 ぜったいに、詩織を泣かせないようにしよう。 学校が壊されるのは哀しかったが、学校が壊されたことを 今はありがたいと思う。 まだ笑っている詩織を見ながら。 コウして、詩織の笑顔を見ることが出来るのだから、、、。 〜 E N D 〜 |
23点(35点満点)
・ほのぼのしてていいっす♪
・結局幸せ者かい!!w ラストにつなげるハイライトのシーンが薄いのが残念でした。
・ハッピーエンドっていいですよね。
・やはり物語りはハッピーエンドでなくては!(謎
・少し淡々と進みすぎちゃってるかな、もうひとやま欲しいかも