作品No04



「時よ止まれ!」
相対性理論がどうした!相対性原理、不確定性原理、シュレーディンガーの猫がいつくたばろうが
今の私にはどうでもいい事だ。
光の速度が一定であろうと、それがいかなる条件下でも変わらなかろうと、波長と粒子の性質を同
時に兼ね揃えたものが光で物体の運動状態が時を歪ませ、空間をねじり、物体を縮めようと私に残
された時間がほとんどないと言う状況は変わらない。
基本問題、問1
「ハリーアップ オア ウィーウィル ミス ザ トレイン…急げ、でないと列車に遅れる…」
問2
「彼女のCDは1枚も売れなかった…うわ、悲惨!」
問3
「It is very easy to know fault with others…他人の欠点を知るのは容易だ…教育現場でこんな和
訳出していいのかよ」

残された時間はあと8時間。8時間後には私は戦場に立っているだろう。
敵は私以外の全員。戦うべき相手は机の上の紙切れ。
下がってくるメガネをそのつど直しながら必至に脳を回転させる。
考えれば神経細胞、ニューロンネットワークが構築され思考が…要するに頭が良くなるそうだが、ど
うも私にはそう思えない。
考えれば考えるほど脳みそが溶けていくような気がする。
だいたい、英語の問題はふざけている。
文法がどうの、これは倒置が使われてるから動詞と主語が入れ替わる、仮定法。
名前をつければ聞こえはいいがいざ練習問題を和訳してみると馬鹿な話がいくらでも出てくる。
「ボブは、クラスの誰よりも猫が好き」
「3プラス4は8」
「あなたの答えは間違っています。答えは7です」
あーもういい加減にしてくれ!
教師陣が口うるさく言っている「使える英語」とはこんなものか!
異文化コミュニケーション…逆輸入版エロ本を和訳した方が断然、使える英語だ。
なんたって、英語でシモネタが言えるようになる。

アメリカ人「オーハロー!ヒサシブリデ〜ス、ナニカ ノミタイモノハ?」
私「チオビタドリンク」
アメリカ人「ワッツ?」
私「ケンコウニモイイシ、ヨルノオトモニサイテキデ〜ス」
アメリカ人「オー アキサン ニハ カナワナイゼ〜!カーッハッハッハッ」

 閑話休題

 つべこべ言ってもしょうがない。
老いとテストは必ずやってくる。
テスト発表期間中だぞと担任も言っていた。
あと1週間でテストか〜私はそのときテストを意識した。
そして家に帰った。まずパソコンの電源を入れた…。

 今となってはどうしようもないことだ。
せっせとシャーペンを走らせる。
零コンマ三ミリのシャーペンを使ってても細い線が書けるのは最初だけでだんだん太くなる。
書く場所を変えるためにシャーペンを回す。
また太くなる。
赤ペンで直しを入れると液が溜まってこすったら汚くなる。
おまけにマーカーはインク切れ。
スカートで手を拭く。
いくら拭いてもすぐに汗が滲んでくる。水で洗ってもその汗のいやな感じは取れない。
前髪を指に絡ませクルクル…。
足の指がむずむずする。靴下を脱ぎ捨てる。
こんなときに限って机の端の綿埃が気になる。
なんとか英語を終わらせる。
次、漢文。
「剣の舞、劉邦、項羽…秦の滅亡は〜」
背の低い少し天然ボケ入ってる三宅先生は妙なところで細かい。
「剣の舞」の文法教えて、書き下し文にして、現代語訳。それでいいじゃないかと皆思うとこ
ろだが細かい三宅先生は違う。
秦滅亡の理由、それを別にプリントにまとめて配布してくれる。歴史漫画を印刷して。
テストに出るわけ無いところだが私は真面目なのでいちお目を通しておく。
「えー、始皇帝は不死の秘薬を求めて使節団を派遣…あー今の私と同じだ。時間が欲しい」
ふと昨日のことが思い出される。
友人が暇つぶしにやっていた携帯のゲーム。
足場が浮いててそこをつたい下に下りていく。
上には棘があって当たればゲームオーバー。
足場が無いところに降りてもゲームオーバー。
私は「これってゴールあるの」と聞いた。
「ゴールは無いよ。得点で競うんだよ、キタ!30万点台」
「最後は決まってるのに意味無いじゃん」
この時、私はそう思った。
始皇帝は私と違ったようだ。彼は永遠を求めた。自殺志願者の少年少女には分かりようの無い
欲望だ。
携帯のゲームを見てた私は逃亡者だ。
運命は変わらん。分かりきってる。
でも、友人は携帯ゲームをやる。
私だって暇な時にはやる。
今勉学に励んでる私は携帯ゲームのプレイヤーであり、人生のプレイヤーだ。
高得点目指してテスト勉強に励んでいる。

「うおっ」
自分が歴史に残る哲学者になったような気がしてやたら興奮する。
「ちょっと待てよ〜オイ〜私って凄いかも!人生悟ったよぉ〜」
神が降り立った!
私の真上に神が降り立った。そんな感じがした。
いすの上に立ってガッツポーズ、続いてゲッツ!
夜空に吼えようとカーテンを開け放った。
新聞配りのおじさんと目があった。

おはよう日本。
時よ止まれ…



総合得点

10点(15点満点)

寄せられた感想

・目の前に問題集、イヤホンからは先輩が流してるネットラジオ…きっと明日はレベルアップ
(作者コメント)

・祈りをテーマにしながらよくこんなに面白い書き方があったなんてびっくりでした。

・めっさワロタ。 祈りって言うテーマがちゃんと生かせてたら完璧。

・こういう書き方もありだなぁと、素直に面白かったです。



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