作品No05



激しい熱。目に付くもの総てを焦がすような。

(こんなに、圧倒的な)

圧倒する。見る者に焼き付く熱量を放ち続けている



真夏の青を従えた、水辺の女王。



















  なつのひかり


「駄目人間だもの…」企画
3,0th try / 青い海


















焼かれる。焦がれる。

(いきるもののこころを惹き付けてやまないのに)

ずっと見続けていることはできない。

脆弱なこの瞳(め)が、それを許さないから。








人ごみの砂浜を少し離れて、職場の裏手側にまわる。と。

「あ、休憩? タイヘンだねぇ」

そう言いながらケラケラ笑う、水着の女の子に迎えられる。

「そう思うんなら少しは手伝ってよ。自分の家のことでしょうが」

「えー、ヤだよー。どうせ海の家の食べ物なんて誰が作ったって同じだもん」

「おばさんも嘆いてたよ、どうしてあんな娘に育っちゃったんだろうねって」

いいのよ好きなだけ愚痴らせとけー、と言って口を尖らせる彼女の隣に腰掛ける。
さりげない風を装うのに苦労する。いつも。
上下とも赤い色の印象が強いビキニ。奔放で激しい彼女の性格には似合ってて。

「あ、仕事終わったら今日も泳ぎ付き合ってよ。今日こそは勝てるような気がするからさ〜」

「昨日も同じこと言ってたよ。何度やっても水泳部の僕に勝てる訳がないでしょうが」

初日に僕の泳ぎを見てから毎日のように勝負を挑まれる。
彼女は女性にしては驚くほどスポーツに長けているけれど、さすがに10年水泳をやってる男の僕には勝てなかった。
そのことがいたくプライドを傷つけたらしい。

「じゃあ、それまでに特訓してくるよ。首洗って待ってな」

わざと蓮っ葉な言い方でニカッと笑って、外に出て行った。

(……海に入る前に、今回は何人くらい被害者が出るのかな)

そんな取り留めのないことを思ってみる。
たとえこういう場でなくっても、彼女の容姿に惹かれない男は少ないんだろう。
でも本人はそんなこと微塵も気にかけてない。バカな男には実力行使も辞さない。

砂浜に君臨するクイーン。

初めて彼女を目にする者は、そんな風に思うのだろう。

でも。



でも。

(……でも、どうして)

どうして、あんなふうに振る舞おうとするのだろうか。

なにものにも動かされないような、傷を知らないような。

(……僕が惹かれてること(・・・・・・・・・)、知っているのに(・・・・・・・))

気付いている。気付かれている。この気持ちに。
そして、彼女が気づいていることに僕が気づいている(・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・)ことにも、気付いているのに。

最初はまだ、そういうことに興味がなくて気づかないだけなのかと思った。
その次に、わかっているのに男として見られていないのかとも。

でも、違う。

(あれは、そういうのとは違う。もっと、何か…)

何かを隠している、ような。

そんな不自然さを含んで。

ひょっとしたら、一生気づかなかったかもしれないくらいの、僅かな違和感を。

(……海、見てたとき)

偶然、彼女が一人で夕闇の海を見つめているのに出くわさなければ。

気づかなかった、くらい微かな。


……何が、あの子をそうさせているんだろう。












「ああもう! 今日も負けた!!」

悔し紛れに砂浜に寝転がる彼女を。

「だから、無理だってば。」

見つめながら、横に腰を下ろす。

……何を。

何を、欲しがっているんだろう。


満たされないものがある。

そんな表情を、あのとき、見たから。

見てしまったから。



僕は、それを聞いてもいいのだろうか。

聞く資格があると思っていいの?



ねえ。











本当の君は、何が欲しいの?






―――総てを焦がす、夏光(ひかり)の女王。

夏はもう、終わるのに。















   続く?(ぉ



総合得点

31点

寄せられた感想

・続きがあれば、もっと上の点数が狙えますが、さすがにしり切れトンボの間が(^^;

面白かったけど、続き物という事で趣旨から少し外れてると思い、こうしました

微妙に中途半端なのが惜しいと思います。続きはないのでしょうか(ぉ

元気な女の子はいいですwどちらかと言うと空元気?

続くなっ!w さておき雰囲気は凄く好きです、物足りない感じはあるのですが、それもまた良しかと。

甘甘SSですねw ・・・そんだけ(汗

夏光の女王という詩的な表現と、彼女の魅力を語る文章が合致していて良いです。コレももうちょっと続いて欲しいですねー。



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