不動産鑑定

不動産鑑定評価書ってどんなもの?

 不動産鑑定士が不動産鑑定を行ったときに発行するものが、「不動産鑑定評価書」です。
 「不動産鑑定評価書」は、不動産の鑑定評価に関する法律第39条に基づいて発行されるもので、同法第36条では、不動産鑑定士(補)以外の者は、不動産鑑定を行ってはならないことになっています。

 宅建業者等も不動産の価格査定を行っていますが、この「価格査定」は、任意のもので、法律に基づくものではありません。したがって、不動産を売りたい、買いたい等の場合は当事者の参考にはなりますが、不動産について争いがある場合の裁判所、相続税や贈与税について不動産の正常価格を証明する場合の税務署、担保価値を把握する場合に金融機関等へ提出する場合などは、やはり法律に基づいた「不動産鑑定評価書」が必要となる場合があります。

 

不動産鑑定評価書の記載事項は?

 記載事項については、不動産の鑑定評価に関する法律施行規則第35条と不動産鑑定士が鑑定評価を行う際の拠所とされる統一基準「不動産鑑定評価基準」で次のように定められています。

○鑑定評価の対象となった土地若しくは建物又はこれらに関する所有権以外の権利の表示

 例えば、自分の土地が狭いので、隣の土地の一部(3m幅で、長さ15mの部分)が欲しい、という依頼目的で、隣の土地を評価することを想定した場合、3m×15m=45uの部分としての価格を出す訳ではありません。隣の土地が一つのまとまりとして、20m×15m=300uで機能しているのなら、土地の価格はあくまでも、その300uを前提に成立しており、そのうちの一部の45uとして捉える必要があります。
 このように、経済価値を判定するための対象を特定し、これを表示することは大切なことなのです。

○依頼目的、その不動産の鑑定評価の条件となった事項、価格又は賃料の種類、その関係等

 上のケースで、隣の300uの土地に100円/uの価値を見出すのが正常だと仮定しましょう。
 自分の土地はやや狭く(80uと仮定します)、使い勝手が悪いので、70円/uが正常だと仮定します。
 隣の土地の一部(45u)を自分の土地に併せることによって、自分の土地の価値が70円/uから100円/uに上昇します。(これを併合による増分価値といいます)このような場合では、この人は隣の土地を100円/uより高く買っても、経済合理性があります。(このような場合の価格の種類を「正常価格」でなく、「限定価格」といいます。)
 このように、依頼目的、条件、価格等の種類、依頼目的・条件と価格等の種類の関連を明確にして、そのもとで経済価値判定を行ったことを記載することはとても大事なことなのです。

○価格時点、鑑定評価を行った年月日

 不動産の価格は常に変動しているので、評価の基準となった時点を明確にして、これを表示することは当然必要なことです。

○鑑定評価額の決定の理由の要旨

 これが、鑑定評価書の中のメイン項目です。上のケースで、隣の土地の正常な価格がなぜ100円/uなのか、上の依頼目的・条件では、なぜ153円/uになるのか。の理由について記載される部分です。
 隣の土地は100円/uが正常価格であるということについて、マクロ経済の中で不動産がどういう状況にあるか等(一般的要因の分析)、対象不動産のある地域が価格形成にどのような影響を与えているか(地域分析)、そして、対象不動産そのものの個別性によってどのように価格形成されるか(個別分析)という過程を経て、アプローチします。
 そして、最終的に、153円/uという答えに到達します。具体的な例は次のとおりです。

    自分の土地          隣の土地の一部              併合した後の土地
(70円/u×80u=5,600円) + (100円/u×45u=4,500円)  < (100円/u×125u=12,500円)

 ここで、12,500円-(5,600円+4,500円)=2,400円が増分価値となり、

 この人は2,400円/45u+100円/u≒153円/uを支払っても採算が取れることになります。(実際には、この2,400円は、価値増分の寄与の程度に応じて配分されることになります。)

○不動産鑑定士と対象不動産との縁故、特別の利害関係の有無等

 不動産鑑定評価は常に公正なジャッジメントであることが必要であり、このことを明記することは大切なことです。

○担当不動産鑑定士の氏名

 専門職業家としての良心に従い、誠実・公正に評価を行った主体を明らかにするものです。


 以上が、不動産鑑定評価書の記載される事項の主な内容です。


不動産鑑定に費用はどのくらいかかるの?


 不動産鑑定の費用(報酬)は、鑑定対象不動産の類型(住宅地か借地権か建物とその敷地かなど)とその価格に応じて決まります
 例えば、評価額が2,000万円超2,500万円までの宅地であれば、報酬は238,000円+消費税、評価額が同ランクの建物と敷地であれば、報酬は359,000円+消費税となっています。
 詳細については、お問い合わせください。




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