作品No07






「……はぁ、暇だー。」

病室のベットに横たわりながら呟く。
周りを見ても白い壁、白いカーテン。興味を引く物など何一つ無い。
まぁ、今の僕に興味を引く物が必要なのかは知らないが。


《かなり病状が進んでいます……このままではお子さんは……》


大体1ヶ月ぐらい前に医者に言われた言葉。
泣き崩れる母親を余所に僕は至って冷静だった。
いや、それは冷静と言うより現実逃避をしているだけだったのかもしれない。
なんとなく信じられなくて、どこか他人事のように話を聞いていた…

「いきなりそんなこと言われてもなぁ…」

ごろん。と寝返りを打ち窓の外を見てみる。
外には汗だくになって遊び回ってる子供達が居た。
少し前までには自分もあそこに居たのに…

「……暇だなー。」

再び、寝返り目を伏る。
セミが外で五月蝿く鳴いていたが、何も考えたくない今の気分には丁度良かった…。


……………
…………
………
……



「今日からこの病室に入る事になった天河 瑞音さんだ。仲良くしてやってくれ。」

医者の説明に適当に相槌を打ちあさっての方を向く。
やれやれ、といった様子で医者はその”新居者”に色々話し始めた様だが特に興味はもてなかった。
ただ、自分の空間が減った事が面白くなかった。



「えと…あの〜……こんにちわぁ…」

医者が去って数刻経った頃に声がかけられた。
僕は機嫌が悪いこともあって返事をしなかったが。

「寝ちゃってるのかな?それだったら…」

………?何をする気なのか後ろの方でゴソゴソと何かを漁る音がする。
まぁ、暇つぶしの道具でも取り出しているんだろう。
どうでもいいと言う感じで目を伏せていたが…

≪バンッ☆≫

「〜〜〜〜〜なっ!?」

突然の破裂音につい後ろを振り向いてしまった。
…と言うか、寝てる――僕は寝ていないのだけど――人間になんてことをするんだ。

「あはっ☆起きた?」

「起きた?じゃないだろっ!なにしてるんだよ!?」

「クラッカー鳴らしてみたの。」

全く悪かったと言う様子も無く。さらりと言ってのける少女。
なんなんだ、この少女は…

「ねっ!ねっ!そんなことより挨拶しよ!!」

「………なぁ、もしかして挨拶したいが為にクラッカーまで鳴らして僕のこと起こしたのか?」

「そうよ?普通でしょ?」

………疲れる。
この少女に付き合ってると絶対に疲れる。僕はそう確信した。

「んじゃ、こんにちは。よろしく。それじゃ。」

そう言い放ち再び背を向けた。
何か後ろで「私はまだしてないよ!」とか「こっち向いてよ〜」とか聞こえるが無視。
暫くほっときゃ飽きるだろ。
……とか考えたが、クラッカーまで鳴らして人を起こす奴をほおっておいたら何が起きるかわからない。
再び向きかえり挨拶をしてもらう事に。

「ほら、早くしろよ。」

「わっ、急に振り向かないでよ!!」

「良いから早くし―――待て。何持ってんだお前。」

スプレーとライターを構えている少女。
これはアレか。簡易火炎放射器か。

「なんてことしようとしてるんだよっ!!」

「あはは、冗談よ、冗談!するわけないじゃない?そんな事。」

……しつこいがクラッカーで人を起こす奴の台詞じゃないと思う。
なんかコイツのペースに飲まれてる気がする。さっさと挨拶させて関わりを持たないようにしよう。

「良いから挨拶終わらせてくれ。僕は眠いんだ。」

「はいはい。私は天河 瑞音。よろしくね?」

よろしく。と言い布団を被る。
全くなんて奴が着たんだ…。


……………
…………
………
……



数日後。
結局、あれからも天河のペースに引き込まれ、いらない事まで話してしまうような間柄になっていた。
はじめの頃とは違い、不思議と悪い感じがしなくなっていたのは
きっと彼女が人を気遣ってくれる優しい娘だと言う事に気づいたからであろうか。
何はともあれ、すっかり打ち解けてしまった僕たちは今日も他愛のないことを話していたんだ。

「この病室ももっと鮮やかになれば良いのにねー。」

「は?なんだいきなり。」

「だって、1人になったら淋しいじゃない?この病室。」

……1人?まさか天河は僕が消えてしまうことが分かっているのか?
天河には病気のことは話していなかった。
病状は悪くなる一方でいつか僕がこの世界から消えてしまうことは分かっていた。
だから、いつか話さなければ行けないことは分かっていたのだが…

「な、なんで……?ひ、1人……?」

緊張して巧く言葉が出ない。
嫌な汗が背中を伝わり身震いが起る。
僕は天河の言葉を待つ。

「実はね。私、今日手術があるの。しかも…ちょっと危険な…ね。」

その瞬間、世界が凍った。
自分の病気を知られるよりショックだった。
底抜けに明るい彼女がまさかそんな病気を患っているとは思いも寄らなかった。

「失敗しちゃったらもう会えないよね、あはは。」

そう言う彼女の唇は震えていた…
僕はまだショックから抜け出せずただ彼女の言葉を聞くだけ…

「手術はね。お昼から。あと少ししかないねー。」

「な、なんで?そんなときに……?」

「んー、やっぱり何もいわずに居なくなるのは反則かな?って。」

「そ、そんな………まだ失敗するって決まったわけじゃ…」

「分かってるよ。でも、一応…」

いつの間にか、彼女の目にも僕の眼にも涙が浮かんでいた。
いつもの明るい彼女がもう直ぐ居なくなってしまうことが。
いつものふざけた様な彼女がもう直ぐ見られなくなってしまうことが。
その悲しさが僕の眼から止まることを知らない涙となってでてきた。

「天河さん…そろそろ時間ですので…」

僕らの時間を再び流れさせたのは看護婦のその一言。
彼女とはコレで会えなくなってしまうかもしれない。
それなのに、今言うべき言葉が何も出てこない。

「それじゃ…また会えたら良いね?」

そう言って看護婦に連れられていく彼女。
その途中に、振り返ってこちらに戻ってくる彼女。
すっかり元の明るい笑顔を浮かべてこう言った。

「そう言えば、君の名前。まだ聞いてなかったよね?教えてくれないかな?」

手術の前で不安だと言うのに、僕にこんな笑顔を与えてくれる彼女。
そんな彼女の為に僕も笑って見送ってあげるしかない。
そして、彼女に



総合得点

14点(30点満点)

寄せられた感想

・未完成なのが痛い。完成させれば高得点だったかも。

・嫌いじゃないんだけど・・・完成品を読みたかったなぁと(ぉ

・途中でぶった切れてなければよかったのに・・・残念。

・そこ抜けた彼女の性格の動機付けが少しばかり欲しかったところです。

・未完なので評価は低め、ややギャルゲ的なノリではあるけど嫌いではないです。

・先が気になる〜(笑



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