碧空 −序− |
時が止まっているかのように、静かな空間だった。 窓は閉じられブラインドも降ろされ、外の光を遮断している。 照明を落とした部屋にいるのは二人・・・。 一人はリクライニングチェアに眼を閉じ横たわった若者。 もう片方の男は医者だろうか、白衣を纏い手にはカルテを携えている。 彼らのいる辺りだけ淡い光が灯され、さながら夜の海を漂う釣り舟のようだった。 青年の顔前で、男は掌をゆらりと揺らしパンと一つ手をたたき青年の目覚めを促 した。閉じられた瞼がひくりと痙攣する。 「気分は・・・・・・?」 と、医者は低めの声で静かに尋ねた。 青年はうっすらと目を開き、大丈夫とでもいうように頷く。 深く濃い黒目がちな美しい瞳が物問いたげに彼に向けられる。 「今回は、これで終了だよ」 疲れと安堵からか、その言葉に青年はほっと吐息をついた。 起きあがろうとするが、今一、身体に力が入らないらしい。 「まだ、薬が効いているようだね。無理しなくていい、もう少し眠りなさい。迎 えが来ているようだから後は彼に頼もう」 手許のインターホンに彼は診察の終了を告げ、机の上から小箱を取り青年に手渡 した。 カランと小箱の中で物が転がる音。 とても大事な物なのだろうか、青年は箱をきゅっと胸に抱え込む。 「安心しなさい、それもちゃんと納まっているよ。何も心配する事なんか無い。 さぁ、ゆっくり目を閉じて・・・そう、大きく息を吐いて・・・・・・吸って・・・・・」 巧みな誘導にほどなく青年は再び浅い眠りにつく。 「・・・・・・眠りなさい。それが今の君には一番の薬なのだから・・・」 男は青年の身体に薄手の毛布を掛け、部屋の扉を静かに開けた 心が錆付いた自転車のブレーキのように、悲鳴をあげるんです先生 痛くて、苦しくて・・・・・・ それなのに、愛することを止められない |
コメント 短っ! まぁ、プロローグって事でご容赦下さい。 ずっと暖めていたネタです。最初にミラパロを書いた頃から、いつか 書きたい書きたいと思っていたお話。 ミラパロを休止した時、別ジャンルでこの話を書きはじめましたが、 キャラへの愛が足りなくて中止してしまいました。 色々と迷いがあったのも原因の一つでした。 元ネタはハーレクイン物なので、ベタ甘なんですがちゃんとmayu 流にブレンドしますので最後までお付き合い願えたらと思います。 |