Q&A9
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Q9  分譲されている墓地の購入を検討しているのですが、一般的な宅地の分譲地と違うので、契約相手や契約方法について、分譲業者が言っている内容が正しいか教えてください。
 また、当該墓地の区画は私が購入予定ですが、今後、私の子孫も永久に使えるのでしょうか?
概要は次のとおりです。
・土地所有権は、個人A名義(表題部にAの氏名が記載された表示登記で、保存登記はされていない地目墓地の土地登記簿を提示)、墓地購入の契約相手は有限会社Bで、BはAの相続人というCの契約に関する委任状を示しました。
・墓地は数十区画あり、その内の1区画を永代使用権の購入という形で分譲価格を支払う契約内容と言われました。
・墓地の近くに寺院はありますが、宗派は関係なく購入可能で、墓地と寺院は関係ないといわれました。
・区画購入の証として、有限会社Bが発行する使用承諾書(証書のような紙)が交付されるそうです。
墓石は墓地購入の契約相手有限会社Bからの購入という条件が付くと言われました。
A9  (参考文献:「墓地の法律と実務」(茨城県弁護士会、ぎょうせい)

まず、最初に、「墓地」の定義、墓地の分類をします。

1 墓地の定義
 「墓地」とは、墓地、埋葬等に関する法律(以下「墓埋法」という。)では、墳墓を設けるために、墓地として知事の許可を受けた区域をいうとされ、「墳墓」とは、死体を埋葬し、又は焼骨を埋蔵する施設をいう。とされています。
 しかし、これは墓地の一面を定義しているに過ぎないところもあるので、一般的定義として優れている、大阪高裁判決(S52.1.19)の表現を紹介します。
「「墓地」とは、ある者が自らその区域内で墳墓の設置に着手することにより、あるいは他人に墳墓を設けさせる目的でその区域内の土地の分譲若しくは使用権の設定に着手することにより、墳墓を設けることに利用されることが確定された土地の区域をいう。」

2 墓地の分類
 墓地には様々な形態があり、分類方法も様々ですが、次の5つに分類します。
(1) 個人型墓地
 個人が自己の所有地に墳墓を設け、墓地として祖先崇拝の対象としている土地。これは、さらに、@墓地の単独所有で単独使用の場合、A墓地の単独所有で共同使用の場合、B墓地の共同所有で共同使用の形態に細分されます。
 ただし、現在では個人所有地での墓地新設は特別の事情がある場合にのみ許可(墓埋法2条5項)されることとなっています。
(2) 村落型共同墓地
 村落共同体の構成員のために村落共同体によって維持、管理されてきた共同墓地。共同墓地のような外観を呈していても、一族のみが使用している墓地は、個人型墓地の変形となります。
(3) 寺院型墓地
 同一宗派に属する檀信徒のみに墓地使用を認める寺院の経営する墓地。
 江戸時代に確立された寺院と檀信徒の宗教的な結びつきを前提として、同一宗派に属する檀信徒にのみ墓地使用を認める慣行に基づくものであり、したがって、宗派を問わない寺院の経営する墓地は、事業型墓地に分類されます。
(4) 事業型墓地
 地方公共団体の開発経営する墓地や原則として檀信徒のみに使用が認められる寺院型墓地を除いた墓地で、宗教法人等が経営主体となり、宗派性を問わずに不特定多数人に使用させる墓地。
(5) 公営型墓地
 国又は地方公共団体が経営主体となっている墓地

3 回答
(1) 相談案件墓地の分類
 相談のあった墓地は、資料が十分でないので、確定はできませんが、かつて、村落型共同墓地だったものの一部を事業型墓地として部分的に分譲している。という変形型ではないかと想像されます。
(一応上記5つに分類しましたが、ご相談のあったケースのような変形型もあると考えます。)
(2) 墓地の経営者
 事業型墓地の場合は、墓地経営は知事の許可が必要です。(墓埋法10条)したがて、仮に有限会社Bが許可を取得しているのなら、県の墓埋法所管部署で確認ができると思いますので、まずその確認をされることが必要だと思います。
 ただし、墓地経営はそれ以外の者で、有限会社Bは、分譲手続を委託された者ということも考えられます。(有限会社Bから墓石を購入する条件ということは、Bが石材関係業者と推測され、墓地の使用契約は特定の石材業者との墓石建立請負契約と抱き合わせ契約になっている場合が多いからです。)その場合には、Bにそのことを確認する必要があると思います。
 村落型墓地の場合は、旧来からの地域慣行による管理ということになりますので、それに従うことになるでしょう。いずれにしても、Bにそのことを確認してください。
(3) 永代使用権
 次に、ご相談案件の「分譲墓地の取得」についてですが、事業型墓地という前提で回答すると次のとおりです。
 墓地使用契約は、「墓地区画の分譲」と呼称され、そこで授受される金員は「永代使用料」と呼称されることが多いです。
 しかし、「分譲」といっても、墓地区画の所有権を売買するのではなく、「墓地経営者に対価を支払って、特定の墓地区画に墳墓を設置し使用する権利を取得することを内容とする有償双務契約」です。
(4) 墓地使用契約の法的性質
 墓地使用権の発生や権利の内容が、契約という財産的行為で行われることや、墓地使用権の価格が、土地所有権そのものの価格よりも高額であること、また、永代使用権の購入者の感覚としても、土地を「借りる」というのではなく、墓地を「買った」という意識であること等を考え合わせると、その性格は物権に近いものと考えられます。
 しかし、民法上物権の種類は法定されており、強いて当てはめるとすると「地上権」に近いとも考えられますが、登記をしないこと、権利の譲渡を前提としないこと等から地上権にも当てはまりません。
 したがって、建物所有目的の借地権と同様に、性格としては物権化した債権として、近代民法の分類に馴染まない特殊な権利ということが妥当かも知れません。
(5) 契約の当事者
 墓地使用契約は、墓地所有者との契約により成立します。墓地所有者が、墓地使用権の販売等を他の業者に委任している場合が多いのは、上記(2)で述べたとおりです。
 ただし、墓地の所有者の確定が困難な場合が多いのも事実だと思います。というのも、近年開発された墓地の場合は、登記上の所有者と実質所有者が一致している場合もありますが、墓地の性質上、多くの場合、登記上の土地所有者は実質的な所有者と必ずしも一致しない場合が多いからです。
 ご相談のケースは、個人A所有の表示登記はありますが、保存登記されていないため、Aの住所も登記簿謄本に記載がなく、CがAの相続人であるか、他の相続人はどうか、それが正しいかどうか、の確定は極めて困難だと思います。さらに、実質所有者はどうかということも外見上判定が難しいと思います。(いろんな人からお話を聞き、最終的にはご自身で判断されるしかないと思います。)
(6) 対抗要件
 また、上述のとおり、墓地使用権(永代使用権)は、民法上は債権に分類されると思いますので、その第三者対抗要件が問題となります。原則的には、墓石や外柵等の設置という現実の占有の有無・前後により優劣を決するのが妥当と考えます。
 したがって、御心配があるなら、契約後、速やかに墓石等を設置され、現実の占有を開始されると良いと思います。