作品No01
テーマ「祈り」 「まさか病院に入院するとは思わなかった。」 ほんとにビックリした。 人間ドックで一度も引っかからなかった俺が引っかかってしまった。 しかも入院だなんて,いくらなんでもつらいもんだ。 (なんかもう,暇で暇でしょうがね〜な。さっさと退院してぇ〜! ) 「おい,大丈夫か?」 暇だという時に限っていつも友人が来る。 なんとも気が利く友人だ。 「どこも悪くなさそうだな,心配させんなよっ! 」 「だから全然大丈夫だっていったじゃねーかよっ! 」 こんなこといいながらもいてくれると頼もしい友人だ。 こんなたわいのない一時が続くと思っていた……冬のことだった。 「寒い……なんて病院の廊下は冷えるんだ……。」 「高橋さん先生が検査結果を伝えたいそうなので,診察室へいってください。」 「わるいね,みきちゃん。」 みきちゃんとは俺の担当の看護婦だ。 「どうですか,先生。俺全然大丈夫なんですが。退院はいつですか? 」 「退院は今はきついですね。」 「そうですか……,でも今月中には退院していいですか? 」 「このまま病院に入院してもらいます。」 「何でです?全然大丈夫なのに? 」 「自覚症状がないだけです。親族の方はいらっしゃいますか? 」 「はい,なんなら呼びますか? 」 「よろしくおねがいします。」 なぜか,先生が深刻そうだった。 なんかが心に引っかかりながら親に電話をした。 そして,親が診察室へと呼ばれた。 親が泣いていた。母さんなんて泣き崩れていた。 「どうしたんだよ。そんなに泣いちゃってさ…俺,なんかの病気か? 」 「……」 両親は俺にそんなこと,とても言えないようで,また泣き崩れた。 「…泣くなよ…言ってくれなきゃ俺わかんないよ…」 そして俺と一緒に再度告知を聞いた…。 「真に申し訳にくいのですが,心臓が弱っているみたいで余命2ヶ月です。」 絶望的だった。 (嘘だろ?俺いつも健康だったよ…。嘘だよ…) 「先生〜,冗談なら両親よばんでくださいよ〜もう。」 「……」 先生が目をそむけ,両親が俺の名前を呼びながら泣いている。 「…嘘だろ…嘘って言えよ!!!!あんた医者だろ!!治してくれよ!!! 」 「もうやめるんだ…」 親父が涙ぐんで,俺の肩を引いた。 「ふざけんなよ…俺が何したって言うんだよ!!!!! 」 「死にたくねーよ,俺……」 病室に帰っても死ぬ事しか出てこなかった。 (生きる希望が断たれた俺に何が出来ようか) (遅かれ早かれ死ぬのであれば…今でもいい…) 「高橋さん!!!何やってるんですか!!! 」 「離してくれ!!!2ヶ月しかない人生なんてあんまりだ!!! 」 「もしかしたらまだ生きれるかもしれないじゃないですか」 「みきちゃん,軽くいわないでよ。こんな状態でよくそんな言葉いえるね!! 」 パッシーーーーーーン!!! 「!!!」 「死んだらそこで終りなんですよ!!! 」 初めて,みきちゃんに叩かれた。 「もういいよ,ほっといてよ…」 「ほっとけるわけないでしょ!!!」 「俺,もうだめなんだ…どう考えても死ぬ事しか考えれないよ…」 「あなたはそんな人じゃない!!!!」 みきちゃんが俺をしっかり抱きしめながら言った。 (みきちゃん……) 「自分を粗末にしないで!!! 」 彼女の涙が俺のパジャマに落ちてきた。 「ごめん…ごめんなさい…」 俺は震えながら彼女の白衣に大粒の涙を落とした。 寒さがまだ続く春の事だった。 死を告知されてから1ヶ月がたった。 病室にい続けるのもよくないと,医者から外泊の許可が出た。 「みきちゃん,俺外泊許可されたよ!! 」 「よかったじゃない!!どこにいくの? 」 「出来ればさ,みきちゃんとどこかに行きたいんだけど…仕事忙しいもんね。」 「え,私!?……いいわよ,丁度有休とろうとしてたし。」 「ほんとに? 」 「ほら,ぼさっとしてないで準備して!ほらほら行くならさっさといきましょう! 」 なんだか,あっさりきまっていく。 そして4時間かけて温泉旅館に着いた。 「夢みたいだ……」 「なにいってんのよ!!ねぇ海行こうよ。」 「あ,うん」 海はまだ春のにおいが残っているが夏になろうとしていた。 「おもっていたより暖かいね。」 「うん。」 「俺さ,ほんとにみきちゃんには感謝してるんだよ。」 「そんな,大袈裟よ。」 「だって俺あそこで止められてなかったらこんないい思い出なかったもん。」 「……なんか照れちゃうじゃない!!いきなり言わないでよね! 」 「俺,その時思ったんだ,この人しかいないって…」 「え……」 俺は夕日が照らしている浜辺で彼女を抱き寄せた。 「来年,生きてたら俺と一緒に暮らして欲しい。」 「…やだ・・・そんな急に言うなんて卑怯よ!! 」 そんなこと言っていても頬を火照らせていた。 「正直に言ってくれよ。俺のこと好きか? 」 「・・・・・・好き。」 そして互いの顔が重なった。 少し寒さの残る夏の始まりだった。 「あっっ,ぐはっ!!!!」 「どうしました高橋さ・・・,先生!!! 」 俺が吐いた血がベッドを赤く染め上げた。 (意識がはっきりしねー,これが死ぬってことなのか・・・・・・) 「ごほっ!!・・・・・・みき・・・・・・コレを・・・」 俺は彼女に箱を託した。 「生きているうちに・・・・・・わたせそうにねーからな・・・・・・ごほっ!! 」 「もうしゃべっちゃだめ!!! 」 みきが泣きながら俺の手を必死に握ってくれていた。 「やばいな,手術室空いてるか?連絡しろ!!すぐオペにかかる!! 」 運ばれている時もみきは俺の手をしっかり握っていてくれた。 手術室の戸が閉まった。 しばらくして戸が空いた。 「高橋さんは?! 」 「・・・・・・」 「言ってよ!!ねぇどうなのよ!!! 」 「すまない・・・・・・」 みきは泣き崩れてしまった。 「彼から手術前に君に一言だけ伝えて欲しいって言われたんだよ。」 「・・・・・・」 「渡した箱を開けてくれ…と言っていた」 彼女は泣いて震えながらも箱を開けた。 そこには手紙と婚約指輪があった。 手紙にはこう書かれていた。 このてがみを読んでいるってことは,手術終わったんだな。 俺,生きてるかな? もしかしたら死んでるかしんないな。 そのためにこの手紙を書いておいたんだよ。 俺さ,今もし死んじゃっても悔いはねぇんだよ。 だってさ,みきと一緒にいれただけで充分だったんだ。 俺,お前のおかげでここまでこれたと思う。 ほんとありがと。もし,さよならとかになっていたら それでも泣かずに見守って欲しい。笑っていてくれよ。 最後までお前の笑顔が見たいんだ。 いきなりだけどさ,もし神様がいるんならみきは誰のために祈る? 俺は,お前とお前の俺との新しい命がが幸せになる事を祈るよ。 最後かもしんないから言うよ。 今までありがと。泣くなよ。 葬儀の時,みきは泣かなかった。 彼が神に祈ったことを叶えるために。 なぜだか,棺の彼は顔を見るたび笑っているように見えた。 すこし寒い秋の話だった。 「ママ〜!! 」 「寛〜,こっちでパパに挨拶しましょうね。」 「ねぇ,パパってどんなひとだったの?」 「う〜ん,寛みたいに元気で明るい人だったかな? 」 「ふ〜ん,パパに会いたいな〜。」 「そういうときにはね,神様にお祈りするのよ。」 「お祈り?」 「そう,神様,寛はいい子でいますから,パパに会わしてくださいって祈るのよ。」 「そうなんだ〜。パパ〜僕ちゃんといい子にしてるよ。だから神様〜お願い!! 」 (あなた,あなたの子供もこんなに大きくなったわよ。私達絶対幸せになるからね) なんだか,写真の中のパパがうなずいた気がした。 あの時と同じ,冬の事だった。 あなたなら,最後に何を祈る? Fin |
7点(15点満点)
・できれば死なないでハッピーエンドがよかった…
・すこし話が唐突過ぎます。
(作者コメント)
・悲恋物。こう言うのに弱いなぁ…… ただ、ちょっと場面転換急だし、心理描写が弱いかも。
・少し急ぎすぎてる感はあるかな、どうも説明的に見えてしまいます。