【痛み】は有益、それとも有害?

熱い鍋蓋を触った時にすぐに手を離したり、足くびを捻挫した時に足を動かさないのは【痛み】に対する逃避行動であり、無意識のうちに行っています。
高等動物では知覚神経が身体の隅々まで広がっているため、ある部位が傷害を受けると【痛み】として脳に信号が送られ、痛みを避けようとしたり、痛みが続く間は安静を保とうとします。もし、【痛み】という感覚がなければ傷害がどんどん進行し、ついには生命の危険に及ぶこともまれではありません。
たとえば、虫垂炎(いわゆる盲腸)でも腹痛がおこらないため、腸が破れて腹膜炎をおこし敗血症(細菌が身体全体に広がる)になるまで気がつかないこともあります。したがって、【痛み】は人にとってなくてはならない感覚であることは間違いありません。

しかし一方で、皮疹が治癒した後に激しい(焼け火箸を押し付けられるような)痛みが長く続く帯状疱疹(ヘルペス)後神経痛や、血管による神経の圧迫によっておこる特発性三叉神経痛などでは、【痛み】自体にほとんど意味がなく、人を苦しめるだけの痛みも存在します。
また、骨や軟骨、関節の変形によって起こる腰の痛みや膝の痛みも、初期の痛みは身体の危険信号ではありますが、痛みが続くことに何ら意味はありません。

【痛み】は人の生活に様々な影響を与えます。
痛みが長く続くと生活に支障が出ますし、眠れない、いらいらする、物事に集中できないなどの症状を伴い、抑うつ状態になります。また、痛みは自律神経反射により血管を収縮し、筋肉や軟部組織の血行を障害するため更なる痛みをひきおこします。これらが【痛みの悪循環】と呼ばれるものです。
したがって、【痛み】の原因をつきとめ、神経ブロック等で痛みを早く軽減することが精神状態を安定させ、生活の質(QOL)を高めることにつながっていきます。

たぼ麻酔科クリニック