作品No04



 「ねえ、知ってる?」
 彼女はよせてはかえる波を眺めたまま話し掛けてきた。
 「……なにを?」
 僕は彼女とずっと握っていた手に少しだけ力をこめた。
 「ここでね、夜明けに青い海を見たカップルは一生幸せになれるんだって」
 「!!」
 僕は彼女とつないだ手に、一瞬だけ力が入った事を後悔した。
 「……うん、そうだね。こんな状態じゃ見れるはずないものね……」
 彼女は、僕に向かって微笑みかけると再び波を眺め出した。
 おそらく言った本人である彼女にも青い海を見る事はできないと分かっているのだろう。
 理由は。目の前に広がる「灰色の海」だった。
 もう何十年も海はこんな色だった。
 なんでも僕らが生まれるはるか前になにかとんでもない事があったらしい。
 くわしくは知らないけれど先生達は学校でそう教えてくれた。
 だから海が青かったなんて軽く2〜3世紀前の話だ。
 「ねぇ………」
 その時彼女が唐突にしゃべりかけてきた。
 「どうしたの?」
 背中に冷たい汗が浮かぶ。

 
 「「たとえそれが幻想だとしても、ここにいつづけてもいいかな?」」


 突然、背中からそう声をかけられて「俺」はとびあがった。
 「な、なに勝手に人の作品よんでるんだよ!」
 慌てて振り返るとそこには、ニヤニヤとこっちを眺めてくる幼馴染の優子がいた。
 「別にぃー。ただ歩いていたらそんな文章が目に入っただけだよ」
 優子はそう言うと、さらに続きを読み出した。
 「なになに………『うん、僕で良いなら君といつまでも……』」
 「読むなぁーーーーーーーーー!」
 俺がそう怒声をあげるのと、自習中なのに騒ぎすぎた生徒達を注意しに来た教師が入ってくるのは全く同時だった。
 当然、その後職員室でこっぴどく叱られたのは言うまでもない。
 

 キーンコーンカーンコーン………
 「一日の終わりを告げる鐘が全校に鳴り響く。
  教室にいた生徒達は部活に行ったり、買い食いをしに行ったりと忙しそうだった。
  そんな中一人の美男子生徒は悠然と且つエレガントに帰り支度をすますと、湖を優雅に泳ぐ白鳥のように教室を…」
 「出て行かせる訳ないでしょう、信太郎。あんた今日掃除当番でしょうが」
 っち、俺の行動を先読みしてきたか。
 「やあ、優子君。どうかしたのかい? そんなに青筋立てて」
 俺がそう言うと優子は本当に青筋を立てて、象でも殺せそうな勢いで俺に詰め寄ってきた。
 「だ・れ・の・せ・い・だ・とお・も・っ・て・る・の・?」
 





総合得点

21点

寄せられた感想

・さすがに短すぎる(汗

・これだけじゃわかりません(涙

・未完なのは残念…少しギャルゲー風味強し?

・少し何かが足りないかな・・・

・未完なので評価はしにくいです。 ノリ的には嫌いじゃないんですが。

・こんな感じの展開好きですw

・続きが見たい作品ですね。前半の甘ったるさと後半の勢いのギャップが素敵です。惜しむらくは…面白さに対して文章が短すぎです(涙



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