組曲 雷人物語

1、太陽

はるか昔。伊予の国。ある山奥の村では幾日も雨が降らず、

照りつける太陽に山や田畑は枯れ果てて、

村人たちは来る日も来る日も苦しんでいた。

なす術もなく時が流れていく中、一人の若者が静かに山に隠った。

ある日の暮れ時、山の彼方から響いてくる太鼓の音があった。

真摯で真直ぐな太鼓の音。

2、雨乞い

山の上高くに月が登っても、その音は途絶えることはなく、

東の空が白んでも響き続けた。

村人たちは、若者が雨を呼ぶ太鼓を叩いていることを知ると

「そんな事をしても雷様は聞いてくれんやろ」

無駄な努力だと心無い言葉を並べた。

二日、三日、太鼓の音は鳴り響いた。

若者は、食べることも眠ることも忘れて、一心に打った。

3、閃光

やがてその音は、向こうの山へと呼応し、より大きな響きとなり

ついには大地を貫いて、空を割る勢いとなった。

村人たちが驚いて家を飛び出したその時、

西の空からにわかに黒い雲が沸き出し、

次の瞬間、青白い閃光が走った。

「光った!雷様や!」と同時に、若者の太鼓と融合して

烈しい雷がひとつ鳴った。

4、恵み

村人たちは耳を塞いですくんだ。彼らが再び空を見上げた時

ぽつり、ぽつり、ひとつふたつ、雨の粒が落ち始めた。

そして、みるみる矢のように、天からの恵みが降り注いだ。

村人たちは、びしょ濡れになりながら抱き合って喜んだ。

そうして山には緑が戻り、田には黄金色の稲穂の波が輝き、

川は豊かに潤った。

5、雷人

あれ以来、若者の姿を見た者はいない。

村人たちは、若者が雷人になったのだと噂をした。

美しき愛すべき大和の国のどこかに、雨を乞う村があれば、

どこからともなく祈りの太鼓の音が聞こえるという。

数十年、数百年、千年経った今も、

彼はどこかで焔の太鼓を叩いている。

生命の雨を降らせるために・・・


Go to top page
color block 1
color block 2
color block 3
color block 4
color block 5
color block 6
color block 7
color block 8
color block 9