H21.12

 少し前に、何とも不思議な葉書をいただいた。冒頭に、少し大きな字で、「お世話になりました」と書かれていた。

 あまり面識はないが、ある会で名刺交換をしたことがあった。業界では名の通った方だ。
 内容は、これといった自覚症状もなく、癌に侵され死に至ったというものである。
 仕事柄、叱咤激励のお便りはよくいただくが、亡くなった方からというのは初めてである。

 内容が内容だけに、最初はキツネにつままれているような感じがした。

 迷惑をかけたくないという思いで、葬儀は既に家族と事務所だけで済ませたという。
 非礼へのお詫びと、「家族・事務所共々、亡き後もよろしく」との言葉が最後に添えられていた。

 葉書は黄金色を背景に、かすかな日差しに浮かび上がる雲海と、そのはるか上を雄大に羽ばたく1羽の鳥が描かれていた。
 読み返すうちに、故人の生きざまと人生哲学のようなものが、おぼろげに見えてくるような気がした。

 人生の締めくくりをいかにするか。
 人それぞれである。 ある種、共感さえ覚えた。

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