作品No02
『Ｐｕｎｉｓｈｅｒｓ Ｉｎｖｏｃａｔｉｏｎ』 「祈れ･･･か」 ワイは死の淵にいた。 思えば･･･こんな職業でありながら祈ったことなんかあらへんかったな・・・ 目の前の十字架がえろぅ眩しく見える･･･ 何人屠ったやろ、何回引き裂いたやろ。この聖なる形をかたどった銃で。 はぁ、ごっつぅ痛いわ。痛みの奔流が身体を弄び、ビクビクと痙攣するのすらワイは気にならなかった。 下腹部からねっとりと真紅の体液が流れ落ち、聖域の白い床を汚し染め上げる。 「なんやっちゅうねん、死ぬ時って言うんは落ち着いたもんやな」 自分で言うて呆れた。まぁ、後腐れないんやから安らかではあるんやけど･･･ そういえば･･･あいつはどうしておるやろな。 『酷いフリ方しよって･･･死んでも死にきれんは…ホンマ』 自分で言うて涙が出てきた。 「いややぁ･･･まだ･･死にたない・・・死にたないよぉ」 ワイは床を思いっきり叩いた。力なくトンと音がしただけやった。 ワイは恨んで恨んで恨んだ。こんな醜い自分を、追いやった運命を そしてワイに鉛弾ぶち込んだ野郎のことを。 「まだ、やりたいことたくさんあるんや、あいつと、ゲームしたい･･･」 タン！ 「食事したい･･･」 タン！ 「映画を見たい」 タン 「いっぱい･･･喧嘩したい･･･」 手先が冷たく、感覚がなくなってきた…ボーっとした意識がどんどんワイを侵食していく 「神さん、お願いやぁ、まだ死にたない！！」 それでも、身体からどんどん力が抜けていく。 「何で！！何でや･･･」 その時、ワイの脳裏に今まで殺してきた人間の下卑た笑みが紙芝居のように駆け抜けた･･･ 「あかんのか、ワイはあかん言うんか･･･」 その時やった、こんなのはあかんと･･･呼びかけられた。 目の前の定まらない視界の中でボンヤリ浮かび上がる十字架を精一杯睨みつけながらワイは懇願したことを後悔しつつ。絶対に生きて帰ったる。 「そっちがその気だたら･･･もうあんたとは手ぇきったる！！くたばれ･･･ハゲ！！』 そういいながらワイは十字架に銃を向けた。 乾いた音が聖堂内に響き渡り十字架が折れる。 懺悔なんてするもんやない･･･二度と祈るなんてことはせえへん。 ワイは神と言う呪縛から解き放たれた。そしてゆっくりと立ち上がった。 「レイ」 ワイの名前を呼ばれた気がした。振り返るとその場にはいつもと変わらぬ、ワイに微笑みかけてくれる優しい男の笑顔があった。 彼はワイに手を差し伸べると聖堂に差し込む光の道を上っていった。 酷く安心しているワイが居る… もぅ、離れへん。どんなに重い業を背負うたとしても… 運命なんて言い訳に縛られず…ずっと…ずっと。 誰にも脅かされず、逃げることもない…静かに、安らかに生きられる それがワイのエデンや 翌日、協会から男女の死体が見つかった 協会の付近では暴力団と思われる集団の死体が無残に討ち捨てられていた。 二人の身元は杳として知れない。法的には人間ですらない存在だった 折れたキリスト像の前には、まるで祈るような形息絶えた女性が安らかな顔で眠り そしてもう一人の男性が…その女性を抱きしめる形で…息絶えていた。 まるで、父が娘を抱くように。 |
12点（20点満点）
・映画のワンシーンみたいですな
・関西弁が味を出していていいですね。
・主人公……男かと思ってたYO!!
・一瞬ヤオイかと思ったｗ 纏められた中にしっかりと工夫があって良いと思います。